O脚修正でのポイント②‥‥膝関節周辺

O脚を修正しようとする場合のポイントとして、小殿筋のこわばりを解消することについては前回説明させていただきました。
今回は膝関節における大腿骨とふくらはぎの骨(脛骨と腓骨)の関係に着目して考えてみます。私が「O脚は将来の変形性膝関節症予備軍」と考えている理由を今回は説明することになります。
歩くことは、前足を着地した後は、その着地した足が軸足に変わり、反対側の足が前に出ることで前に進む仕組みになっています。
また、(O脚でもX脚でもない普通の人は)前足を着地した後に膝が少し前に出ることで重心が前方に移動しますが、その力を利用して歩くことが効率的で、からだに余計な負担を掛けない歩き方であると言うことができます。


ところがO脚が進行して変形性膝関節症が重症化したような人は、前足を着地して軸足に移行するときに、膝が前に出るのではなく、からだの重みを受けて膝下の脛骨(けいこつ)が外側にグイッと動いてしまいます。そして、その時に膝の内側が痛みを出してしまうという状況になってしまいます。


写真では解りにくいかもしれませんが、写真の人の実際の歩行を見ますと、左脚が軸脚に変わって、そこに全体重が乗る瞬間に左脛骨は大きく横ずれを起こしますし、その時に強い痛みを感じてしまいます。ですから、室内でも杖を利用して左膝に全体重が乗らないようにされています。


この人の場合、右膝も良い状態であるとは言えませんが、まだそれほどO脚は進んでいませんので、着地した後に膝が前に出て重心を前方に移動することができます。すると膝関節で横揺れや横ずれが起こりませんので、左膝のように内側に痛みを感じることはありません。

見た目に「酷いO脚だから」ということも気になることではありますが、それよりも膝が使いものにならず歩くことができなくなってしまうことの方が人生にとって一大事ですから、何とか左膝の使い方が変わるようにしなければなりません。
「横ずれではなく、膝が少しでも前に出て欲しい」
これが今の私の思いです。
そうなれば、形は不格好でも膝が本来の在り方で使えるようになりますので、痛みも飛躍的に軽減すると予想されます。
また、ここまで膝関節が変形していますと、内側の半月板もかなり傷んでいると思われますので「常に快適に」というわけにはいかないかもしれませんが、日常生活はそれほど痛みを感じずにできるのではないかと思っています。

膝関節が「横にずれるか、前に出てくるか」たったそれだけの違いなのですが、実際にはそこが分かれ目となって、「快適に歩ける」「痛くて歩けない」という大きな違いとして現れます。
そして使い方をたったそれだけ修正するだけのことなのですが、それがなかなか厄介で、手間と時間を要することになります。

膝関節が横ずれを起こす理由‥‥膝窩筋と縫工筋が重要
O脚の進んだ人の膝関節が横ずれを起こすようになってしまう最初の原因として、歩行時に前足を着地して体重を乗せる時に、脛骨が内側に捻れてしまうことがあります。
典型的なO脚の人のスタイルは、両膝の間が広がっていることの他に、立った時に足の小指側に重心が掛かってしまうことがありますが、この状態は脛骨が少し内側に捻れている状態です。
膝下が少し外側にはみ出し、なおかつ内旋しているというのが専門的な見方になりますが、そのような状態をもたらす筋肉があります。

・膝窩筋のこわばりと働きの悪い縫工筋
太股の裏側にはハムストリングと呼ばれる強力な筋肉があります。ハムストリングは骨盤の坐骨結節や大腿骨を出発点として膝関節を飛び越え、ふくらはぎの骨に繋がっています。
また、ふくらはぎ裏側の表層には腓腹筋がありますが、その出発点はふくらはぎの骨ではなく太股の骨になっていて足のかかとに繋がっています。ですから、ハムストリングの終着点(停止部)と腓腹筋の出発点(起始部)は膝関節を跨いだ状態で交叉しているのですが、これによって膝裏に凹みができます。そして、それを膝窩(しつか)と呼びます。


膝窩の一番奥に小さな膝窩筋があります。収縮することでふくらはぎの骨(脛骨)を少し内側に捻る働きをしています。
膝関節が曲がった状態から膝を伸ばすようにしていきますと、膝が真っ直ぐになる手前で脛骨が外側に少し捻れます。それによって膝がすっかり伸び、関節にロックがかかって太股の骨(大腿骨)と脛骨があたかも一本の骨になったように一体化します。この仕組みがあるので大腿骨の筋肉とふくらはぎの筋肉の緊張状態がゆるむことができます。

膝が伸びきった状態は関節にロックが掛かった状態ですから、再び膝を曲げるためにはロックを外さなければなりません。この時にロックを外す働きをするのが膝窩筋です。
「膝関節が伸びるときに脛骨が外旋してロックが掛かり、膝窩筋が収縮して脛骨が内旋することでロックが外れ、膝を曲げることができる」このような仕組みになっています。

そしてO脚の人の場合、この膝窩筋がこわばっていて常に脛骨が少し内旋したままの状態になっています。
膝窩筋は太股の骨の外側(外側上顆)を出発点として脛骨の内側に付着していますので、収縮しますと脛骨が外側上方に引っ張られながら内側に捻れる状況になります。つまり膝窩筋がこわばった状態になりますと、膝下が外側に少しはみ出し、なおかつ内側に捻れているので、外側の出っ張り(腓骨頭)が目立つ状態になります。


膝窩筋がこわばった状態は自ずと脛骨が内側に捻れた状態をもたらしますが、歩いたり、立ったりして体重が掛かったときには、それが更に強調されて、脛骨が外側に引き出され且つ内側に捻れた状態に動かされます。それは膝関節の内側半月板に負担を掛けますし、膝関節内側の筋肉を引っ張る状態になりますので、そこに痛みが発生します。
ですから、O脚の人の膝内側の痛みを軽減させるための条件として、膝窩筋がこわばった状態を解消しなければなりません。

さらに、歩行時に膝が前に出てくるようにするためには、大腿骨と脛骨の位置関係を正す必要があります。と言いますのは、膝窩筋の影響で脛骨が内旋している状態は、膝の内側に着目しますと、大腿骨に対して脛骨が後に下がった状態になっているということです。この状態では、立った時に膝の後側に重心が掛かってしまいます。“かかと重心”の原因の一つになりますし、反張膝の原因になります。


歩く動作は、一歩一歩が膝を曲げたり伸ばしたりの繰り返しです。また短時間であっても全体重が片方の脚に乗ることになります。ですから大腿骨に対して脛骨が後方にある人は、重心が前方に向かうのではなく、かかとの方に掛かってしまいます。そしてそれでは前に進むことができませんので、上半身を前に倒すようにして前方に進む力を得ています。「前のめりになって、後から足がついてくる」そんな歩き方です。
この歩き方もまた膝に負担を掛ける歩き方ですので、そうならないように膝下で後方に引っ込んでいる脛骨を前方に出さなければなりません。その方法の一つがこわばっている膝窩筋の状態を改善することですが、それ以外に脛骨を前方に引き出す働きをする筋肉を整えることがあります。それは大腿四頭筋(大腿直筋、内側広筋、外側広筋、中間広筋)であり縫工筋(ほうこうきん)になりますが、縫工筋の働きが悪くて脛骨の内側が引っ込んでいる場合が多くあります。


また、同じ鵞足でも半腱様筋がこわばりますと脛骨をさらに内旋させて後方に引っ張りますし、半膜様筋のこわばりも脛骨を後方に引っ張ってしまいます。O脚を修正する場合には、これらの筋肉も確認する必要があります。

さて以上説明してきましたように、O脚が進行した変形性膝関節症にならないようにするためには、膝窩筋、半腱様筋、半膜様筋のこわばり状態を解消し、縫工筋の働きを高めることが必要です。そしてこれらの筋肉は、ほとんどの場合、連動する他の筋肉の影響をうけて変調していますので、直接これらの筋肉を揉みほぐしたりしても解決にはつながりません。

専門的になってしまい解りにくいかもしれませんが、
膝窩筋は小殿筋、棘上筋、肘筋と連動しますので、肩や肘の状態の影響を受けます。足の方では足底の骨間筋と連動しています。立った時に小指側に重心が掛かってしまう人は、足裏全体で安定して立てませんので、足の親指と2趾(人差し指)のところに力を入れてこらえながら経っていたりします。昔のサンダルや下駄では鼻緒のあるところです。するとそこの筋肉(骨間筋)がこわばりますが、それが膝窩筋のこわばりへと繋がります。
半腱様筋、半膜様筋は腓腹筋(外側頭)、ヒラメ筋と連動しますので、ふくらはぎやアキレス腱、かかとなどの状態の影響を受けます。
そして縫工筋は肩甲骨と上腕骨を繋いでいる烏口腕筋(うこうわんきん)と連動しますので手や肩に問題ありますと働きが悪くなることがあります。


写真の方は後期高齢者で、5年ほど前に脊柱管狭窄症の手術を行っていますが、未だに腰痛は残ったままです。さらに1年前に肩関節近くの上腕骨(二の腕)を骨折して手術を行いましたが、まだ万全な状態ではありません。
このような既往症を抱えながら両膝の調子も悪く、特に左膝はO脚が進んだ変形性膝関節症で立っていても痛みを感じ、全体重を左膝に掛けると痛みが強くなりますので家の中でも歩行時は杖を使っているという状況です。

前回はO脚における小殿筋の説明をさせていただきましたが、今回取り上げています膝窩筋は小殿筋と連動しています。そして肩の棘上筋、肘の肘筋とも連動関係にありますので、上腕骨の骨折とその手術によるマイナス面は膝窩筋のこわばりや烏口腕筋と連動する縫工筋の働きに対して大きな影響をもたらしています。ですから、施術のスタートは肩周辺や肘を整えることから始まります。
そして、小殿筋を整え、今回の膝窩筋や縫工筋など膝周りを整え、次回説明させていただきます足首周辺と足を整える施術を行います。さらに脊柱管狭窄症を手術した腰部も気になりますのでケアを行いますが、膝関節を調整するためにたくさんの部位を施術しています。

一通りの施術が終わりますと、歩く姿が施術前と変わり上の写真のようになります。O脚自体はそれほど変化していないように感じられますが、膝関節の使い方が変わります。前足として着地してから軸足に移行するときに全体重を左脚で支えるわけですが、施術前は膝関節が横ずれを起こして痛みを発症していました。しかし施術後は膝が前に出るようになりましたので横ずれがほとんど起こらなくなりました。ですから膝に痛みを感じることもなくなり、さらに重心が自然と前方に移動するようになりましたので、上半身を前に倒すこともなく反対側の足を前に運ぶことができるようになりました。

O脚を調整する場合は、「形」ではなく「使い方」が変わることが何よりも大切であると私は考えています。施術やその他の手段で形を整えたとしても使い方が変わらなければ、結局は元に戻ってしまいます。それも短時間で。
使い方が変われば、少しずつ少しずつですが着実に筋肉や骨格の状態が変化していきます。そのO脚のしぶとさにもよりますが、良い使い方をしていれば半年、1年と時間が経つうちにO脚は改善されていくと考えています。ですから私の仕事は自然と使い方が良くなるような状態になるよう調整を行うことだと考えています。
筋肉や骨格に問題があるために良い使い方ができない状態なのに、「頑張って使い方を変えてください」みたいなことを要求する整体師もいるようですが、私はそのようなことは要求しません。それはプロの仕事ではないと考えているからです。


O脚の調整を望んで来店される方々の多くは長い間の使い癖がありますし、筋肉なども「形状記憶」みたいに頑固になっていて、すんなり変調を改めてくれないこともあります。ですから、施術を始めた頃は「施術すると良くなるけど、1週間するとまたダメになってしまう」
というような状況になったりします。そんなことを何度も何度も繰り返しながら、ある日突然筋肉の状態がすっかり変化して一気に良い方向に向かう、ということも多々あります。

「O脚を直したい」ということで多くの方が来店されましたが、何度か来店されて来なくなってしまう人がほとんどです。今回登場していただいた人のように「もう手術はしたくない。しかし膝の痛みが辛いのでなんとかして欲しい」と思われている人や、1回の施術で「明らかに変化した」という実感を得られた人などは定期的に来店されますが、そうでない人は来店されなくなってしまいます。それは残念なことだと思っています。先ほども申しましたが、「使い方が変わらなければ形を変えても無理。使い方が変われば将来必ず形が変わる。」と私は確信しています。しかし、往々にしてそれは時間のかかることです。
冒頭に申し上げましたが、O脚が進行しますとやがて変形膝関節症になり、将来歩行が辛くなる可能性が高まります。「今は痛みもないし、多少のO脚でもやむを得ない。そんな人もたくさんいるし。」などと思っている人も多いと思いますが、O脚には十分注意をして頂きたいと考えています。

今回は膝周辺の問題について取り上げましたが、O脚を調整するときには足元、つまり足首周辺や足、足趾なども重要です。次回は足元について説明させて頂きます。