頭痛① 後頭部と前頭部の頭痛

 頭痛や片頭痛に悩まされ、頭痛薬を飲まずにはいられないという人もかなりいるようです。いつもより激しい痛みに襲われたりしますと、「脳に異常があるのかも」と考えて脳外科を受診し、CTやMRI検査を受ける人もいます。
 非常に大切な頭の問題ですから、そういう行動をとられるのは正しいことだと思います。何も異常がなければそれだけで安心感を得られるわけですから。
 ところで、検査の結果“異常なし”と診断されても相変わらず頭痛が治まらない場合、「どうすればいいのだろう?」という次の疑問や心配が発生します。肩こりが強すぎて頭痛になったのか? あるいは別に原因があるのだろうか? もしかしたら体質なのかもしれない、などと疑いが湧いてくるかもしれません。

 さて、頭痛の多くは“緊張型”に分類される、筋膜のこわばりによるものです。簡単に表現しますと“頭の皮が頭蓋骨を締めつけている状態”です。ですから、その締めつけをゆるめますと速やかに頭痛は解消されます。そのためには筋膜のこわばりを解消する必要があるのですが、肩こりとは違って、いくら揉みほぐしたりマッサージをしたところでそうやすやすとこわばりが取れるものではありません。その場では少し良くなったように感じるかもしれませんが、次の日起きたらまた頭痛に襲われてしまうことも多いと思います。
 筋膜のこわばりというのは、“どこかが頭の皮を引っ張っている”というものですから、その引っ張りの原因を改善しなければなりません。この原因をそのままにして筋肉や筋膜をいくらマッサージしたところでこわばりは解消されないのです。
 頭痛の場合、その痛む場所によって原因が異なりますが、今回は後頭部と前頭部の痛みについて説明させていただきます。

後頭部の頭痛

 首の付け根から後頭部にかけての頭痛に対しては、先ず二つのケースが考えられます。 

  1. 後頭骨が上にずれてしまっているために、後頭部から首の後側の筋肉や筋膜が張った状態になり緊張して痛みを発する場合。
  2. 脊柱起立筋など背中の筋肉がこわばっているために、その連動性の関係で首の後面の筋肉や筋膜がこわばってしまい後頭骨を下の方に引っ張るように緊張して痛みを発する場合。

1.後頭骨が上にずれている場合

 私たちの骨格の仕組みとして、通常、後頭骨は仙骨と対をなして連動性をもって上下に動いています。呼吸運動では、正常であれば息を吸うときに後頭骨は下がり仙骨は上がります。息を吐くときはこの反対になります。つまり正常であれば仙骨が上に動くと後頭骨が下がり、仙骨が下に動くと後頭骨が上がる仕組みが備わっていると考えていただいてよいと思います。この原理に則って後頭骨が上にずれていることを考えますと、仙骨、つまりお尻(骨盤)が下がっている状態であると想像することができます。
 一般的な傾向として私たちに日本人は骨盤が後傾気味の体型になっていますので、仙骨が下がりやすい傾向にあると言えます。その上で背中を丸めるような姿勢をしていますと、背中の筋肉がゆるみますので仙骨は間違いなく下がってしまいます。
 また、“足(下半身)の筋肉が弱るとお尻が下がり、後頭骨が上がってしまう”という現象も起きます。現代の私たちの生活スタイルは運動不足の状況ですから、足腰が弱くなっていてお尻が下がった状態になっている人が多いと言えますが、それはすなわち、後頭骨が上がっている人が多いということになります。
 また、頭蓋骨の骨格的仕組みとして前面(顔面部)が下がると後面(後頭部)が上がってしまうというシーソーのような関係性もあります。顔面部はお腹側の影響を受けますが、お腹が冷えたりしてで腹筋がこわばりますとその影響が及んで顔面が下がってしまうことがありますが、その結果後頭部が上がってしまい、後頭部の頭痛を招いてしまう可能性もあります。

2.背中の筋肉がこわばって後頭部を引っ張っている場合

 私たちの背中の深部には脊柱起立筋群と呼ばれる骨盤から出発して後頭部まで繋がっている筋肉群があります。この筋肉群がこわばっていることによって後頭部周辺の筋肉や筋膜や頭皮もこわばってしまい頭痛を招いてしまう場合もあります。後頭部痛と同時に腰痛もあるようでしたら、このケースが疑われます。ふくらはぎや太ももの裏側にも張りや緊張を感じるようでしたらこの可能性が高いと思います。 
 このような場合は、骨盤を整えたり下半身や腰部のこわばりを改善することで背中の筋肉をゆるめ後頭部のこわばりを解消するように対応することになります。

 以上の二つ以外にも、頚部の骨(頚椎)が歪んでいることで後頭部の筋肉(後頭下筋群)がこわばってしまい頭痛を招いているという場合もあります。

前頭部の頭痛

 前頭部や眉間のところが痛くなる頭痛の多くは、顔がお腹の方に引っ張られているか、頬が下に下がっていることが原因であると考えられます。痛みや重さとしては額や眉間の部分に感じられることがほとんどですが、顔の筋膜や皮膚も引っ張られているので表情がこわばり、なんとなく機嫌が悪いような顔つきになっているかもしれません。
 また眉間にシワを寄せる癖のある人は、それだけでこの部分の筋肉がこわばりますので、頭痛になる可能性もあります。
 それ以外には、頬や鼻の骨が下がったために、この部分の筋肉や筋膜がこわばり頭痛や違和感を感じる場合もあります。

 顔面全体が下に引っ張られる原因として一番に考えられることは、お腹の冷えなどによって腹筋(の奥)が硬くこわばっていることです。腹筋のこわばり(収縮しっぱなしの状態)は胸(胸郭)を引き下げるますが、それにつられるように首の前面から顔面にかけての筋膜が引っ張られ、それらがこわばってしまいます。このようなときは前頭部に頭痛や重たさを感じるだけでなく、タオルで顔を拭くと痛みを感じる、目の下がいつもこわばっている感じがする、などの状態になるかもしれません。

 また、このような人は頭痛だけでなく、胃や腸や下腹部の不調も同時に抱えている可能性があります。
 例えばお腹が冷えたとします。すると腹筋の臍周辺や下腹部の働きが悪くなり筋肉がゆるんだ状態になってしまいます。すると、そのゆるみを補うように鳩尾(みぞおち)辺りの腹筋が収縮して硬くこわばります。この部分の硬いこわばりは胃や大腸を圧迫しますので、それらの働きがわるくなります。そして鳩尾の部分にできたこわばりに引っ張られるように肋骨(胸郭)が下がり顔面が下がります。

 顔面全体ではなく頬が下がっている人はかなりいます。私たちは日々食事をしたり会話をしたり、笑ったり、いろいろな表情をしますが、それによって顔面の筋肉もこわばったりします。特に口から頬にかけての筋肉は大変よく使いますので、カチカチにこわばっている人が多いです。するとそのこわばった筋肉に引っ張られるように頬の骨や鼻が下がります。若かった頃に比べて目元から頬骨にかけての部分が拡がっているように感じる人は頬が下がっていると考えられます。
 このような人は頭痛だけでなく上瞼も下に引っ張られているため、目の開け方が不十分になりやすいですし、目を大きく開くとき額の筋肉も使うようになりますので、額にシワができやすくなります。
 施術によってこのこわばりを解消しますと、楽に大きく目を開けることができるようになりますので、顔の印象が変わります。