顔のゆがみ‥‥顔をつぶさないために

 加齢とともに“顔がゆがむ”、“顔がつぶれる”、と言いますと「ギョッ!」とするかもしれません。
 30歳を越えた頃から、あるいは40歳を越えた頃から、“若さ”の象徴とも言える皮膚や筋肉のハリ感や弾力性が少しずつ失われていくのは自然の流れであるかもしれません。そして50歳、60歳、70歳と、加齢とともに顔の感じが変わっていくのも仕方のないことかもしれません。しかし歳を重ねても、それほど年齢を感じさせない人もいます。どこが違うのでしょう。
 私たちは誰もがいろいろと癖をもっています。その癖は加齢とともに年数を重ねます。例えば20歳の時に習慣化してしまった癖は30歳の時には10年間のキャリア、50歳の時には30年間のキャリアとなります。30年間も同じ癖を続けているとその影響は確実に表に現れます。顔であれば、シワ、シミ、たるみ、くすみなどとして現れますが、顔の形が変わってしまうこともあります。
 今回はこのことについて考えてみたいと思います。

 顔のゆがみにつながる癖と疲労
  @片噛みの癖‥‥顔をゆがめるだけでなく、体もゆがめます
  A噛みしめの癖‥‥長い間の噛みしめ癖は想像以上に顔面の血行を悪くします
  B手指の疲労‥‥よく使う親指と人差し指の指先の疲労は顔をゆがめます
  C歩き方の癖と足首の疲労‥‥骨盤のゆがみを通じて顔にゆがみをもたらします

 右は私たちの頭と顔の骨格である頭蓋骨のイラストです。頭蓋骨はある程度の衝撃や打撃を受けても骨折しないように、いくつかの骨が組み合わさってできています。骨と骨の継ぎ目(縫合関節)で衝撃を分散するようになっています。大切な脳を守るために、あえて一つの大きな骨としなかった仕組みになっています。
 ところが、この関節があるがために、それぞれの骨と骨の間にズレが生じやすくなります。別の項目でもお話ししましたが、骨と骨の関係がズレて正位でなくなると、毛細血管や細い血管での血行が悪くなります。すると筋肉・筋膜・皮膚などの働きがにぶくなります。そういう状態が長引きますと、肌の老化現象といわれているシワ、シミ、たるみ、くすみなどのトラブルが定着し、ほうれい線が目立つような顔になります。

 頭蓋骨はいくつかの骨が組み合わさってできているのでズレが生じやすい。
 骨がズレると肌トラブルを招き、老化現象が進む。


 ここではこのことを覚えていただきたいと思います。
 そして、それぞれの人が持つ長年の癖が影響して頭蓋骨にズレが生じていることがとても多いのです。


@片噛みの癖‥顔をゆがめるだけでなく、体もゆがめます
 多くの人が片噛みの癖を持っています。
 “噛んでいる側がシャープになり、噛んでいない側がぼやける”という具合になります。右の写真の女性の顔は、全体的には均整がとれている方でしょう。しかし改めてよく比べますと、右半分と左半分ではあきらかに右側の方がほっそりとしていてシャープです。左側の方はなんとなく間延びした感じに見てとれます。触ることはできないので実際のところはわかりませんが、写真だけで判断しますと、左側ではあまり噛んでいない、右の片噛み癖を持っているのではないかと思います。

 さて、もう一つこの写真で見るべきポイントがあります。それは耳の高さも目の高さも左側の方が高いことです。右側の耳や目が下がっているのか、あるいは左側の耳・目が上がっているのか、写真からだけでは判断できませんが(触診すればわかります)、仮に左側が上がっていたとします。
 その原理は以下のようになります。
 耳のある骨は側頭骨と言いますが、それは胸鎖乳突筋という耳の後ろ側の突起から首を斜め前下に下がって鎖骨と頬骨につながっています。そしてこの胸鎖乳突筋は咬筋という頬と下顎を結ぶ噛む筋肉と連動しています。

 このモデルが右側で噛む癖をもっているため、左側の咬筋があまり使われていないとします。すると左の咬筋はゆるみます。すると筋肉の連動関係から、左の胸鎖乳突筋もゆるんでしまうことになります。胸鎖乳突筋がゆるんでしまうと耳のある側頭骨を下に引きつける力が弱まるということになりますので、左側の耳が高くなってしまうのです。そしてこの側頭骨のズレに合わせるように、目を囲む前頭骨や頬骨もずれますので左側の目が高くなり、水色で示した眉のラインが斜めになってしまうのです。こういうときには、眼鏡やサングラスをかけても水平にはなりません。
 この場合の体への影響を考えますと、左側の胸鎖乳突筋がゆるむことによって、左側の鎖骨が下がり、胸骨も不安定になります。そしてそれは胸郭(肋骨)の左側を下げることにつながります。すると首の運動にも影響を与え、首を回すとゴリゴリしたり、あるいはどちらかを向くと首筋にツッパリ感や痛みを感じるかもしれません。



A噛みしめの癖‥長年の噛みしめ癖は顔の血行を悪くし、顎が開きにくくなる
 噛みしめの癖は頬を下げます。私たちは無意識のうちに行っている様々な癖を持っていますが、その中でも、噛みしめの癖と歯ぎしりの癖は、美容と健康のために改善しなければならない癖です。
 私個人を例にあげれば、例えば強い肩こりをもったお客さんの揉みほぐしを行っていると、時間とともに疲労し、だんだん手の力が弱まっていきます。すると知らず知らずのうちに歯を食いしばって手に力を伝えるようになってしまいます。なぜなら、噛む筋肉は全身の筋肉の司令塔のような役割を持っていて、“歯を食いしばる”ことによって力を出そうとするのが自然の流れだからです。
 このような力仕事にかかわらず、例えば集中して考え事をするとき、つい噛みしめてしまっている人もいることでしょう。脳を回転させるスイッチのような役割を噛む筋肉にさせているということです。強い歯ぎしりの癖を持っている人もいます。「朝起きると顎が痛くなるほど‥‥」という方もいらっしゃいました。
 右上の図のように、頬のすぐ下の深いところがパツンパツンに硬くなっている人は多くいます。筋肉がこわばっているわけですが、そうなると頬を引き下げてしまいます。そしてそれによって頬周辺の血流が悪くなります。前述したように、頬の周りにくすみやシミが多い人は、この“噛みしめ癖”によって頬が下がっているかもしれません。私たちの何気ない癖は意識して修正しようとしない限り、何十年にもわたって続くことになります。何十年も血流の悪い状態が続けば、シミやくすみをはじめ、さまざまな皮膚トラブルが発生してもおかしくないと連想することができるでしょう。

 また、この筋肉の状態は口を開くときに大きく影響します。噛みしめる癖によってこわばっていると、口を大きく開くことができません。ひどいときには痛くて口を開けることができなくなることもあります。
 さらにこの筋肉のこわばりは頭痛や偏頭痛に直結します。筋肉をゆるめるだけで頭痛が治まることが多いのです。
 噛みしめの癖や歯ぎしりの癖は影響が大きいので、どうにかして癖を直すようにしたいものです。

どうして寝ている間に歯ぎしりをしたり、噛みしめたりしてしまうのか?
 という原因につきましては、人それぞれいろいろとありますが、一つの考え方を申し上げれば、夜中に働かなければならない生理機能がどこかの不調でうまく働けないため、噛みしめることによって力をその部分に伝え、その生理機能を果たそうとしている、ということになります。それは、眠って休まるという働きかもしれません(深く眠るのも体力がいる、などと言ったりしますが)し、夜中に行う内臓の働きである消化吸収の仕事かもしれません。(自律神経の失調かもしれません。)
 ある人の例です。その人は10年以上にわたって、あるアクセサリーを肌身離さずつけていました。その人は毎朝起きると顎が痛くて、口が開かないとやってこられました。
 手指の中で薬指はとても大切な指で、体の芯の強さに関わっていると私は考えていますが、その人は左手の薬指に全然力が入りません。薬指を思うように動かすことができない状態です。(こうなると私は左半身の芯を支える深い筋肉に力が入らないと考えます。)
 どうもそのアクセサリーが怪しいと思い、それを外してもらいました。すると、先ほどまで全然力が入らなかった薬指に力が入るようになりました。そして、噛みしめの筋肉からこわばりを取り除き、その他を調整して顔の骨格を整えました。その後一週間後に来店していただきましたが、その間の様子を尋ねると「朝起きても、以前とは違って顎も頬も痛くなかった。口も開く。」ということでした。
 原因を推察するに、その方が長年愛用していたアクセサリーは「力」という面ではその人の力を弱めてしまうものでしたので、昼間は何かの動作でその弱さを補っていたと思うのですが、夜寝ている間は噛みしめることによって補っていたのでしょう。アクセサリーを外すことで力が奪われる要因を除去したため、その後は噛みしめの力を必要としなくなったのだと思います。
 詳細はまたいつか記したいと思いますが、私たち人間は哺乳動物であり脊椎動物です。生物学的にその遠い祖先をたどっていくと、いかに噛む筋肉が全身にとって大切かがわかります。噛むこと、すなわち咬筋や側頭筋といった“そしゃく筋”をしっかりさせることによって、全身の筋肉をしっかりさせるというシステムになっています。
 ですから、そしゃく筋にまつわる顔のトラブルはとても重要な問題です。

B手指の疲労‥‥母指と人差し指の指先の疲労は顔をゆがめる
 胸鎖乳突筋の状態が側頭骨の動揺に影響を与えることは@で申し上げました。そして胸鎖乳突筋は鎖骨と胸骨に付着しているのですが、ここでは鎖骨について考えてみたいと思います。
 左のイラストは鎖骨に関係する筋肉を表したものです。大胸筋、三角筋、僧帽筋の3つの筋肉が鎖骨に付着していますので、これらの筋肉の状態によって鎖骨の位置が決まってくると考えることができます。そして鎖骨の位置は胸鎖乳突筋を経由して側頭骨の位置に影響を与えると考えることができます。
 つまり鎖骨のズレが側頭骨にズレをもたらし、それは頭蓋骨全体のゆがみにつながるという理屈です。

 私たちは日々たくさん手を使っていますが、その中でも親指と人差し指を器用にとてもたくさん使っています。箸をもつ、ペンをもつ、何かをつまむ‥‥、それら動作の主体は親指と人差し指です。また、パソコンでマウスを使う時には人差し指の指先を内側に捻るように使います。携帯電話でメールを打ったりするときには親指をとても素速く動かします。これら一つ一つの動作には力がいりませんから、そんなことで指先が疲れたりすることはないだろうと思うかもしれません。しかし、実際みなさんの指先をみますと、ほとんどの人が指先の一つ目の関節に捻れを持っています。
 親指と人差し指の指先の捻れは連動して三角筋や僧帽筋に影響をもたらしますので、鎖骨にズレをもたらす原因になります。こういう原理で側頭骨がズレ、顔にゆがみをもたらすのですが、こういうケースは頻繁です。


C歩き方の癖と足首の疲労‥‥骨盤のゆがみを通じて顔にゆがみをもたらす
 頭蓋骨の中で頭の後ろにある“後頭骨”もまた重要な骨です。重要だという意味は、顔のゆがみに関係するだけでなく、体の中心である背骨(脊柱)や仙骨と直接影響し合う関係にあるからです。後頭骨が動揺しますと仙骨が動揺します。また反対に仙骨が動揺しますと後頭骨も動揺することになります。ここでは、この点について考えてみたいと思います。
 臨床的な面で結論的に申し上げますと、仙骨は足の内側の筋肉の状態に影響されるようです。太ももの裏側にあるハムストリングスと呼ばれる筋肉群のひとつ、半膜様筋に変調があると仙骨は動揺します。そして半膜様筋はヒラメ筋の内側部の影響を受けますので、仙骨を安定させるためにはヒラメ筋が重要になってきます。解剖学の書物などではヒラメ筋はアキレス腱となってカカトで終わることになっていますが、機能的な面でみますと、カカト内側の筋膜までつながっています。そしてヒラメ筋の内側部は母趾の筋肉とも関係があります。
 カカトがグラグラして不安定な人はとても多くいます。そういう人たちのヒラメ筋は変調しています。その変調は仙骨の動揺につながり、それは後頭骨の動揺につながり、顔にゆがみが生じる、となります。

 ヒラメ筋が変調し足首(=カカト)が不安定になるには、いくつか原因が考えられます。足元が冷えて筋肉の働きが鈍くなるというのも一つです。筋肉の働きは冷えに弱いのです。疲労も考えられます。たとえば草取りなどでしゃがみ込む姿勢を続けるとアキレス腱が伸ばされ放しになります。するとヒラメ筋は疲労します。捻挫をして最後までちゃんと治さなかったとか、足をくじきやすい、というのもとても関係します。
 また、ヒラメ筋は母趾の筋肉とも連動しますので、母趾をうまく使えていないような歩き方をしている人は、筋力的にヒラメ筋が弱いと考えられます。こういう人は、ちょっとしたことでヒラメ筋が変調してしまうのです。

 整体的な観点で見ますと、歩き方の悪い人がとてもたくさんいます。地球の重力に打ち克つように伸びやかに歩いている人はあまり見かけません。重力に負けてつぶされつつあるような歩き方の人がたくさんです。
 歩き方が顔のゆがみにつながるということを連想するのは難しいかもしれません。しかし実際にはそうなのです。
 母趾にかぎらず足の指全部を使って大地をつかみ、踏みしめるように歩いていただきたいと思います。全身はひとつながりです。足の指の筋肉がしっかりすると、足〜下半身〜背中〜首〜頭というつながりがしっかりします。
 歩くときには足の指を意識し、重力に打ち克つように伸びやかに歩いてください。母趾の腹で大地を確かに蹴っていると実感できる歩き方を続けていると、次第にヒラメ筋はしっかりしていきますので骨盤がしっかりし、背中が伸びかになり、立ち姿が立派に見え、顔も活き活きとするようになると思います。

○顔の骨格にズレ(動揺)があるかどうかを見分ける簡単な方法
@側頭骨の動揺
 耳の穴に綿棒を入れてみてください。例えば左側はすんなり奥まで入るけど、右側は途中がうねっているようで、スッと一気に奥まで入ってくれない。耳掃除などをしているとどちらかが掃除しにくいと感じたりすることはあると思います。そんな時、(この例では)右側の耳穴のところの骨(側頭骨:上のイラストを参照)に左手の指を強めにあてて、骨自体を上下左右と少し動かしてみてください。どちらかの方向に動かしたとき綿棒がスッと奥まで入るような感じになったのなら、それは側頭骨がずれているということの証です。

A頬骨の動揺
 頬骨は加齢とともに内側に寄って下に動揺しやすい骨です。眼の下のところの出っ張った骨が頬骨ですが、その内側に手をあて、外側に広げたり、上に持ち上げたりしてみてください。そうすることで鼻の通りが良くなったり、目の見え方が良くなったりするのであれば、それは頬骨が動揺しているということです。

B鼻骨の動揺
 鼻骨も頬骨同様、下に動揺しやすい骨です。両目の下まぶたの間にある硬い骨が鼻骨です。それを両手の指を使って上に持ち上げるようにしてみてください。それで鼻の通りが良くなる感じがするのであれば、それは鼻骨が下に動揺しているということです。季節的なものとしては、花粉症の時期、鼻炎に悩まされている人の多くは鼻が下がっています。おそらく眼鏡をかけても下にある感じがするのではないでしょうか。

C顎関節の不調
 顎関節症など口の開閉に問題や違和感を感じているなら、それだけで下顎か側頭骨に動揺があるということです。 

ゆめとわでの対応
 顔にゆがみをもたらす要因として上にあげました@片噛み癖、A噛みしめ癖、B親指と人差し指の疲労、C足首の動揺の四つは専門家ではない一般の人でも確認でき、気をつけることができることとして記しました。
 しかし実際には、もっともっといろいろな要因が折り重なって、現在の顔形や皮膚の状態、むくみ具合などになっています。そして一般的には「骨のズレ」という言葉の方がイメージしやすいと思いますので、そう表現していますが、実際には「動き」を伴う「骨の動揺」という言葉の方が適しています。頭蓋骨にかぎらず背骨にしても骨盤にしても、レントゲンやMRIの画像で確認しても「異常は見当たらない」と言われたが症状がある、ということがとてもたくさんあります。レントゲンやMRIでは「骨の動揺」を見つけることはできないのです。それは触診する以外には確認する方法は無いのではないかと思っています。
 頭蓋骨を形成している骨の一つ一つの動揺を確認しながら、それぞれに動揺をもたらす原因を特定し、それに施術を行い、最終的に頭蓋骨が正位になるように施術することがここでの役割です。そうすることで、顔にある筋肉や筋膜、皮膚の働きが本来のものに戻ってきます。40分から60分の施術になりますが、外見面では大方色白になり、小顔になります。くすみとむくみが改善するからです。頬のたるみも良くなります。ほうれい線も薄くなります。機能面では、目の見え方がハッキリする、鼻からの空気の取り入れが良くなる、と言われます。
 頭痛・偏頭痛・耳鳴り・めまいなどにも対応します。
 それらはすべて骨格を整え、筋・筋膜の状態を整えるというアプローチで対応するということです。

 しかしながら、ご本人の努力を要するものもあります。
 片噛みの癖や噛まない癖、目の使い方の癖、それらは指摘しますのが、日々の習慣での矯正が大切です。
 噛みしめ癖や歯ぎしりの癖につきましては、多くの場合、無意識になされるものでしょうから、「どうしてその癖を持つのか?」といったところまで考えていきます。その原因を追及し、根本原因を改善することを考えます。
 そこまでいくのが、ゆめとわでの対応の特徴です。

ゆめとわホームページへ