逆流性食道炎と胸の捻れ

 腰が弱いのに、それでも仕事を続けているため一年に何回か弱いギックリ腰になってしまう人がいます。本日その人が来店されましたが、今日はギックリ腰ではなく「肩がこって!」ということでした。この人が肩こりになるというのはほとんどありませんので、いろいろ伺いますと昨年末に左胸に差し込みの痛みが生じ、胃腸の具合も悪いため病院を訪れたところ“逆流性食道炎”であり、胸の痛みはパニック障害も疑わしい、という見解だったそうです。数年前に過呼吸の状態になったことがあり、その時もパニック障害と診断されたので「もしかしたら本当にパニック障害による胃腸の病かもしれない」と思ったそうです。年明けからいろいろな病院を回り検査を受けているようですが、そうしているうちに肩こりがとても気になりだしたということです。

 さて私の母もそうでしたが、胃腸の具合が悪くなると肩こりが辛く感じられることがあります。多くの人は、実際、皆さん肩こり持ちです。肩こりを持っていない人など皆無だと思ってしまいます。しかし肩がこっていても、それが気になる時、とても気になる時、気にならない時とあるようです。「今、とても辛いので揉んでほしい!」と思っている人も、翌日になると「それほど気にならなくなった」というようなことはよくあることです。

 “肩こり”、”胃腸の不調”、“逆流性食道炎”そしていつもの“腰”、今日はこれがテーマでした。この人は胃腸薬を飲むと下痢をしたりするようで、なるべく薬を飲まないで逆流性食道炎も良くしたいという望みを持っていました。

 食道は口から飲み込んだ食物を胃に運ぶ役割をしていますが、逆流性食道炎は食道の働き不調になっている状態であると考えることができます。食道は筋肉の蠕動運動によって少しずつ食物を胃の方へ動かすのですが、この筋肉の働きは実に絶妙で、極端な話、逆立ちをした状態でも口から入れた食物は胃の方へ送られるようにできています。本人は「食べてすぐ寝てしまう癖があるからいけないのかな?」とも言っていましたが、若い人たちなどで、そのような人はたくさんいますから、それが根本的な原因であるとは考えにくいことです。
 食物が逆流したり停滞してしまうのは、食道の筋肉が上手く働けない状態にある、と私は考えます。もちろん炎症によってそうなる場合もあります。
 私の母は薬の副作用的な影響によって口から喉から、おそらく食道や胃まで炎症を起こしましたから、水を飲むことすらできない状態になりました。食道が炎症を起こしてしまう原因は他にもいろいろあると思います。
 ところで食道が炎症を起こしていなくても筋肉が上手く働けないこともあります。筋肉は本来あるべき状態(長さが長くもなく短くもなく、かつ捻れがない状態)で効率よく働けるような仕組みになっています。例えば、食道は喉の奥から胃までの間にありますが、喉と胃の距離が本来より短くなりますと食道はたるんだ状態になってしまいます。すると筋肉の働きがか弱くなってしまいます。反対に胃が下がって間が長くなってしまうと食道は引っ張られた状態になりますので緊張(こわばり)します。これでも上手く働くことができません。
 喉と胃の間の距離は簡単には測定できませんが、一つの目安として肋骨(胸郭)があります。肋骨が上がって喉と胸郭の間が狭くなったり、反対に胸郭が腹筋に引っ張られて下がってしまうことはよくあることです。それ以外にも胸郭が捻れている場合は、食道や胃も捻れていると考えることができます。これでも食道や胃の働きは不調になります。

 この方の場合、胸郭がとても大きく左側に捻れていました。胸を左側に引き込む筋肉が強くこわばっていたため、それが胸を強く引っ張っていたので痛みが生じたということも考えられます。結局、胸郭を整え、噛みしめや目の疲労を整えることで施術を終えましたが、これでたぶん大丈夫だと思います。

 これまでも逆流性食道炎で悩まれている方を何人も施術してきましたが、全員と言っていいほど、胸郭を整え呼吸を整えることで改善しています。病院の薬や漢方薬などを何年も飲み続けても改善しなかったものが2度3度施術をすることで良くなることは私にとっては当たり前のように感じています。ただし、全部の逆流性食道炎が良くなると思っているのではなく、薬で駄目なら整体という手段もあるということを知っていただければと思っています。