頭痛② こめかみと側頭部の痛み

 こめかみ(目尻と耳の間)や側頭部(耳の上)の頭痛や片頭痛の原因として最も多いのは噛む筋肉(そしゃく筋)のこわばりによるものです。そしゃく筋には咬筋・側頭筋・内側翼突筋・外側翼突筋の四つがありますが、体表で観察できるものは咬筋と側頭筋です。咬筋は下顎の下端の角(エラと多くの人が呼ぶところ)と耳から頬にかけてある骨(頬骨弓)との間を結び、側頭筋は下顎の上端とこめかみの上部にあたる側頭窩を結んでいて下顎を上方に引き上げ、口を閉じたり、そしゃくを行う働きをしています。

 歯ぎしりや噛みしめの癖を持っている人は恒常的にそしゃく筋がこわばっています。筋肉は強くこわばりますと痛みを発しますので、歯ぎしりや噛みしめの癖を持っている人は、いつ側頭部の頭痛になってもおかしくない状態にある言えます。
 また多くの人が誤解しているのですが“噛みしめ癖”というのは、グッと力を入れて噛みしめる癖のことだけではありません。普通の人はリラックスしたとき、口は閉じていても上の歯と下の歯は離れた状態にあります。それがそしゃく筋が作動してない状態です。ところが口を閉じたときには歯も閉じるのが当たり前だと誤解している人がいます。とても軽い力だったとしても、上の歯と下の歯があっている状態はそしゃく筋が作動している状態ですので、その状態でずっといますと筋肉はこわばってしまし頭痛や頭重を起こしやすい状態になってしまいます。
 歯ぎしりの癖を持っている人も同様です。またこれらの癖を持っていなくても、一時的に重たいものを運ぶなど力を目一杯使ったために歯を食いしばり、筋肉がこわばって頭痛を起こしてしまう場合もあります。一時的なこわばりであれば頭痛薬で痛みを和らげ、食事や会話をしているうちに筋肉のこわばりがゆるんできて普通に戻ることが考えられます。
 但し、スルメやおかきなど硬いものをたくさん食べたりしますと筋肉は強くこわばることが考えられますので、好きでもほどほどにしておくのがよいかと思います。

 こわばってしまったそしゃく筋を弛めるための一番簡単な方法は口を大きく開けて筋肉を引き伸ばすようストレッチすることです。咬筋や側頭筋を指圧してみて硬さや痛みを感じるようでしたら、あくびをするように口を大きく開けて筋肉を引き伸ばしてみてください。それだけで側頭部の頭痛は軽減するかもしれません。
 ところが筋肉のこわばりが非常に強くしぶとい場合は、それだけでは無理ですので強制的に筋肉を弛める方法を用いなければなりません。

 上記以外の理由で側頭部に頭痛や片頭痛を起こしてしまう理由としては、肩甲骨や肋骨の位置が歪んでいることや血行が悪いことが考えられます。あるいは目の使いすぎによる影響かもしれません。
 肩甲骨や肋骨が歪みますと、首から肩甲骨に繋がっている肩甲挙筋(けんこうきょきん)や首から肋骨に繋がっている斜角筋(しゃかくきん)、あるいは周辺の筋膜が緊張状態になります。それによって側頭部や頬の筋膜が引っ張られた状況になり頭痛を招いてしまう場合もあります。

偏頭痛

 血管がズキンズキンと疼いてしまうような偏頭痛の場合は、何よりも血流を良くすることを考える必要があります。
 ズキンズキンと疼く血管は動脈になりますが、頭部表面の組織や細胞に酸素と栄養を届けるために動脈は一生懸命血液を前に運ぼうとします。ところが何かの理由で前が詰まってしまい、なかなか血液を進めることができないような状況になったときには、血流量を増やしてでもなんとか血液を前進させようとします。この状況は血管の搏動が強くなった状況であり、血圧も高くなります。このような仕組みで偏頭痛が起きるのではないかと思います。
 そして動脈の流れを詰まらせてしまう原因には、まず二つが考えられます。
 一つは筋肉が硬くなってしまったために、その中にあります細い動脈や毛細血管が圧迫されてしまい流れが悪くなってしまった状況です。偏頭痛で苦しんでいるときに、耳周辺や側頭部の硬くなっている筋肉を痛みをこらえながらも強めに揉みほぐしていますとそのうちに偏頭痛が治まることがありますが、このような場合はこのケースがあてはまると思います。

 二つ目は静脈の流れが悪くなってしまい血液がなかなか出て行ってくれないために前が詰まってしまった状況です。高速道路における渋滞と似ていますが、前が詰まって進めないのに後から後から動脈血が押し寄せてきてズキンズキンとなってしまうとイメージしていただくのがよいかと思います。このような場合は何よりも静脈を流れを整えなければなりません。そして静脈の流れを整えるために先ず行うことは鎖骨と第1肋骨の歪みを解消して鎖骨下静脈の流れが良くなるようにすることです。

 以上の二つ、側頭筋や咬筋のこわばり状態を改善して、鎖骨下静脈の流れを整えることでほとんどの偏頭痛は良くなると思います。それでもダメな場合は、自律神経について考えることが必要になりますし、精神面でのことを考える必要があるかもしれません。