足底の痛み ①着地すると小趾側が痛む

 時々、足を着くと足裏やかかとや小指のライン、親指のラインが痛むという人が来店されます。
 痛む場所や、痛みを出す状況によって原因は異なりますが、今回は“着地すると小指側が痛む”、“歩くと小指側が痛む”ことについ説明させていただきます。

 痛みを出すのはほとんど筋肉の問題です。着地の時は、からだの重みを受け止めるために足のアーチが沈むわけですが、その時に筋肉は伸びるようになります。もし筋肉の中にこわばって伸びることのできない部分(筋線維)がありますと、そこが痛みを発するようになります。
 あるいは着地の時ではなく、歩行時など地面を蹴って前に踏み出そうとするときに痛むのであれば、それは筋肉がうまく働くことのできない状態になっているために、地面を蹴ることができないからです。
 その判別は、体重が掛かっていない状態で痛みを出す部分を指圧するとわかります。指圧で痛むのであれば、それは筋肉のこわばりによるものです。状態がひどくなりますと、そっと触れるだけでも痛みを感じることがあります。
 指圧しても痛くないのであれば、それは筋肉のこわばりによるものではなく、力が入らないために小趾を上手く動かすことができないからだと考えられます。小趾を支え、動かす担当をしている筋肉の働きが悪いので、他の筋肉に負担が掛かっていることが考えられます。

筋肉のこわばりによって着地時に痛みが生じる

 筋肉がこわばってしまう理由はいくつか考えられますが、足の小趾側の筋肉に限定しますと、だいたい二つの理由に絞られます。

①小趾中足骨が不安定な場合

 踵から小趾先にかけて中間のところに第5(小趾)中足骨があります。

 この骨が不安定ですと、そこに付着している筋肉(短小趾屈筋)はこわばってしまいます。骨は筋肉が働くための足場としての役割を担っていますが、骨格が不安定だということは足場が不安定になっているということですので、筋肉はリラックスすることができないで常に緊張状態になってしまいます。

 小趾中足骨が不安定になる理由としましては、ふくらはぎ外側面の筋肉(短腓骨筋、第3腓骨筋)がこわばっていることがまず考えられます。
 また小趾が捻れている場合も小趾中足骨は不安定になります。外反母趾や内反小趾の人は母趾も小趾も基本的に捻れています。足の外側に重心の掛かっている人も小趾が捻れていることが多いです。立ったり歩いたりしたとき、小趾を捻るように使ってしまう可能性が高いからです。
 さらに、足の横アーチが機能していない「開張足」でも小趾中足骨は不安定になります。「だんびろの足」とは、今は言わないのかもしれませんが、力感の乏しいベチャッとした足です。

 開張足を防ぐためには、筋肉としては母趾内転筋(ぼしないてんきん)を良い状態に保っておく必要があります。
 母趾内転筋の働きが悪くなる理由としましては、まず第一に、ヒールの高い靴などによる影響があげられます。ヒールの高い靴を履きますと踵が浮いた状態で着地している状況になりますから、足のMP関節が甲側に曲がった状態で立ち続けることになります。それはMP関節周辺に負担を強いることになりますし、母趾内転筋を伸ばしつづけていることになります。筋肉は伸ばし続けられますと、やがてゆるみきってしまい働きが悪くなってしまいます。つまり、母趾内転筋が疲弊して縮まなくなってしまいますので、足が横に拡がり横アーチが失われてしまいます。

 また、特に高いヒールを履いたこともないのに母趾内転筋の働きが悪くなっている場合もあります。筋肉は「連動する」という大きな特徴をもっていますので、母趾内転筋自体に問題がなくても連動する筋肉がゆるんで働きの悪くなった状態になりますと母趾内転筋の働きも悪くなってしまいます。
 膝裏の一番奥にあります膝窩筋は母趾内転筋と連動関係にあります。膝窩筋は膝を曲げる筋肉(屈筋)に属していますが、例えばO脚などで反張膝(普通以上に伸びた状態の膝、バレリーナの膝)の状態になりそれが固定化しますと、膝窩筋が伸びてゆるんだ状態になってしまいます。それによって連動する母趾内転筋の働きが悪くなり開張足になってしまうこともあります。また、手のひらにも母指内転筋がありますが、手指の使い過ぎなどで手の母指内転筋が疲弊しますと、連動関係で足の母趾内転筋の働きが悪くなります。

 高いヒールを履いたことによって、あるいは筋肉の連動関係によって母趾内転筋の働きがわるくなりますと開張足になりますが、それは小趾中足骨だけでなく足趾や足の骨全体の不安定を招くことになりますので、当然、小趾に関係する筋肉がこわばったり、あるいはこの後に説明いたします「小趾を動かす筋肉の働きが悪くなる」状態を招くことになります。

②小趾の捻れや踵の歪みによる場合

 足の小趾側の一番外側にはMP関節付近から踵にかけて小趾外転筋(しょうしがいてんきん)があります。

 ところで、足のトラブルの一つに“内反小趾”があります。足の小指(小趾)が内側に捻れていて、さらに小趾のMP関節が4趾から離れた状態になり、小趾先からMP関節付近の外側に痛みを伴う状態のことです。外反母趾と対称的な状態ですが、外反母趾の人の多くは内反小趾にもなっています。
 さて、小趾先からMP関節にかけて内側に捻れますと小趾外転筋はこわばります。あるいは踵の骨が歪んだり、外くるぶし(外果)の位置が歪んだりしますと小趾外転筋がこわばることがあります。また、筋肉連動の関係で小趾外転筋がこわばることもあります。

 経験的に申し上げますと、小趾外転筋だけがこわばったとしても、床に着地しただけで痛みを発するということはほとんどありません。①で説明しましたように小趾中足骨の不安定な状態が重なったり、その他の要因が重なったときに痛みを発する場合が大半です。

筋肉の働きが悪くて踏ん張ることができずに痛みを発する

 小趾を支えたり、小趾を動かす筋肉の働きが悪く、荷重に耐えられなかったり、歩行時などで、うまく地面を蹴ることができないので他の足趾(指)に負担が掛かって痛みを出してしまう場合があります。その原因としましては血行不良やケガなど外傷による影響が考えられます。あるいは筋肉連動の関係で、小趾に関係する筋肉の働きが悪くなっている場合もあります。

 「朝、起きがけの第一歩を踏み出すときなどに痛みを感じる」というのは血行不良によって筋肉の働きが悪くなっていることが考えられます。「動いているうちに、少しずつ痛みが和らいでくる」というのであれば、血液が循環することで筋肉の働きが回復してくるということですから、まず血行不良について考えたり対策する必要があります。
 朝の起きがけだけでなく、座った状態から立ち上がって一歩を踏み出すと必ず痛む、というような場合もありますが、このような場合は血行不良だけでなく、その他の要因が絡んでいると思われます。
 いずれにせよ、筋肉の働きが悪い状態になっているためにしっかり骨格を支えることができくて、踏ん張ることができない状態になっているということです。

 次にケガの影響について考えてみます。例えば足の甲側(外踝の前くらい)を捻挫したり、小趾を骨折したりして、その傷が治りきっていない場合などです。
 ねん挫による最も大きな影響は靭帯が伸びてしまったために関節がグラグラと不安定になってしまうことです。関節は踏ん張りが効かない状態になりますので、体重を支えることができなくなってしまいます。歩いたり、走ったりする運動などから受ける負荷に耐えられない状態ですので痛みを発します。
 骨折の場合は動かすこともできなくなりますので、尚更負荷に耐えられないので痛みをはしますが、医師が「骨折は治った」と診断された後も、骨膜の状態が元に戻っていないことがあります。と申しますか、ほとんどの場合、骨がくっついただけでは完全に治癒しているとは言えません。捻挫も骨折も「腫れが引いて痛みが取れた」だけでは完全に回復したとは言えないと私は考えています。骨に付着している筋肉や関節に関係する筋肉の働きがしっかり戻った状態になるまで治癒させないと、何年経っても、何十年経っても、自然にしっかりした状態に戻ることはほとんどないと言えます。加齢などによって筋力が低下しますと「昔の古傷が痛む」という状況が現れますが、それは「実は傷がまだしっかりと治っていない」ことの現れだと考えています。
 つまり、もうすっかり忘れてしまうほど昔の捻挫や骨折の影響によって、「着地すると痛みを感じる」、「歩くと痛む」という症状が現れることも、十分に考えられることです。
 また、爪を深爪したり、何かに打撲したり、ちょっとした傷がついてしまった、といった「些細なことに思われること」の影響でも同じような状況になることがあります。
 このような場合は、何よりも傷をしっかり治すことが優先されます。いくらマッサージしたり、湿布を貼ったりしてみても痛みの原因は治まりません。

足のバランスと痛み

 たとえば、捻挫や骨折などの古傷がしっかり治っていない状態だったとしても、あるいは多少、小趾中足骨などがグラグラしている状態だったとしても、足裏全体でバランス良く立てる状態であり、効率よい歩き方ができる状態であれば、痛みを感じることはないかもしれません。それは、体重や運動による負荷が足裏全体に均等に分散されますので、小趾に対する負荷がそれほど掛からないからだと考えられます。
 ところが、足の外側(小趾側)に重心が掛かっている人の場合、歩行で着地するときは必ず小趾側に負荷が集まってしまいます。立っていても足の内側が浮き気味なって小趾側に負荷が掛かってしまいます。
 足の骨格がしっかりしていて、筋肉の働きに問題がないのであれば、このような状態でも痛みを感じることはなく、ただ「疲れやすい」という感じがするだけかもしれません。ところが疲労が溜まったり、筋肉が少し変調したり、骨格が不安定な状況になったりしますと痛みを感じるようになるかもしれません。そして、このようなケースは多いかもしれません。しばらく安静にして疲労が回復しますと痛みを感じることがなくなってしまう場合などです。

 一口に「足のバランスを整える」と言いましても、それは何かの運動をしたり、マッサージをすることなどで簡単にできることではありません。からだ全体のバランスを整えることが必要になりますので、やはり専門家に任せるのがよいかと思います。


 今回のテーマについての最初のブログは2015年2月に投稿しましたが、その後も読まれていらっしゃる人が多いようですので、今回は内容を増やして書き直しました。
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