頭痛③ 頭が詰まっている 閉じている

 頭痛で一番多いのは“緊張型頭痛”と呼ばれる、頭皮や筋膜が縮んで頭蓋骨を外側から締めつけるタイプのものですが、これとは反対に頭蓋骨の内部圧力が高まって頭が重くなり、ボーッとして脳の回転がうまく機能しないように感じる頭痛や頭重もあります。計算もスムーズにできないし、理路整然と話すこともできなくなり、“自分の頭はおかしくなった”と感じたりすることもあるようです。
 こういう訴えを持っている人の頭を触りますと、中身がぎっしり詰まって身動きできないような感じで、“血液が流れていないのではないか”と感じてしまいます。理屈はともかくとして「頭がパンパンに詰まっていますね」と指摘しますと、ご本人も実感として理解できるようです。

 さて、こういう場合の特徴は3つほどあります。目が凝っていてこめかみがパンパンに張っていることが一つ。鎖骨と肋骨の関係がおかしく、鎖骨下静脈の流れが悪くなっていることが一つ。もう一つは頭が開放的でなく、閉じているように感じることです。その他には噛みしめによってそしゃく筋が強くこわばっていることも少なからず関係があります。
 目が強くこってこめかみがパンパンに張ってしまうと、どうして頭の中が詰まったようになるのかの理由はよく解りませんが、こめかみの張りをじっくり取っていきますと、やがて私の手に血液が流れ出す感触が伝わるようになります。ですから、現象として、目のこりは頭の詰まりに関係していると考えています。

 鎖骨下静脈の流れについてはこれまで幾度か取り上げています。全身の血流を考えるとき、私が真っ先に確認するところは鎖骨下静脈と股関節の鼡径部です。この2箇所は静脈血が心臓に還る最後の関所のようなところで、他が良くてもこの部分の流れが悪いと全身的に影響が及びます。

 また動脈と静脈の関係で申しますと、心臓の働きも快適で、血管の状態も万全で、動脈の流れを阻害する要因が全くなかったとしても、静脈の流れが悪いと動脈の流れも停滞してしまいます。何故なら毛細血管を介して動脈と静脈は最終的につながっているからです。それは車の交通渋滞に似ています。静脈が停滞していて進まないところに、後から後からどんどん動脈血がやってきても停滞が激しくなるばかりです。
 そしてこの状況は動脈血で血管が膨れあがった状態を招くようになりますが、それが頭蓋骨内部や脳の内部を圧迫するので、頭痛や頭重、そして脳の働きを低下させる原因になると考えることもできます。

 3つ目の“頭が閉じている”ことに関しましては、おそらく現代医学では認められないことだと思いますが、実際に頭を触りますと「この人の頭は閉まっている」と感じてしまうことがあります。そして、そんな時は眉間の少し上、額の中央を軽く開くように手をあてます。そこは前頭骨という一つの骨ですから、関節ではないので物理的には開きようがありません。しかし私は、骨のそこが閉じているように感じるので、骨を開くように手をあてていますと頭の内部が動き始めるのを感じるようになります。そしてしばらくの間同じようにしていますと、次第にリラックスしだし眠りに落ちてしまう人がたくさんいます。この部分は血流との関係性というより、思考(イメージを思い浮かべる前頭葉の部分なので)との関係性が考えられます。思考の流れが悪くなったことで、血液の流れも悪くなったと考えることができるのかもしれません。

 だいたい以上の3つのうちのどれかを行えば、頭の中身が詰まってパンパンになった頭痛や頭重は解消されます。悩みやストレスを溜め込んでいる人は、おそらく頭の中が詰まっていると思います。いつも頭がスッキリしないのは、体調が悪いのではなく、単に頭の中にたくさん溜め込んでいるだけかもしれません。
 血液を溜め込んでいるのか、“思い”や感情や思考を溜め込んでいるのか。解剖学者の故三木成夫先生は、溜まりの場所が病気になりやすいと言っています。体を健康に保つには溜めずにどんどん流すことが肝心だということです。過呼吸は肺に空気が溜まってしまいます。食べ過ぎや消化不良は胃にいつまでも食べ物が溜まった状況をつくり、便秘は大腸に便が溜まった状況をつくります。肝臓も血液が溜まりやすい器官ですが、これらの器官はガンになりやすい臓器でもあります。同じように心(胸)と頭には感情や思考が溜まります。心は心臓に通じると言いますので、心配や不安が心臓に悪い影響を与えると考えることもできますし、ストレスや悩みが多いと脳の病気を招くかもしれません。これらの因果関係は科学的に正しいことかどうかはわかりませんが、直感的になんとなく頷けるところではないでしょうか。いずれにせよ、“溜めずにどんどん流し去る”ことが心とからだを快適に保つための基本であると私は思っています。

脳の水分‥‥血液と髄液の循環

 脳には全身血液の15%程が循環していると言われています。これは安静時の数字ですので、考え事をしたりして頭を働かせている状態ではもっと多くの血液が循環していると思われます。また脳と脊髄には、血液とは別にそれ自身を養う大切な髄液がゆっくりと循環しています。(髄液の役割はよく解っていない部分も多いようです。)
 脳細胞の活動を行うためには酸素が必要ですが、それは心臓のポンプ力(血圧)によって動脈血が脳の隅々まで行き渡ることによって可能になります。心臓から頭部に行く動脈は頚動脈(外頚動脈と内頚動脈)と頚椎に沿って昇る椎骨動脈の二つの経路があります。そして脳内で役目を終えた血液と髄液は、いくつかの静脈洞と呼ばれる池のような溜まりに集められ、そこから内頸静脈という大きな静脈に入り、胸郭の入り口で鎖骨下静脈と合流して(腕頭静脈)心臓に戻ります。

 脳に血液や水分(髄液)が溜まった状態になってパンパンになるといった場合、上記の循環が上手くいっていないことがまず考えられます。脳梗塞など、動脈の詰まりを除いて考えますと、静脈洞→内頸静脈→鎖骨下静脈→心臓という脳内水分の出口経路のどこかに流れが悪い部分があるため、頭痛や頭重を感じてしまうのではないかと考えて対処するのが理屈に叶っていると思います。CTやMRI画像を撮影して「脳には異常がありません。きれいな脳です。」と言われたところで、それが医療の答えで頭痛薬が処方されるだけなら、なんとも中途半端と言わざるを得ません。

 この経路の中で、静脈洞も内頸静脈も心臓も、整体の施術では直接的には何もすることはできません。ところが鎖骨下静脈だけは対処の方法があります。鎖骨下静脈は前斜角筋の前、鎖骨と第1肋骨の間というとても狭い場所を通っています。ちょっと鎖骨がずれただけで、あるいは肋骨が捻れただけで流れが悪くなってしまいます。解剖図を見る限り、内頸静脈と鎖骨静脈が合流する場所は肋骨の内側、つまり鎖骨下静脈が狭い場所を通過した後ですから、私は当初、内頸静脈の流れと鎖骨下静脈の流れは関係ないと思っていました。しかし実際に施術を行って鎖骨と第1肋骨の関係を改善しますと頭部の血液の流れが良くなりますので、今は関係が深いと考えています。

頭が閉じている

「頭の形は刻々と変化しています」と表現しますと、現在の科学的見解では“ほら吹き”と言われてしまいそうです。頭が詰まった状態、眉間に縦皺がよりやすい状態、これらを確認する時、私は額のところをまず触ります。そこは骨で言えば前頭骨です。上顎骨と頬骨は左右に分かれていますので、狭くなったり広くなったりすると言ってもそれほど不思議ではないかもしれません。ところが前頭骨は一つの骨ですから、骨自体が“閉じたり狭くなったりするはずはない”と言われても仕方がありません。私も理屈ではそう思います。
 しかし実際の施術では理屈よりも現象を優先して判断し、施術を進めていかなければなりません。そしてその上での見解として、「前頭部は閉じたり開いたりしている」と申し上げている次第です。

 ところで、眉間に縦皺が寄りやすい人はかなり多くいます。中にはくっきりと深い縦皺が刻まれている人もいます。そのような人は、すぐに顔の中心部に力を入れてしまう人、しかめっ面が得意な部類の人です。このような人は頭(前頭部)が閉じている傾向にあります。
 以前は、このように眉間に力を入れて縦皺をつくってしまうのは「その人の癖」なのかな? と思っていました。ところがこの頃は、「眉間に力を入れないと前頭部で思考を展開することができない」状態なのかもしれないと思い始めています。
 もしそうであるならば、眉間に力を入れなくても前頭部(前頭葉)で考え事ができるように、思考を展開することができるように整えることができれば、眉間の縦皺は消えていくかもしれないと考えています。そして、それは十分に可能だと思っています。

 頭内部の内圧が高まった頭痛には動脈から出血する脳出血も当然考えられますので、緊急時を除いても幾日か症状が続くようであれば病院等で検査を受けるのがよろしいかと思います。その結果、異常が見つからない場合は、今回取り上げたことも考慮に入れて整体施術を受けることをおすすめします。そして頭痛の改善のみならず頭をスッキリさせて快適な日々を過ごされるようにしていただければと思います。