2011.06.30
五十肩・肩関節の異常について

 腕を動かすと肩が痛む・腕が上がらない・腕が後にまわらない・肩がジクジク痛む・いつも肩に違和感がある‥‥という症状は俗に“五十肩(四十肩)”と呼ばれていますが、年齢に関係なく20歳代の人も60歳代の人も患う症状です。
 五十肩になると治るまでに、半年、一年、一年半の期間を要するという俗説が定説のごとく語られている現実があります。しかし、そんなことはまったくありません。症状をもたらすことになった原因を確実に捉え、それを修正することができれば即座に症状は改善し痛みはやわらぎます。
 五十肩に関しては“アイロン体操”に代表されるリハビリ運動が有効とされているようですが、私の目から見ますとそれらは効果的でないばかりか症状を悪化させる危険性さえあるように思えます。
 今回は五十肩(肩関節の異常)の対処法について考えてみたいと思います。

 五十肩(肩関節の異常)の四つの項目
    @肩を揉みほぐしても無駄‥‥五十肩・肩関節異常の確認方法
    A筋肉のバランスを整えることがカギ
    B手の疲れはとても強く影響する
    C五十肩はすぐに改善できる‥‥しかし、こじらすと時間がかかる

@肩を揉みほぐしても無駄です‥‥五十肩・肩関節異常の確認方法
 
五十肩は肩関節や肩周辺の痛みやしびれですから、肩こりが原因しているのではないかと思っている人がたくさんいます。しかし、それはまったく違います。いわゆる“肩こり”というのは首・肩の筋肉や筋膜に水分や老廃物が溜まってしまい、内圧が高くなってコチコチになってしまっている状態です。これは揉みほぐすなどによって中の水分や老廃物を流してしまえば内圧が下がりますので、筋肉や筋膜は本来の柔らかい状態に近づき“コリがとれていく”状態になります。ところが五十肩に代表される肩関節周囲の痛みやしびれは、肩に関係する筋肉のバランスが悪くなってしまったことによってもたらされますので、筋肉のバランスを整えることが肝心です。


 上の写真のように腕を水平近くに保ち、内回し、外回しをしてみてください。この時、肩や腕に痛みやツッパリ感が生じたり、よく回らなかったりするようでしたら、程度の差こそあれ五十肩(肩関節異常)の兆候です。
 今は日常生活に支障をきたしていないとしても、バランスを整えておかないとやがて腕が上がらなくなったり、肩関節が痛み出すような症状が現れるようになるかもしれません。



A筋肉のバランスを整えることがカギ
 上記の運動テストで、内回しか外回しのどちらかでも異常があるようでしたら、それは肩関節に関係する筋肉のバランスが悪いので肩関節(肩甲骨と上腕骨の関節)が正常ではないということです。このような状態で肩関節を動かして無理をしていますとやがて炎症が生じ、肩が痛い、腕が動かせないという状態になる可能性があります。こういう流れが五十肩を患う大まかな仕組みです。
 ですから筋肉のバランスを修正しないままで、少し痛みを感じても無理やり可動域を拡げようとするリハビリには反対です。また整体の手技においても、学校などでは肩関節を大きく動かして可動域を強制的にでも拡げるように指導しているところが多いようですが、それはまったく理に反しています。そのようなことを続けていれば、炎症も悪化し、筋肉の器質そのものが変化してしまいますので、本当に1年〜1年半、五十肩が治らないという状態になると思います。

 今流行の言葉に“インナーマッスルを鍛える”というのがありますが、肩関節におけるインナーマッスルの働きは大きく3つあります。ひとつは地球の重力に負けて肩から腕が落ちないようにする働き(棘上筋)、そして腕を内側に回す(内旋:肩甲下筋)働きと外側に回す(外旋:棘下筋と小円筋)働きの3つです。それらの他にアウターマッスル(*1)が参加して腕を前後・左右・上下に大きく動かす働きが行われます。そしてインナーマッスル、アウターマッスル合わせてこれらの筋肉の中のどれかひとつでも正常でなければ、先のテストで腕を内回し・外回しした際、快適に動かせない状態になります。
 また、筋肉以外に骨も関係してきます。肩関節を形成している骨は鎖骨と肩甲骨と上腕骨です。鎖骨は手では親指や小指の影響を受けますし、首の筋肉(胸鎖乳突筋)を介して噛む筋肉とつながっていますので、片噛み癖や噛みしめ癖の影響を受けます。例えば噛み方がよくない人やパソコン作業などの多い人は肩が前に出て内側に入り込むような状態(胸を張った状態とは反対)になりますので、それだけでも肩関節の運動に影響が出ます。
 私たちが腕を水平より高く上げるためには肩甲骨が回転してくれなければなりません。肩甲骨の動きが制限されますと腕を高く上げることができませんので、洗濯物を干すことがつらい、などということになります。そして肩甲骨の動きに関しては下半身の筋肉の状態が影響する場合が多くあります。

 筋肉が硬くなってしまっているのでストレッチを積極的にしたり、あるいは痛みを伴っても肩を大きく動かすことによって筋肉が硬くならないようにする必要がある――と正論のように聞こえる理屈のもとリハビリ運動を推奨する場合が多いようですが、筋肉はそのようにはできていません。痛みを我慢してまでストレッチを行いますと、反発して縮みたがる力が増しますので、かえって動きが悪くなるということにつながります。
 肩に関係する筋肉が自然と伸びやかになる状態に整えること、そうすることによって肩関節が本来の姿に戻り、痛みや炎症やしびれが解消していくということが改善への道理です。

(*1) 肩関節に直接関係するアウターマッスルは、三角筋・僧帽筋・大胸筋・大円筋・広背筋・上腕二頭筋・上腕三頭筋・小胸筋・烏口腕筋・前鋸筋・菱形筋などいろいろあります。



B手の疲労はとてもつよく影響する
 五十肩(肩関節の異常)のすべてがそうだというわけではありませんが、手の疲労は肩関節の不具合の多くに関係しています。
 大雑把に申し上げますと、親指や母指球のラインは三角筋の前面と関係しますので鎖骨の位置に影響します。動きでは腕を内旋(内回し)したり高く上げたりすることに関係します。さらにいえば親指がおかしいと膝の内側に違和感や痛みを感じたりすることなります。
 小指や小指球のラインも仕組みは違いますが、症状としては母指ラインと同じようなものです。小指のラインは大胸筋と関係しますので、鎖骨の位置に関係し腕の内旋(内回し)に関係します。
 人差し指のラインは肩甲下筋と関係します。肩甲下筋はボールを投げたり、テニスのサーブなどの動作に関係します。人差し指に力が入らない人はテニスのサーブが強く打てなかったりします。

 ほとんどの人は自覚していませんが、手首の近く、いわゆる手の土手の部分(母指球・小指球)の深いところが強くこわばっている人がたくさんいます。そしてこのこわばりが原因して肩関節がおかしくなっている場合がたくさんあります。
 私たちは日々本当にたくさん手や手指を使っています。パソコン操作や携帯電話のメール打ちが日常生活の一部になっている今日では特に手指に疲労を持っている人が多くいます。
 この部分の疲労を取り、筋肉を調整することによって肩関節のバランスが整い五十肩が改善する場合が多々あります。 



C五十肩はすぐに改善できる‥‥しかし、こじらすと時間がかかる:筋肉の疲弊
 五十肩(肩関節の異常)はすぐに改善できる症状です。それはおかしくなっている筋肉や骨のバランスを整えるだけですむものです。
 しかしながら「肩が痛いのに無理して使ってしまっている」という状態が長引きますと、つまり症状をこじらせてしまいますと、改善するのに時間がかかってしまうようになります。経験からいいますと、肩から腕が落ちないように引っ張り上げている棘上筋が疲弊しますとなかなか大変です。あるいはアウターマッスルではありますが、肩全体を包み込むようにある三角筋に傷がつくなどしてその働きが弱まりますとやはり改善への時間がかかるようになります。
 筋肉は伸ばされた状態で長く放置されることに弱いものです。例えば潮干狩りや草むしりなどで、長い時間しゃがみ込んだままの姿勢でいますと、アキレス腱や足首周辺の筋膜が伸ばされまま放置された状態になります。そうしますと短時間では筋力や筋膜の張りが回復しない状態になります。そしてその影響で腰痛になったりします。
 五十肩の症状が進みますと、ただ立っているだけでも腕が重たくなり、やがてほんの少し動かすだけでも痛みが走る状態になってしまいます。腕を抱え込んで肩と腕をくっつけておきたい心境になったりします。それは棘上筋の働きが悪くなってしまった状態です。棘上筋をはじめ、インナーマッスルは本来疲弊しにくい筋肉ですが、いったんこれらが疲弊しますと、なかなか元に戻りにくい筋肉でもあります。
 整形外科では肩関節に痛みが強いとき、あるいは炎症が進んでいるときなどは、痛み止めや消炎剤の注射を使うことがあるようです。このとき注意しなければならないのは注射の針による傷です。しばしば注射をするようになると筋肉にたくさん傷をつけることになります。すると筋肉の収縮力が低下しますので、腕が微妙に下がることになります。すると棘上筋はじめインナーマッスルに負担がかかるようになりますので、腕を動かすことだけでなく、腕を下げておくことすら辛く感じるようになります。これも五十肩をこじらせてしまった状態と同じで、なかなか早期に改善することは難しくなります。
  

ゆめとわでの対応
 “少しの痛みは我慢してでも可動域を拡げる運動(リハビリ)を行う”ことは間違っていると考えています。上記に記しましたように、肩関節に関わる筋肉のバランスを整えることが何よりも肝心と考えていますから、関わる一つ一つの筋肉や骨を丁寧に観察し、整えることがここでの施術になります。ほとんどの施術は無痛です。長い間腕を抱え込むようにしていた人は脇の下にある筋肉がこわばっていますので、それはストレッチのようにしてこわばりをとります。その際「痛気持ちいい」感じになりますが、それ以外の施術は痛みをともないません。
 長い間五十肩の状態にあって症状をこじらせてしまったような場合は、筋肉の器質が変化していますので、それを戻すのには何回か来店していただかなければなりませんが、ほとんどの場合は、1〜2回の施術で症状は改善すると思います。

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