2011.10.10
呼吸について‥整体的観点から

 「呼吸が浅い」「深い呼吸ができない」状態は放っておいてはいけないと考えています。多くの人は喘息や気管支炎のような病的な状態でなければ大丈夫だと思っているかもしれませんが、呼吸の善し悪しは体の健康にとって非常に大切な要素です。
 リラックスした感じの、穏やかで、自然な感じの鼻呼吸が本来の状態です。

 整体的観点から見た「呼吸」
    @体が整っていなければ、正しい呼吸はできない
    A理想的な呼吸とは下腹部が動く腹式呼吸
    B口呼吸は必ず改善すべき悪癖    

@体が整っていなければ、寝ている時など意識しない状態での「正しい呼吸」はできない
 今は“ヨガ”をはじめとして“呼吸法”に関する情報や修得の場が身近なところにあります。ですから“呼吸を意識している状態”では正しい呼吸を実践することはそれほど難しいことではありません。しかしながら私たちは一日中呼吸を意識的に行うことは不可能です。ほとんどの時間を呼吸のあり方を意識することなく過ごしています。
 ところで“呼吸を意識していない状態”では、多くの人が理想的な呼吸を行うことができていないと言っても過言ではありません。呼吸の浅い人がとても多いのです。
 仰向けになって寝た状態で呼吸を観察しますと、胸が開いたり閉じたり上下に動いている人はたくさんいます(胸式呼吸)。こういう人は基本的に“呼吸が浅い人”と考えてよいと思います。この人に「お腹に手を当てて、お腹で息をするイメージで腹式呼吸を行ってください」と指導しますと、呼吸運動の中心が胸からお腹に移っていきます。しかし観察しますと“少し無理して呼吸している”ように感じられます。なぜかと言いますと、体が腹式呼吸をできる状態になっていないのに意志の力で腹式呼吸にしているからです。リラックスするよう促し呼吸に意識をおかない状態にしますと、すぐに元の胸式呼吸に戻ってしまいます。



A理想的な呼吸とは下腹部が動く腹式呼吸
 ところが胸式呼吸をしている人でも、鎖骨・肋骨・お腹・骨盤などの歪みを整えますと、お腹が大きくふくれる瞬間が訪れ、それ以後胸ではなくお腹が主体の呼吸運動に自ずと変わっていきます。さらに理想的な状態に近づきますと、下腹部が運動の主体になるような呼吸に変わり、体から力が抜けてとても楽な状態になります。
 呼吸をまったく意識しなくても、あるいは眠った状態であっても、このように下腹部が呼吸運動の主体になったように見えるあり方が理想ですが、そのためには体に歪みがない状態を実現しなければなりません。



B口呼吸は必ず改善すべき悪癖
 私たちの体は鼻で呼吸をするようにできています。このことをもっと明確に認識していただきたいと常々思います。私たち人間は言葉を話すとき息を使って声帯を振動させるため口と気管とがつながった状態になっていますので口でも呼吸ができる状態になっています。ところが、ほとんどの動物は口では呼吸ができません。口と肺がつながっていないからです。呼吸は鼻を通じて行うことになっています。ですから、鼻呼吸が本来の姿なのです。
 私たちの遠い祖先である太古の生命は海で誕生しました。ですから魚のように水の中にある酸素を呼吸するような仕組みになっています。これは今の私たちにも引き継がれています。湿気のともなわない空気は私たちの肺ではうまく血液に取り込むことはできません。私たちが意識することなく鼻の孔から取り込む空気は鼻腔や副鼻腔を通過してノドと気管を経由して肺に送られるわけですが、その間に湿度が90%に調整され、温度が調整され、汚れが除かれます。そうして肺に負担をかけず、効率よくガス交換が行える空気の状態が実現されます。ところが口で呼吸をしてしまいますと、空気は鼻腔も副鼻腔も通過しませんから、湿度・温度が調整されない汚れたままの空気がノドや気管や肺に入ってしまうことになります。これは体にとっては大きな負担です。ですから口呼吸は必ず改善しなければならない悪癖です。
 スポーツや運動は体を鍛えるために奨励されています。しかし酸素を多く消費する運動を続けていますと、鼻からの空気の取り込みでは間に合わずどうしても口で呼吸をするようになります。一時的なものであれば大丈夫かもしれませんが、毎日毎日何時間も激しい運動を行うことは、筋肉に負担をかけるだけでなく呼吸という面でも体に負担をかけ続けることになります。十分に注意していただきたいと思います。


ゆめとわでの対応
 呼吸が浅い場合、あるいは喘息の症状のようにゼイゼイしている場合、のどに引っ掛かりがありむせているような場合、これらどの場合でも共通しているのは体に捻れが生じていることです。呼吸に関しては鼻(顔)〜のど(首)〜肺(胸)が主体となって関わっているのですが、実際のところでは鼻(副鼻腔含む)〜恥骨部(骨盤)までの状態が呼吸の善し悪しを左右します。ですから呼吸の状態を改善するためには顔全体から下腹部までを整える必要があります。
 胸は肋骨(ろっこつ)に覆われているのですが、肋骨は12本あります。そしてその一つ一つは歪みやすい、というよりもよく動くようにできています。胸は全身の中でセンサーのような働きをするところですから環境の変化に敏感に反応しますし、もちろん心情・感情によって刻々と変化します。実際のところ胸は閉じたり開いたり、硬くなったり、捻れたり、と変化しやすいところです。
 この肋骨の変化によって息の通り道(気道)の状態が変わるようです。本当に微妙なのですが、胸が狭くなりますと息の通りは悪くなり「胃がつかえた」ような感じになります。鎖骨に近いところの肋骨がちょっと捻れていますと、呼吸が胸のところで引っ掛かりむせるようになったりします。
 しかし施術を行い、これらの歪みを整えますと症状はその場で改善されます。喘息のようにゼイゼイしていたとしてもすぐに軽快します。
 体を整えると呼吸も楽になり全身がリラックスするのですが、そういう現象を目の当たりにしますと、私たちの体は不思議で微妙なものだといつも感じます。

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