頭の凸凹の影響?

 上部頚椎(第1、第2頚椎)の歪みが全身に与える影響については、以前に触れたことがありますし、カイロプラクティックの世界ではかなり重要な問題として考えられているようです。
 そして実際、肩こりや首筋の張り、首のつまりや運動制限などを感じている人の上部頚椎は歪んでいますし、その歪みが堅固になっている人がたくさんいます。
 仰向けで寝たとき、自然と顔が少し右側を向いてしまう人の場合、第2頚椎(=軸椎)が頭部から見て右回り(首の後で頚椎を触ると骨の出っ張りが左側にずれている)に捻れている可能性があります。

 「盆の窪」の奥でなんとなく第1頚椎(=環椎)を様子を伺うことができますが、第1頚椎は眼の使い方、噛み癖や噛みしめの癖、その他の影響を受けて歪みやすい特徴があります。そして、頭蓋骨の基盤とも言える後頭骨は第1頚椎に乗っていますので、第1頚椎が歪むと頭蓋骨が歪み、頭蓋骨が歪むと第1頚椎をはじめ頚椎全体に歪みが生じ、それが全身のバランスに影響を及ぼすことになります。

 ですから、からだの左右に顕著なアンバランスが見られる場合や、首・肩の張りが強い場合などは頚椎を整えることが必須になります。頚椎は七個しかありませんが、いろいろな筋肉の影響を受けて歪んでいますので、思いの外、頚椎を整える施術は手間の掛かる作業となります。
 カイロプラクティックの達人は、「コツン」と軽く上部頚椎に刺激を与えるだけでそれが可能だと言われていますが、一つ一つの頚椎を確認しながら地味に作業している私にはそのことが理解ができません。ただ本当にそんなに手間が掛からず上部頚椎が整えられるなら、それは「すごいことだ!」と思っています。
 ところで、以前に説明したことですが、顔が下がる現象と第2頚椎の向きは密接に関係しますので、顔を整える施術においては、必ず第2頚椎を整える作業が必要になります。

頭の凸凹や傷と上部頚椎の関係

 上部頚椎は首の筋肉で肩甲骨や肋骨に繋がっていますので、手の使いすぎ、肘の捻れ、肩関節の不具合などによって肩甲骨の位置がずれていたり、胸郭が捻れたりしていますと、その影響を受けて歪みます。
 また、第1頚椎は眼の使い方の偏り(右ばかり向いているとか、右目ばかりを使って見ているなど)や片噛みの癖などの影響によっても歪みます。また頭蓋骨が歪んで後頭骨が歪みますと第1頚椎も確実に歪みます。
 ですから私が上部頚椎を整えようとする場合、必ずこれらの歪みによる影響を確認しながら、手指や肘を整えたり、胸郭を整えたり、頭蓋骨を整えたりといった施術を行います。そして、可能な限り片噛み癖や噛みしめの癖になりにくいように、また偏った見方が改善されるようにと全身を整えます。
 これらの作業が必須になりますので「手間がかかる作業」と表現しているのですが、これらを行っても上部頚椎が整わず、全身のバランスが回復しないことがあります。そしてそのような場合、私は頭部を細かく観察するようにしています。

 頭蓋骨が歪みやすいことはこれまでに何度も説明させて頂きました。頭蓋骨は二十数個の骨がパズルのように組み合わさってできていますので、一つの骨が歪みますとその影響が頭蓋骨全体に及んで頭蓋骨全体が歪んだ状態になってしまいます。そして、実際、ほとんどの人の頭蓋骨は歪んでいます。(その歪みが許容範囲内にあれば、特に問題は起こしません)
 ところが頭蓋骨の歪みとは関係なく、打撲やケガなどによる骨や筋膜の損傷、あるいは骨の変形(凸凹など)が影響して上部頚椎が歪んでいる場合があります。
 時々「ぜっぺきな頭はどうにかならないか?」などという質問を受けたりしますが、後頭骨が平に近い「ぜっぺき」のような変形ではなく、触ると局所的に明らかに凹んでいたり盛り上がっていたりしている人がいます。
 頭蓋骨がまた非常に柔らかい乳児のときに転んで打撲して凹んでしまったのかもしれません。あるいは、出産時に鉗子などを使用して頭蓋骨が変形してしまったのかもしれません。そのあたりの原因については何とも判断できませんが、結果として、それら変形や損傷状態によって頚椎が捻れ、全身のバランスに影響が出ているケースを何度も見てきました。

 女性のOさんの頚椎は全体的に左側に寄った歪み方をしていて、さらに第2頚椎は頭部から見て時計廻りに捻れ、それが堅固な状態になっていました。Oさんは歩行時、右足には力が入るけど左足は浮いていて地面を踏むことができない感じがすると訴えました。左足首に注目しますと、フラフラな感じで爪先が内側にダラッと捻れた状態になっていました。
 頚椎の捻れと左足首の関係性を観察(検査)しますと、頚椎の歪みを修正することで頼りない左足首がしっかりしそうな感じでした。ですから頚椎の歪みを修整するためにいろいろと観察を始めました。
 左肘はおかしく、左肩関節も力がない状態でした。Oさんは美容師でありエステティシャンでもありますので、この左手~腕の状態では仕事も大変だろうと思いながら細かく観察していました。すると、「私は幼い頃から左腕が外れやすく、ちょっとしたことでしょっちゅう腕が外れていました」と彼女は仰いました。
 「幼い頃から腕が外れやすかった」という言葉に、私は「頭の問題かなぁ?」と反応しました。
 それで、Oさんがベッドに仰向けの状態で頭を細かく観察していきました。第2頚椎が時計廻りに捻れているOさんは、仰向けでリラックスした状態では自然と頭が右に捻れます。第2頚椎と頭部はそのような関係にありますが、第2頚椎が捻れている原因が頭部にあるとすれば、その原因となるポイントに私が手を当てることで頚椎の捻れが改善し、右に向いていた頭は次第に左側に回転して正面を向くようになるはずです。
 その動きの予兆を感じ取れるように繊細に頭部に手を当ててポイントを探していきました。すると左耳の直上に5㎜くらいの大きさの凹みがありました。そしてその凹みのそばに3㎝くらいの長さの筋状の凹みもありました。それらに手指を当ててしばらく施術していますと、クイッ、クイッとちょっとずつ頭部が左側に回旋し始めました。そして2~3分くらい施術をおこなっていますと、頭はすっかり正面を向くように修正されました。
 第2頚椎の捻れがすっかり修正されたというわけではありませんが、捻れの堅固さはとれ、素直な状態になったと感じました。そして左足首の状態を観察しますと、足首もしっかりとして、爪先が内側に捻れていた状態も改善していました。これで左足でもからだを支えられる状態になったと判断しました。

 その後、立っていただき両足への重心の掛かり方を確認していただき、さらに歩いていただきました。
 Oさんはホッとした表情を浮かべながら、左下半身に体重が乗り、左足がしっかり着地して地面を蹴ることできるようになったことを実感していました。
 「その左耳上の凹みに毎日手を当ててケアしてください。そうすればだんだんと捻れていた頚椎が正しい位置に戻るようになり、全身のバランスが良くなると思いますから。」と私はアドバイスしました。

 Oさんは鼻が下がる傾向にありましたが、それも頭の凹みを手当てすることで改善されます。
 おそらく乳幼児期からの不調が30年以上ずっと続いていたのではないかと思います。左肩や腕がグラグラの状態で左手にも力が入らない状態、左下半身にからだを乗せることができない状態、それらを改善するきっかけがつかめたものと思います。

 Oさん以外にも、おそらく出産時の影響で頭部が凸凹して50年近く不調を抱え続けていた人もいました。
 出産時のトラブルですぐに手術を受け、頭部の筋膜に偏りが生じてしまった影響で斜頸になってしまった女子もいました。
 それ以外にも、スキーやスノボなどで頭部を打撲し、その影響でからだが不調になってしまったケースも多々あります。
 小顔整体など、無理に頭蓋骨を動かしたことの損傷が影響してバランスを崩してしまったケースなどもあります。
 頭は「脳機能の健全」という意味でも大切ですが、全身のバランスや身体機能の健全さという意味でも大切です。ですから、いくら頭にきたからといって、子供の頭を叩くは絶対に止めてください。仕付けで叩くという行為は良くありませんが、どうしても叩かざるを得ないと判断した場合は、頭ではなくお尻にしてください。

 からだの何処かが損傷してしまった場合、それを修復するために私はマグレインやダイオードを貼ったりしますが、頭部は髪の毛がありますので、それが叶いません。ですから、日々のセルフケアとして損傷部分に手を当ててもらうようにしていますが、そうすることで、何十年も前のケガや損傷であっても次第に良くなっていきます。
 しかし、何処をどのようにケアすれば良いのか、普通の人にはわかりません。ですから、なんとなく昔の古傷や乳幼児期からの問題がご自分の体調に影響を及ぼしていると感じていらっしゃる方は是非ご来店ください。私がケアすべき場所を探して見つけます。