2014年03月21日

目のトラブル(2)‥左右で視力や見え方が違う、など

 目のトラブルや不調につきましては以前にも取り上げました。今回は2回目として、具体的な例を提示して考えてみたいと思います。
パソコンやスマートフォンなどの画面を見る時間がとても多くなった今日、目の不調を訴える人が大変多くなってきました。

(1) 片方の目が機能していない‥‥左・右で視力や見え方違っている場合

 視力検査を行えば、右目と左目の視力の違いは数値として確認することができます。しかし、左右で視力差がなくても実際にはどちらかの目が機能していないということもあります。
 まずは写真のように何かの文章を@正面に見る、A正面より右側に置いて見る、B正面より左側に置いて見る、というのをやってみてください。



 これら三つの場合で、見え方にほとんど差がないようであれば問題ないと言えます。
 どれかの場合で見え方が良くなったり、悪くなったりするようであれば、視力はガチャ目(不同視)ではなくても機能的にはガチャ目であると言えます。
 私たちは、見えやすい見方をいつもしてしまうという癖を持っています。例えばAの正面より右側に置いた方が見やすく文章も頭に入って来やすいのであれば、あなたはいつもそのように見てしまう癖を持っていると考えられます。すると、そのように顔も体も歪み始めることになります。そしてそれが体調不良の原因である可能性は十分に考えられます。

 これまでにも何度か申し上げてきましたが、目の使い方と噛む筋肉の使い方は体の捻れの出発点になりやすいところです。例えば“胃腸の調子が悪い”とか、“息苦しさを感じてしまいやすい”などの不調と、目の使い方が関係している場合もよくあります。
 また、右目と左目の働き方に違いがある場合、働きの良い方の目で常にものを見てしまいますので、そちら側の目を動かす筋肉がこわばってしまいます。すると首・肩のこりを招く原因にもなりますし、場合によっては五十肩などの肩関節や腕の痛みの原因になることもあります。

 さて実際に片方の目の働きが悪い人は、そちら側の眼球がうまく動かないケース(右を見ようとしても眼球の動きが途中で止まってしまうなど)が多いのですが、原因としては@眼球を動かす筋肉(外眼筋)が硬くなってしまっている、A前頭骨(額の骨)が捻れている、の二つがあげられます。
 @の場合は、こめかみがコチコチに張って腫れた感じになっています。時間をかけてじっくり筋肉をゆるめる施術を行います。Aの場合は、頭蓋骨全体の歪みを修正する必要がありますが、耳の周辺に施術ポイントがある場合も多く、耳の問題と目の問題は関連しあっているのかもしれないと考えています。

(2) 文字を見たり、目を開けているだけでも辛さを感じる

 本や新聞で文字を見たり、パソコンの画面を見たりするだけでも辛さを感じたり、ひどい場合は目を開けているだけも辛さを感じる場合があります。多くの人は、それを“疲れ目”や“眼精疲労”だと考えているようですが、目を休めても症状が改善しない場合があります。
 パソコンの画面など、一点を集中して見続けますと眼球を動かす筋肉(外眼筋)が硬直してしまい、眼球やその周りの血液循環が停滞気味になってしまいます。これによって“疲れ目”がもたらされると考えられます。この場合は、“ツボの本”などで取り上げられている、こめかみにある“太陽”や目頭にある“睛明”、“攅竹”、下瞼の下にある“四白”といったツボを丁寧に指圧することによって症状は軽快します。
 
 ところが、“疲れ目”などとは違う原因で目が開かない場合があります。
 瞼を開くときに額にシワができてしまうような感じの時、つまり額の筋肉の協力がないと瞼が開けられない場合などです。このような状態の人を見ますと、私は“目が開いていない”と感じてしまいます。この状態がひどくなりますと、目を開けるたびに頭痛がすることもあります。
 こういう場合の多くは、顔の皮膚やその下にある筋膜がこわばっていて、目の周りが常に下の方に引っ張っられている状態です。あるいは頬骨や上顎骨が下がっているため、瞼や眼球に常に下方向へのテンションが掛かっている可能性も考えられます。
 いずれにしましても下方向(お腹の方)に力が働いているのに対抗して上瞼を開けなければなりませんので、普通の状態より強い力を使わなければなりません。ですから、目を開けたくないと感じてしまうのでしょう。

 顔や首の筋膜がこわばってしまうには幾つかのケースがありますが、パソコンのキーボード入力をたくさんやった時とか、ピアノ練習をたくさんやった時など、手の骨間筋がこわばってしまったことが原因の場合もあります。その他に多いのは、お腹が冷えて腹筋がこわばっていたり、胸郭や骨盤が歪んでいる場合です。体が元気な時は、これらの変調や歪みがあったとしても体に調整能力がありますので、どこかで自動的に調整されて症状がでません。しかし、体が疲労しますと自動調整が効かなくなるため、一気に症状がでてしまうというのがほとんどだと考えています。

瞼が痙攣する場合
 瞼が痙攣してしまう場合は幾つかの原因があると思いますが、その一つとして、上記と同じように顔筋膜のこわばりが考えられます。すべてが骨格の乱れや筋膜の問題で解決するわけではないかもしれませんが、これらの問題を解決することによって痙攣が治まった場合も多くあります。

(3)目の奥の痛み‥‥自律神経が影響している場合もある

 「目の奥が痛む」と訴える人が時々来ます。“目の奥”というのは、場所や痛みを発している筋肉を特定するには漠然としている表現なので、症状をどう具体的に把握すればよいか戸惑うこともあります。
 それで、このような方には目に関わるであろう部位に対するあらゆる施術を試みます。頭蓋骨の歪み、そしゃく筋の変調、目の周りの表情筋、顔の皮膚や筋膜。これらを一通り調整して整えます。これで症状が解消されることもあります。だいたい7割くらいでしょうか。しかし3割の人はなんとなくスッキリしません。
 
 目を強くギュッとつぶったり、反対に大きく見開いたりするなど筋肉を動かすと痛みが出るような場合は、筋肉が硬くなっているので伸びることができず痛みを発してしまうと考えることができます。これは対処の仕方があります。ところが、ジッとしていても常に痛みがあるという場合は、筋肉の問題よりもく、自律神経がからむ血管や血液循環に問題がある可能性が考えられますので、そう簡単に症状が解消されることは難しいと感じています。そしてこのような人は、目の奥の痛みだけでなく、体のあちこちに痛みや不具合を抱えていると思われます。

 実際に施術した例で申し上げます。目の奥の痛みだけでなく体のいろいろ不調も併せて施術を行うと目の奥の痛みも和らぎます。しかし数日経つと、やはり痛みや違和感が戻ってきます。そしてその間の経過を伺いますと、体がとてもだるくなったり、食欲や排便に変化が出たり、そのほか体中がいろいろ変化したということです。そしてまた施術を行うと、再び別な変化が体に起こり、本人は「本当に改善するのだろうか?」と疑問を感じるようになったりします。そして3回、4回と施術を行い、期間にして一月ぐらい経った頃、体が良くなっていることが実感されるようになり、目の奥の痛みもそれまでとは違った感じになったということです。

 ここからは推測を交えての話になります。
 目の奥の痛みに限らず、偏頭痛などジッとしていても痛みを感じるというのは、血管の筋肉に注目する必要があると考えています。そして血管の筋肉は自律神経(交感神経)によってコントロールされていますから、症状のある部位だけでなく、全身的に体を整えることが必要だと思います。
 また、視力や見え方に直接関係する筋肉(ピンと調整や瞳孔を調整する内眼筋)は自律神経によって機能していますので、自律神経のバランスが悪い目やその働きがスッキリしないと考えられます。
 “快眠・快便・快食”は自律神経のバロメーターです。これらの調子も悪いようでしたら、真剣に自律神経の調整について考える必要があるのではないでしょうか。
 自律神経については、後日、改めて取り上げたいと考えています。



 “目”はその人の人柄や内面を直感的に表現する最大のものかもしれません。ですから、いつも“輝いている目”を持ち続けていただきたいと思っています。
 とは言え、目そのものの状態や働きが鈍っていますと、内面にある素晴らしさや快活さを十分に表現できないで、いらぬ誤解をもたらす原因になってしまうかもしれません。

 私はたくさんの人の顔をまじまじと観察し、触ってきました。その経験から、「目が開いていない」とか「目が開いた」と直感的に感じるようになりました。実際の外見上は、皆さんちゃんと目が開いているのですが、機能や働きが今一ですと“目が閉じている”ように感じてしまうのです。そして目がちゃんと開いて明るくなった状態にするのが私の仕事です。
 目のトラブルは他にもいろいろあります。追々、それらについても取り上げていきたいと思っています。

 これまで幾度となく申し上げていますが、顔は全身の司令塔であり、内臓が表に現れたものです。誰もが自分の、あるいは他者の顔色を見て体の調子を伺うのはその証です。
 目、鼻、口(舌)、耳、素肌、これらは私たちの感覚器官ですが、これらを通して私たちは外の情報を受け取り、それに対応して考え、心を動かしながら暮らしています。もしこれら感覚器官の働きが不十分な状態であれば、正しく物事を認識できず間違った考え方をしてしまう可能性すらあるでしょう。余計な不安感や恐れといった感情でつらい思いをしてしまうかもしれません。それは人生の貴重な時間を損することです。
 ですから、常に頭と顔を良い状態に保って、感覚器官が十分に働ける状態にしていただきたいと思っています。