五十肩など肩関節の不具合や痛みを考える

肩が痛む、腕が上がらない、腕が回せない、などの不具合
 一般に五十肩とか四十肩と呼ばれる肩関節の不具合は、中高年に限らず若い人でも高齢者でも起きるものです。「こうなってしまうと一年くらいは我慢しないと‥‥」と思われている人はけっこう多いものです。しかし、そんなことはありません。よほど炎症がひどく肩をほとんど動かすことができない、筋肉や筋膜に癒着が起こっているなど器質的に変化してしまった、などの場合を除けば、かなり速やかに不具合や痛みは軽減することができます。

肩関節の不具合や痛みで当店に来られた方々を拝見しますと、骨格的な特徴として次の二つがあげられます。
  @体が捻れていて、その歪みが肩関節に負担をかけている場合。
  A何らかの理由で、肩から腕が少し落ちて(離れてしまって)いる場合。

 肩関節周囲炎、上腕二頭筋長頭腱炎、腱板炎などという病名がつく場合もあります。肩ではなく手首付近や手指に不具合や痛みが生じれば腱鞘炎(けんしょうえん)という病名が有名です。
 これらは「炎」という文字に象徴されますように「炎症しているから痛いのだ。だから湿布などで冷やして炎症を軽減するようにする必要がある。」などと思われている人もきっと多いことでしょう。
 しかし、体の捻れを調整することで多くの方がだいぶ楽になって帰られます。(そうでない場合も希にありますが) 
 うちみや捻挫、外傷などのケガをすれば炎症は起こりますし、ギックリ腰をしてしまうと全身が炎症状態になってしまいます。筋肉を酷使しても炎症は起こります。しかしそれはせいぜい数日程度の間です。五十肩や腱鞘炎で1ヶ月も2ヶ月も炎症が続くということは考えにくいですし、もしそうだとするなら、それは関節が歪んだままの状態で筋肉を使い続けるから炎症が止まないのだと考えるのが妥当だと思います。

 肩や腕などに不具合が生じて、湿布や塗り薬など保存療法を行い、一週間以上経過しているにもかかわらず改善の兆しが見えてこない、とお思いの方は是非一度ご相談下さい。

@体が捻れていて、その歪みが肩関節に負担をかけている場合。
 体の捻れについては別の項目でも説明していますが、非常に多く見られます。ほとんどの人が何らかの捻れを持っていると云っても過言でしょう。しかしながら、それらの人のすべてが五十肩やそれに似た症状、あるいは膝がおかしいなど関節に不具合を持っているかというとそういうわけではありません。なぜ症状を出す人とそうでない人がいるのかについての定かな答えはまだ持っていませんが、冷えや疲労などが重なり血液の流れが悪くなると、それまで多少骨格が歪んでいてもバランスをとろうと頑張っていた筋肉が頑張れなくなり、どこかにそのしわ寄せが集まり、そこが症状を出すのかもしれません。

 肩関節の動きに深く関与するのは肩甲骨です。肩甲骨の動きが制限されると腕を水平より上に上げることができなくなります。肩関節が他の関節に比べて大きく動くことができるのは、肩甲骨が大きく動けるからなのです。
 上の右側の写真は肩甲骨が前に出てしまっている場合のものです。これは体が捻れていることによって肩甲骨が前に引っ張り出されているのです。
 この捻れ状態が強くなりますと、腕を動かさなくてじっとしているだけでも「肩の山が痛い!」という状況になります。また体はひとつながりですので、右膝の内側も「ピリピリ」「ジンジン」痛くなったりします。

エ!って思うような実例
・ウォーキングを始めたら腕が上がらなくなってしまった
 60才を過ぎ、そろそろ真剣にメタボ対策をしなくてはならないと考えたAさんは、それまでほとんどウォーキングなどしたことがなかったのですが、毎日1時間あまりウォーキングをすることにしました。始めて何日かするとふくらはぎはパンパンになり、一週間ほどすると着替えの際、腕を上げる動作に痛みを感じるようになりました。
 「まさか五十肩?」と心配になりやって来られたAさんを拝見しますと、ちょうど上の写真のようでした。
 体を丁寧に調べていきますと、特に右のふくらはぎがパンパンに張っていて、いつもと違う様子に「どうしたんですか?」と尋ねますと「ウォーキングを始めたらパンパンになってしまって」とのことでした。馴れないウォーキングで疲れる筋肉は、足で地面を蹴るヒラメ筋です。外くるぶし近くのアキレス腱に疲労がありました。それによってスネの骨の外側にある骨(腓骨)が少し上にずれていました。そしてそのずれが体全体の捻れにつながり、さらに"みかんもぎ”という作業で腕を上げる動作を多くしたことが重なり肩関節の痛みになったのだと思われます。
 ヒラメ筋をていねいにケアし、ふくらはぎの疲労を回復しますと、腓骨は本来の位置に戻り、前に出て浮いていた右肩も平らになり、その場で肩関節の痛みはぐっと軽減しました。

・ころんだら腕が上がらなくなり、肩と膝に痛みが
 高齢者のSさんは、ちょっと足を滑らせ前掛かりにころんでしまいました。その際、とっさに右手を地面について顔をかばったのですが、ちょっとタイミングが間に合わず右の頬の上のところを地面に擦ってしまいました。右手も地面に強く打ってしまいました。それから腕を動かすと、腕と肩が痛くなり手にも力が入らなくなってしまいました。
 Sさんの右肩も上の写真のようでした。じっと仰向で横になっているだけでも、Sさんいわく「肩の山が痛い!」という状態です。さらに右膝の内側も痛いとのことでした。体は大きく捻れていました。仰向けなのに胸は大きく左側を向いていて鎖骨もずれていました。ちょうど右手の親指の付け根のところ(母指球)を地面についたようで、その影響で鎖骨がずれていて、それが体の捻れにつながっていました。
 Sさんの場合は手と頬の上に打撲や擦り傷があったため、それが治らない限り症状が解消されることありませんが、それでも2回の施療でだいぶ回復しました。(今でも月一回のペースで来られますが、そのたびケアしています)
 一般の方がエッ!と思うことを申し上げます。Sさんへの施療の最後は頬の上に手を添えるだけのケアをするのですが、そうすると体全体がだいぶ楽になります。頬の上こめかみのところには側頭筋という噛む筋肉(咀嚼筋)の端っこがあります。その筋肉あるいは筋膜が弛んでいると体が反対側に捻れてしまいます。高齢者ということもありますが、擦り傷を負ってしまったこの部分はなかなか完全には回復してくれません。ですから私はSさんに「毎日この部分に手をあててケアしてください。」と申し上げます。整体的に、噛む筋肉は体の筋肉の中でも非常に大切な筋肉です。噛む筋肉をしっかりさせると五十肩が良くなる場合もあるのです。ご飯は両方の歯でよく噛んで食べましょう。

A肩から腕(上腕)が少し落ちて(離れてしまって)いる場合
 可能なら腕を水平に上げ、それが無理なら下に降ろしたままでもいいですから、腕を内側(内旋)・外側(外旋)にひねってみてください。どちらを回しても痛みが生じたり、あるいは突っ張ったり、詰まったような感じがするならば、それは腕と肩の間が少し離れている可能性があります。

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 肩関節と腕の骨の間をしっかりさせる筋肉がいくつかありますが、その中のどれかが疲労しているか変調していてうまく働いていない可能性があります。そのため、その他の筋肉(上腕二頭筋とか上腕三頭筋など)がその働きを補うように、あるいは肩と腕が離れてしまったためにこわばってしまい、動かすと痛みを発すると考えられます。
 肩や腕の筋肉を傷めたことがある、腕の筋を伸ばしてしまったことがある、脱臼したことがある、このような経験がある人は時間が経って「もう大丈夫なはずなのに」と思っていても、筋肉の機能が戻っていないならば何十年も古傷を引きずってしまうことになります。「これまでは大丈夫だったのに、ここにきて急に‥‥」と思われるかもしれませんが、体の冷えとか疲労とかが重なると症状が現れることになります。

・注射のあとが筋肉に変調をもたらした例
 Oさんは仕事上、右腕を上げて指先を使う動作をよくします。ある時転んでしまい右肩を地面に打ってしまいました。そのケガにより右腕を上げると痛みを伴うになり、それでは仕事にならないからと整形外科で痛み止めの注射を打ちながら仕事を続けていました。しばらくすると打撲の傷も癒え安静時の痛みはなくなりました。しかし仕事で腕を使うときの痛みは一向に取れていきません。最初のケガから3週間ほどして当店にやってこられました。
 Oさんの状態は、体に捻れはありましたが、それを修正しても今ひとつ症状が軽快になりません。そこで肩関節そのものを見ますと腕が少し落ちて(肩から離れて)いました。そしてどの筋肉がおかしくてそのような状態になっているのかを確認していくと、真横から少し後目の肩関節から少し腕にかかったところ(三角筋)に筋肉が弛んでしまっているところがありました。そしてそこにしばらく手を当ててケアすると筋肉にハリが戻ってきて肩関節もしっかりしてきました。腕を動かしてもらうと「楽になった!」ということで施療を終えました。
 「どうしてこんなところ(三角筋)が弛んでいるのか心当たりはありますか?」と質問しますと、「ちょうどそこは整形外科で痛み止めの注射を何度か打ってもらったところです。」と応えが返ってきました。
 筋肉とは実に微妙なものなのです。注射針でできた傷もやはり傷なのです。
 
 女性のKさんは「左肩から腕にかけて重だるく手先にシビレもあって」とやってこられました。症状から察するに、首が凝っているか首の筋肉がこわばっていて、首から手先にいく神経が圧迫されている可能性が考えられます。そこで首と肩をもみほぐし、首の筋肉のこわばりを解消してみましたが、腕の重苦しさは軽快しないということでした。やはり肩関節があまく、腕が少し下がっていて上腕の筋肉も前腕の筋肉も、そして手の筋肉もこわばっていました。そして、本人に「肩関節があまく腕が下がっているんですけど、心当たりはありますか?」と尋ねたところ、「実は少し前まで石灰沈着性腱板炎の治療のために某大学病院で注射での治療を何度もしました。」とのことでした。肩を出していただきその場所を見ますと、何度も注射をしたせいかシミのように色が少し黒ずんでいました。
 その一つ一つにじっくりと時間をかけ指を添えるケアをしました。何度か一時的に腕が非常にだるくなる過程が訪れました。気血水というエネルギーが流れたくてもなかなか流れないような状態になると、一時的に痛みやだるさとなって現れるようです。ほんの数十秒程度のことですが。15〜20分くらいそのケアをすると肩がしっかりしてきて、こわばっていた腕の筋肉が楽になったようです。本人も「すっかり楽になりました。」と帰っていきました。それ以来いらっしゃいませんから、もう解決したのだと思います。
 注射の善し悪しについてはわかりませんが、注射針の痕、特に太い注射をした痕は、体に大きな負担をかけることにつながると改めて思いました。
 
体の捻れを改善するのに骨をコツコツ・ボキボキ矯正する必要はまったくありません
 これまでお話ししてきましたように体の捻れは多くの場合、目や口の使い方、手の使い方、捻挫あとの治癒がちゃんとできていないなど、体の端の部分の筋肉バランスが悪いことが原因でたらされています。改善すべきは捻れの出発点であるところの筋肉のバランスです。
 ゆめとわの整体では、手指や足指、足首などで機能が衰えているポイントにそっと指先をあて、筋力や機能の回復を促します。そうすることで骨盤をはじめ骨格のゆがみが整っていき、体のゆがみが改善していきます。