2012.03.06
胃や腸の不調について(整体的観点から)

 胃や腸の調子が悪いことと整体療法とが直接関係すると思っている人は少ないかもしれませんが、意外に関係が深いものです。
 胃腸に限らず生命維持にとって大切な内臓の臓器は、肋骨(ろっこつ)胸郭(きょうかく))に守られ、腹筋や背筋、そして骨盤に護られています。つまり、肋骨や腹筋や背筋や骨盤が器であり、その中の内容物として様々な臓器があります。
 器が歪めば中身も歪むと考えるのはごく自然なことです。
 胃や腸など内臓の調子がおかしくなったので、体が歪んでしまうという考え方も成り立つかもしれませんが、反対に体という器が歪んでしまったために内容物である臓器に負担がかかり、臓器の働きが悪くなったということも考えられることです。
 噛み合わせの大切さ
    @腹式呼吸の在り方が大切
    A胸郭(肋骨)に歪みがないことが大切
    B腹筋のこわばりが胃を圧迫している可能性
    Cお腹の冷えには、本当に注意が必要

@腹式呼吸の在り方が大切
 内臓を入れている器は大きく3つに分けられます。簡単に表現すれば、胸部と腹部と下腹部(骨盤)です。胸には心臓と肺と気管と食道があります。胃、肝臓(かんぞう)胆嚢(たんのう)膵臓(すいぞう)脾臓(ひぞう)腎臓(じんぞう)、副腎、十二指腸(じゅうにしちょう)、小腸、大腸は腹部であり、子宮や前立腺、膀胱(ぼうこう)などは骨盤内にあります。(小腸や大腸も骨盤と関係します)
 そして腹部と下腹部との境界は明確ではありませんが、胸部と腹部は横隔膜という呼吸のための筋肉の膜で明確に分かれています。
 「腹式呼吸が大切だ」ということはよく言われていることですが、腹式呼吸の要はこの横隔膜です。横隔膜が収縮することによって、つまり横隔膜が下がることによって肺が拡がり空気が肺の中にたくさん入ってきます。そのとき腹部の内容物も上から圧力を受けることになりますので、お腹が前に拡がるようになります。そして息を吐き出すとき、横隔膜が上に上がるので腹部の内容物も元に戻るため前に出されたお腹が引っ込むように動きます。
 つまり、腹式呼吸のリズムで内臓はずっと運動を続けていることになります。腹式呼吸がゆったり大きくなされている時、内臓はゆったり大きく運動をしているわけです。このリズムが私たちの体を健康に保つ生命のリズムです。

 ですから無意識の状態で腹式呼吸が順調に行われていない状態が続くならば、内臓のリズム運動も適切に行われていないことになりますので、内臓の調子が悪くなってしまうのも理にかなったことと考えることができます。


A胸郭(肋骨)に歪みがないことが大切
 「骨は容易に動きます」ということは一般の人には想像しにくいことかもしれませんが、それがどんな骨であれ、頭蓋骨であれ、骨盤であれ、それらは筋肉や筋膜によって支えられていますので、筋肉や筋膜の状態を変化させることでいとも簡単に動かすことができます。(骨そのものを変形させるという意味ではありません)
 私たちの胸を護っている胸郭は12本の肋骨でできていますが、肋骨の一つ一つは呼吸運動のために上下や左右に動きやすいような仕組みになっています。動きやすいということは、反面不安定でもあるということもいえます。ですからちょっとしたことでも容易に歪んでしまいます。
 肋骨(胸郭)が歪みますと、単純に、息が通りづらくなり呼吸が浅くなってしまいます。そして横隔膜はこの肋骨を土台(足場)に働いている筋肉ですので、肋骨が歪んでしまいますと横隔膜の働きも鈍くなります。満足のいく腹式呼吸ができなくなるということです。

 実際のところ肋骨を歪ませる要因として多いのは、目の使い方、噛み方、手の使い方です。そして次に取り上げる腹筋の状態です。さらにストレスなど精神的な影響によっても肋骨はフレキシブルに動き、胸が閉じたり開いたりします。
 テレビやパソコンや携帯電話の画面などを見る方向がいつも同じだったりしていますと目を動かす筋肉が偏ることになり、その影響で胸郭は歪みます。片方の歯ばかりで噛んでいる片噛み癖、噛みしめや歯ぎしりの癖によって胸郭は歪みます。携帯メールを頻繁に打つ人は指の使い方に偏りができますので、それによって胸郭が歪み腹式呼吸に影響がでます。パソコンを使い続けている人は肩が前に出やすく、鎖骨も内側に入り下に下がりますので、自ずと胸郭が圧迫され呼吸が浅くなってしまいます。それが胃の不調につながっているかもしれません。


B腹筋のこわばりが胃を圧迫している可能性
 肋骨でできている胸郭と骨盤を腹側でつないでいるのは腹筋です。特に腹直筋は(へそ)を中心とした体の前面にありますので、その状態によって胸郭と骨盤の間隔が広くなったり狭くなったりします。
 腹直筋の働きが悪くなり、ゆるんだ状態になりますと胸郭は上に上がることになり、胸が顔に近づいた状態になります。この状態は呼吸で息を吸ったときと同じ状態ですから、息を吸おうとしても、それ以上肋骨が上に動いてくれず息をうまく吸うことができなくなってしまいます。
 反対に、腹直筋が何らかの理由でこわばってしまいますと、つまり腹直筋に硬い場所ができてしまいますと、その部分が内臓を圧迫することになり内臓の働きに影響を与えるようになると考えられます。実際のところ腹直筋にこわばりができやすい場所は、みぞおちのところがとても多いです。つまり胃の部分が圧迫されている場合が多いのです。それによって胃がキリキリするとか、胃が重たく感じたり、つかえているように感じたりすることが多いようです。この場合は、胃薬を飲んでも効果が感じられないでしょう。その原因は腹直筋のこわばりにあるからです。

 腹直筋にこわばりができる要因は、何らかの理由で骨盤の前面(恥骨部)が下がっていたり、あるいは手の小指のライン(尺側)にこわばりがあり、筋肉が連動して腹直筋にこわばりができたりと、いくつか考えられますが、まず考える必要があるのは「お腹が冷えていないか」です。単純に、寒いと体を丸めたくなるのが自然な在り方ですが、それはつまり腹側の筋肉を縮めたいということです。それによって腹部(内臓)の熱が出ていくのを妨げたいという体の自然な反応です。つまりお腹が冷えると腹直筋が縮こまるのです。



Cお腹の冷えには、本当に注意が必要
 私たちの体温は体温計で測る部位では36〜36.5℃が良いわけですが、お腹の内部(深部体温)は37℃でなければいけません。そうでなければ内臓に存在する酵素がうまく働けなくなり、消化・吸収・栄養という生命維持にとって非常に大切な働きができなくなってしまうからです。
 私たちの体は生命活動を守るため、生命維持に重大に関係しない部分、それは手足だったりしますが、そこへの血流を止めてでも内臓の熱を守ろうとします。ですから冬になると手や足が冷え症に苦しむことになるのですが、それはそれで大切な仕組みであると理解して受け入れ、心配したり極端に嫌うべきではないと考えます。(余談ですが手足の冷えを解消したいならば、お腹が温まること、つまりお腹を温める、温かい食べ物を胃に入れる、運動をするなどをした方が効率的だと思います)
 胃腸の働きが悪いので薬を服用するということも大切なことかもしれませんが、それだけでなく、ゆっくりお風呂に入ってお腹を温めるとか、腹巻きをして寝るなどの方法も併用した方が効果的だと考えます。
 お腹が温まりますと筋肉や筋膜が伸びやかになるため、腹式呼吸がゆったり大きくなります。自ずと内臓の調子も良くなるのではないかと思います。  

ゆめとわでの対応
 整体の施術をする側からお客さんの体全体を見てまず最初に確認することは、体全体としての大きな歪みがどうなっているかということと、呼吸がどうなっているかということです。
 呼吸には外気と肺の空気をやり取りする外呼吸(いわゆる呼吸)と毛細血管の中を流れる酸素を細胞内に取り入れ細胞で生み出された炭酸ガスを静脈に戻す内呼吸(細胞呼吸)の二つがあります。外呼吸は胸やお腹が膨らんだり凹んだりする様子を目や耳(息の音)で確認することができますが、内呼吸を確認することは容易くありません。
 しかしながら呼吸を空気の出し入れ運動として捉えるのではなく息づかいとして捉えますと、全身に呼吸が行き渡っているかどうかという観点で確認することができます。整体施術で体の歪みが整いますと息を吸って吐くという「呼吸の波」が頭の先から足先まで一連の流れとして行われるようになります。そうなった時が理想であり、真に心身がリラックスした状態であると考えています。
 胃や腸の不調は、単に胃または腸にだけ問題があると考えるのではなく、体に歪みや捻れがあって胃や腸や内臓が順調に運動することができないと考えるのが整体的な観点です。
 実際のところ胃潰瘍など臓器に器質的な病変がある場合は別として、肋骨を整え、お腹(腹筋)を調整して腹式呼吸がうまくできる状態にしますと、多くの場合、胃の不調や不快感などは速やかに解消されていきます。胃薬や消化を助ける薬を飲んでも効果があまり感じられないという場合は、整体で体を整えることをおすすめします。

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