膝の痛みとヒラルロン酸の注射針

 膝の状態が悪くなって整形外科を受診しますと、ヒアルロン酸の注射を何回か打つ治療行為が行われるとよく聞きます。
 ヒアルロン酸の効果については私にはよく解りませんが、注射針が悪影響を及ぼしていることがありますので、ここで少しお話しさせていただきます。

 だいぶ以前のブログで、鍼灸治療を毎日のように行っていた人の筋肉が損傷状態になってしまい、症状が非常に悪化し、そして元の状態に戻すことに手間と時間がかかるという話題を取り上げたことがあります。
 つまり、鍼灸治療の効果があるとか、ないとか、副作用があるとか、という観点ではなく、針を刺す頻度が増したことによって筋膜や筋肉が傷ついた状態になってしまったということを取り上げました。
 日本の鍼灸で使われる一般的な針はとても細いものです。ですから週に一度とか、そのような間隔で治療を受けられているのであれば、特に問題をおこす可能性は低いと考えられますが、何日も続けて鍼治療をされますと本来の症状とは別の問題がもたらされる可能性が高いと考えられます。
 そして、ヒアルロン酸を膝に注射する場合は、鍼灸の鍼よりも太い針を使いますので、筋膜や筋肉を傷つける可能性は高くなります。その個人の体質といいますか、皮膚や筋膜や筋肉の強さによって様相は異なりますが、弱い人は一度や二度の注射であっても注射針に負けた状態になってしまうことがあります。

 当初整形外科での説明で、ヒアルロン酸の注射を4~5回打つというのが一つのサイクルだと説明を受け治療を行うようです。それで済むなら特に問題を起こすこともないかもしれません。ところが一つのサイクルを終了しても思うような効果がみられず、さらに注射を打つことになることもあるようです。そのようにして注射する数が増えますと皮膚や筋膜が損傷状態に陥ってしまいますが、症状改善の兆しが遠のくように感じられて、私のところに来店される人もいます。

 新しい治療法として知られるヒアルロン酸での治療によっても膝の痛みや重苦しさが改善しないことで、「加齢のせいなんだろうか?」「体重が重たいせいなのだろうか?」「関節が変形してしまったのだろうか?」などと自身がなくなって不安な思いに覆われてしまうことがあります。
 このような状況の人に理屈をいろいろ説明しても理解を得られるのは難しいので、私は細かく説明することなく速やかに施術に入るようにしています。そして”ヒアルロン酸の注射”という文言に対しては、まず注射針による傷を疑うようにしています。

太ももの外側面が硬い人は注射痕が影響している可能性

 ヒアルロン酸の注射は多くの場合、膝関節の外側に行うようです。この部分は筋肉が薄い部分でありますので膝関節を包む袋(関節包)内に注射針が容易に届くためだと思います。
 ところがこの部分は、太ももの前面を覆う大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の中の外側広筋(がいそくこうきん)の腱の部分であり、複数回の注射針によってここが損傷している場合が多く見られます。

 すると膝関節で脛骨(けいこつ)の外側部を保持する力が弱くなりますので、脛骨の外側及び腓骨(ひこつ)が沈んだ状態になってしまいます。さらに、筋肉の性質として、同じ筋肉のどこかが損傷状態になりますと、それを補うように別の部分が強く収縮して硬くなるという現象が起こりますが、それが太もも外側がとても硬くなってしまう理由の一つです。すると筋肉同士の関係から太もも前面中央にあります大腿直筋(だいたいちょくきん)も収縮状態になりますが、それによって太ももが少し浮いた状態、つまり膝が少し曲がった状態になってしまいます。
 この状況は膝関節で太もも(大腿骨)が前方に歪み、脛骨の外側は後方に歪んだ状態ですので、膝関節は大きく歪んだ状態になっていると判断することができます。
 ただ、このような状況になっている人は膝関節そのものが腫れて太くなっていますし膝裏も腫れぼったくなっていますので、骨格的な歪みが生じていることを把握することは難しいようです。(側面から撮るレントゲンであれば診断できるかもしれませんが)

 そして結論的には、この歪みを解消しませんと膝関節の状態はスッキリしません。正座が楽にできる状態まで膝関節の状態を戻すことはできません。
 たとえばヒアルロン酸の注射によって膝の痛みは消えて、歩くことが出来るようになったとしても、階段を降りる時に痛みや恐さを感じたり、常に膝関節がスッキリせず重苦しい感じが撮れない状況になっていると思います。

 注射針による損傷に限らず、筋肉や筋膜や靱帯を損傷しますと回復までに時間が掛かります。私のような業態では、硬いものを揉みほぐすことは比較的容易にできますが、損傷状態になっているものを本来の状態に戻すのは何倍も労力と時間を要するようになってしまいます。ですから実際のところ、ヒアルロン酸の注射針による影響によって膝関節が不具合担っている人の場合は、数回の施術が必要となります。

 もし「何度も注射したなぁ~」と、心当たりのある人で、私のところに来ることの出来ない人は、注射針を刺したと思われる辺りに磁気の弱いタイプのピップエレキバンを貼ってみてください。うまく場所をとらえることができれば、途端に膝関節の動きが軽くなると思います。

注射針の影響によるその他の症例

 私がこれまでにケガ以外の理由で筋肉や筋膜が損傷状態になっているのを確認したものとしましては、低周波治療器の取り扱い間違い、高電圧治療器、リハビリ治療の牽引などがあります。また、ボトックス注射による筋力低下という影響もしっていますが、それは注射針によるものではなく、薬効による影響です。

 今回はヒアルロン酸の注射について取り上げましたが、その他にも痛み止めの注射、神経ブロックの注射などの症例もありました。

肩関節痛
 四十肩や五十肩の理由が「石灰が溜まって‥‥」と診断された人が、注射での治療と痛み止め注射を何度も繰り返していたケースで、腕の筋肉が損傷状態となり、それが五十肩状態の改善を阻む要因になっていたケースがありました。
 ひたすら注射を打った辺りを手当てして筋肉の回復を促すよう対応していました。

腰痛と神経痛
 元来腰が弱く、坐骨神経痛が発症したために整形外科で神経ブロック注射を打つことを繰り返していたケースで、次第にその薬効が薄れて痛みを感じない時間が短くなってきたために、週に3度ほどのペースでブロック注射をするようになって胃待った人がいました。
 その後、神経痛は良くなったのですが、今度は腰痛が激しくなり、じっと座っていることも、座った状態から立ち上がることも、力が入らず激痛を感じるようになってしまいました。
 結局、ブロック注射の数が増えたことで仙骨周辺の筋膜が損傷状態になってしまい骨盤を支えることができなくなってしまいました。
 損傷部分への手当てによる施術と、ダイオードとテーピングを駆使して対応していますが、回復までには時間が掛かってしまう状況です。

 痛み止めや神経ブロックの薬効ばかりに注目して突き進んだ結果、注射針による損傷という観点が抜けていたことになります。
 注射針や鍼灸の針に強い人、弱い人。低周波治療器に強い人、弱い人。それぞれありますので、ご自分の体質と体力などをしっかりと考えて、慎重に対応してください。何度も繰り返しますが、損傷状態になりますと、回復までに時間と手間が掛かってしまいます。