棘上筋のこわばりと硬結

 棘上筋(きょくじょうきん)につきましてはこれまで幾度となく取り上げてきましたが、私にとっての新たな発見がありましたので、今回お知らせしたく投稿させていただきました。

 棘上筋は肩甲骨にあるインナーマッスルですが、その位置している場所は棘上窩と呼ばれる「肩甲骨真上の凹み」です。そして私は、どういうわけか以前から”その場所”が個人的に気になっています。そして頑固な肩こりは棘上筋の硬結が芯になっていますので、この硬結を解決しないかぎり本当の意味で肩こりから解放されることは難しいのではないかと思ったりします。
 私たちは人生の中でいろいろなものを背負って生きていますが、その場所が棘上窩であり、棘上筋なのではないか? などと思っています。お父さんが小さいお子さんを肩車したときに、お子さんのお尻が乗っかる場所が棘上窩であり棘上筋ですが、つまり、棘上筋の硬結が頑固な肩こりの「芯」であるということは、私たちが人生の重荷を下ろすまで肩はこり続けてしまうことを暗示しているのかもしれません。

 また、肩甲骨は「天使の羽」として喩えられることもありますが、私たちに天上界や別次元の世界を連想させる象徴の一つでもあるようです。
 ですから天使の羽を軽やかな状態にして軽やかに生きていくためには肩甲骨の重たさを取り除くためにも棘上筋のこばばりや硬結を解消したいものです。

 (http://b-gata-diary.com/archives/1455より引用)

頭部の損傷は棘上筋のこわばりにつながる

 以前の投稿で、スノーボードで後頭部を強打し、その影響で中殿筋の働きが悪くなってしまった長距離走アスリートの話をさせていただきました。(後頭部の打撲による影響‥‥スノーボードなど)
 そして今回は頭部の強打やムチウチの影響が棘上筋のこわばりにつながるという内容です。
 O脚についての説明で股関節にある小殿筋(しょうでんきん)と棘上筋は連動関係にあるという話をさせていただきました。

 棘上筋がこわばりますと小殿筋も連動してこわばりますが、その影響で股関節が拡がってしまいO脚が始まってしまう‥‥というような内容です。(O脚修正でのポイント①‥‥小殿筋)

 今、20歳前の女子がO脚を直すために隔週のペースで来店されています。「以前にシンクロナイズドスイミングを習っていたのだけれど、脚の形が今一つ決まらなくて‥‥」というお母様のお話でしたが、それはO脚によるものだったと考えられます。
 O脚の場合、施術に際して一番最初に確認するところは小殿筋の状態ですから、当然、連動する棘上筋をチェックすることになります。そして予想通り、この女子の小殿筋も棘上筋もこわばっていました。
 「こんなに若いのに肩こり、気の毒だね~」などと内心で思いながら、棘上筋のこわばりを解消すべく施術を行っていましたが、どうもスッキリ解消できません。そこで「子供の頃、何かケガなどしませんでしたか?」とお母様に尋ねてみました。すると「シンクロナイズドスイミングの練習し始めの頃にプールの底に頭部を強打したことがある」と仰いました。
 それで頭頂部を探ってみました。すると頭頂部の少し右側に頭皮(筋膜)のゆるんで凹んだところがありました。そこで、その部分に手指をあてて(力を)補ってみますと棘上筋のこわばりがゆるんでいくのが感じられました。
 次に立っていただき、同じように頭頂部に私の手をあてますとO脚で小趾側重心だった状況が変化しました。重心が内側に移動し、両膝が少し寄るようになりました。
 ダメージを受けた頭頂部を手当てすることで棘上筋と小殿筋のこわばりがゆるんできてO脚状態も少し良くなることがハッキリしたわけです。
 O脚の場合、小殿筋のこわばりだけが原因ではありませんので、他にもいろいろ施術しなければなりません。しかし小殿筋は一番最初の要ですから、こわばりの原因がハッキリして対処法も確定しましたので、それは大きな一歩となりました。

ムチウチの後遺症‥‥棘上筋のこわばり

 上記のように、頭頂部の損傷が小殿筋のこわばりを招くことに加えてムチウチによる損傷の影響で棘上筋がこわばってしまう場合もあります。
 ムチウチの後遺症にはいろいろなものがありますが、経験された人達の話をうかがいますと「事故の後、半年間くらいは自動車保険が補助してくれるので整形外科で治療やリハビリ(牽引など)を受けることができ、なんとなく気にならない程度に回復するんだけれど、しばらく経って保険も適応されなくなった後から首や肩が重苦しく感じられたりするようになる」という内容の話が多いようです。
 ムチウチの直後は損傷してしまった後頭部から首にかけての症状が一番気になりますが、やがてその症状が一段落しますと肩上部や肩甲骨周辺に残ったままになっている症状がクローズアップされるようになるからかもしれません。

 ところで、普通「肩が凝って! 凝って!」と思わず手を当ててしまうのは肩上部が多いと思いますが、そこは棘上筋の場所ではありません。棘上筋は肩上部の少し後側(背中側)を上から強く指圧して、深く入ったところで強い張りと硬さを感じる部分です。私は、棘上筋のこわばりを「肩こりの芯」であると受け止めていますが、この硬さやこわばりは揉んだり指圧したりして解決する類のものではありません。その場では痛み(イタキモ)や気持ち良さを感じるかもしれませんが、その場限りです。次の朝には肩こり状態が元に戻っていると思います。

 「どうしてこの人はこの部分がこんなにこわばっているのだろう?」と思いながら施術していることが多いのですが、棘上筋のこわばりも“からだの秘密”、謎めいているものの一つだと感じています。

 棘上筋は肩関節のインナーマッスルとして肩関節を安定させる重要な役割を担っています。棘上筋が疲弊した状態になりますと腕が肩関節から落ちたような状態になります。四十肩や五十肩のきっかけになる状況ですが、状態が悪化しますと肩腱板断裂と診断されるかもしれません。
 そして棘上筋がこわばる理由として考えやすい要因は二つあります。一つは筋連動によるこわばりですが、再三登場します小殿筋や他の連動筋がこわばってしまったがために棘上筋もこわばってしまうというものです。もう一つは、肩関節で肩甲骨と上腕骨(じょうわんこつ=二の腕の骨)の関係がおかしくなってしまったために(=肩関節の歪み)棘上筋が緊張状態になってこわばってしまうというものです。
 しかし、これら二つの要因を解消しても棘上筋のこわばりが解消されないことがあります。そのことを私は謎めいているともうしましたが、その中の一つに頭部の損傷やムチウチによる影響があります。

頭頂部のゆるんだ状態と棘上筋と全身の緊張

 子供の頃、机の下に潜って遊んだりしている時に頭を“ゴツーン!”と強打したような経験は多くの人にあると思いますが、そのようなことで頭皮(頭部の筋膜)がダメージを受けますと、その影響で棘上筋がこわばってしまうことがあります。そして、その状態が何十年も続いて、今尚からだに影響を及ぼしている人もいます。
 そして、このような頭頂部の損傷は棘上筋のこわばりだけでなく顔に力が入ってしまう原因にもなるようです。
 現在は稀になっていると思いますが、子供達が言うことを聞かないからといって頭にゲンコツでゴツンなどとやりますと、それは将来にわたって顔・首・肩から力が抜けない原因になってしまうかもしれません。

 集中すると顔の中心部や眉間に力が入って目や頬が内側に引き寄せられる状態になる人がいます。最近の投稿で「前頭部で考えること」について記しましたが、自ずと前頭部で考えることが苦手な人が前頭葉で考えようとしますと、額の中央や眉間に力が入ることになります。頑張って考えようとしますので力が入ってしまうのだと思います。私の主観的な感じ方になりますが、そのような人は額が尖っているように感じます。そして、そういう人を施術するときには「何処を手当てすれば額が平たく開いたようになるだろうか?」と思い、意識を集中して施術箇所を探します。
 額が尖っていようが眉間に力が入っていようが、そんなことは「大したことではない」と受け取られてしまうかもしれません。しかし、眉間や顔の中心部に力が入ってしまうことや、首や肩についつい力が入ってしまうことは、からだに緊張状態をもたらすことですから、セラピストとして無視したり、ないがしろにするわけにはいきません。その人が楽に、リラックスして日々の暮らすためには、緊張状態を解消して自律神経の働きを整える必要があるからです。

 以上をまとめますと以下のように言えます。
 頭頂部や後頭部が損傷状態でゆるんでいる人は眉間や額の中央部に力が入りやすく、そして棘上筋もこわばった状態になってしまうようです。そして、それは全身の緊張に繋がりますので自律神経を乱す原因になる可能性があります。自律神経は内臓の働きや生理機能をコントロールしていますので、不定愁訴など「よくわからないけど不調」だとか「快眠・快便・快食」の状態が遠ざかってしまいますので、毎日を生きることが辛く感じられるようになってしまう可能性があります。
 ですから、頭頂部や後頭部の損傷は「痛みや腫れが引いたから良くなった」で終わらせずに、適切に対処していただきたいと思います。(適切な対処とは、例えば問題意識をしっかり持っている医師やセラピストに相談されることなどです)

棘上筋は重要なポイント筋肉の一つ

 私たちの肉体には400以上の骨格筋があります。舌や腹直筋など一部を除きますと左右に同数ありますので、200対以上の骨格筋が存在しているわけです。これだけたくさんあります筋肉の中で、整体の施術として注目すべき重要な筋肉というものがありますが、私にとって棘上筋はその一つです。
 顔面・頭部のそしゃく筋、舌に関係する筋肉、上部頚椎に関係する筋肉、そして棘上筋、肩から上部ではこれらの筋肉の状態がその人の健康状態を左右する要になると考えています。
 そして、これらのどの筋肉も単純でありながら、整えるのに手間のかかる筋肉です。
 冒頭に、棘上筋は「何かを背負っている」と表現しましたが、この筋肉がすっかり変調(こわばりなど)や硬結から解放された状態にするためには「あと何をすれば良いのだろう?」と思い続けています。
 おそらくストレスをはじめ、心理的な要因も絡んでいると思いますので、私の施術だけでは完璧な状態にはならないかもしれません。しかし、皆さんがこの重荷感からすっかり解放されて、天使の羽を持っているかのように軽やかになられるようお手伝いさせていただければと思っています。