2011.07.30
腰痛について

 一口に腰痛と言いましても専門的な見地からは腰痛もいくつかの種類に分けられます。
 まずヘルニアや脊柱管狭窄症など神経が圧迫を受けることによって脚や足の方にしびれや痛み、あるいは力が入らないなどの症状をもたらすものと、いわゆる「腰が痛い」と腰や尻部に痛みを感じるものはまったく別のものであると考えていただきたいと思います。
 また腰部に痛みをもたらすものでも、打撲やギックリ腰など腰部のケガや傷によるものと、「別に腰をケガしたわけでもないのに腰が痛い」というものははっきり区別して考えなければりません。
 さらに施術する立場からは、「どんな時痛みを感じるのか」というのは大変重要な情報となります。「朝起きたときに痛い」のと「動くと痛い」のではまったく原因が違いますし、「屈むと痛い」のと「真っ直ぐ立つのが苦しい=反る(伸ばす)と痛い」でも改善方法は異なってきます。
 今回はこれらについて考えてみます。

 腰痛について考えること
    @腰椎ヘルニア・脊柱管狭窄症などは揉みほぐしても改善しない
    A腰をケガしたわけでもないのに何故腰が痛くなるのでしょう?
    B朝起きがけの痛みはお腹の冷えによる血行不良が考えらる
    C腰痛予防には手と足首とふくらはぎをマッサージして、お腹を冷やさない

@腰椎椎間板ヘルニア・脊柱管狭窄症などは揉みほぐしても改善しない
 
腰痛にかぎらず、体の機能の不調や痛み・しびれなどの症状をもたらす原因は大きく二つに分けることができます。一つは骨や器官の変形など体のパーツそのものが異常な状態になり、それが神経を圧迫し痛みやしびれとなる場合。もう一つはパーツそのものに異常はないが、その組み合わせ具合が正常でない、つまり骨格が歪んでいたりして筋肉、筋膜、皮膚、臓器、器官などに負担がかかり、機能不調や痛みなどの症状となってあらわれる場合。この場合は、時にマッサージなどの手法により症状が解消したり軽減する場合もありますが、前者のパーツ(器質)に異常のある場合は「揉んでもよくならい」となります。
 腰椎椎間板ヘルニア(右図)や脊柱管狭窄症は器質に異常が現れた病気です。ですからマッサージなどの手法は病気の改善には効果がありません。
 但し、腰椎ヘルニアの場合、はみ出た椎間板が神経や神経根に触れなければ痛みを感じることはありませんので、まったく痛みを感じない時期があったり、痛みがひどく動くこともできない時期があったりするということになります。

 腰椎ヘルニアで症状が出ている場合、腰椎4番と5番の間、あるいは腰椎5番と仙骨の間の椎間板が神経を圧迫しているケースが多いのですが、そういう場合は、腰椎4番と5番の間、あるいは腰椎5番と仙骨の間が狭くなっています。「椎体と椎体の間が狭くなっているので椎間板が押しつぶされて外にはみ出した(ヘルニアの状態)」と考えるならば、椎体と椎体の間を広げるようにする(正常に戻す)ならばヘルニアの状態が改善されて神経を圧迫しなくなると考えることができます。
 こういうタイプの腰椎ヘルニアであるなら、整体的な手法でヘルニアの症状を改善することが可能になります。椎体と椎体の間を保っているのは筋肉ですから、その筋肉の働きが正常になるように施術することでヘルニアの症状が改善されたケースは多々あります。
 手術にはリスクもともないますので、手術をするかどうか迷っている人は一度ご相談いただければと思います。




A腰をケガしたわけでもないのに、なぜ腰が痛くなるのか?
 「転んで腰を打った」「尻もちをついた」とか「ギックリ腰になった」というのは、骨盤や背骨など直接腰に関係しそうな部位の打撲や捻挫や肉離れなどのケガになりますので、腰が痛くなるというのは因果関係としてわかりやすいことです。また、仕事や作業などで中腰の姿勢が多く、腰背部の筋肉に負担がかかるので腰が痛くなる、というのも理解できます。
 ところが、別に腰に負担をかけるようなことをしたわけでもないのに腰が痛くなった、とかギックリ腰になってしまった、というのはどうしてなのでしょうか? 「草取りを夢中になってやった」とか「日曜大工でしゃがみっぱなしだった」後などどうして腰が痛くなったりするのでしょうか? パソコンで長時間作業すると腰が痛くなるのは何故なのでしょうか? こういうケースについて考えてみましょう。

 腰痛に直接的に関係する骨は背骨と骨盤と大腿骨です。これらの関係に歪みがなければ基本的に腰痛は起こりません。(但し、長年腰痛を患っていると腰背部の筋肉がその状態でも大丈夫なように変化します。筋肉がガチガチになってしまいますが、ここではこれを除外して説明します)
 つまり、反対から考えますと背骨か骨盤か大腿骨のどれか一つでも正常でなければ腰痛を起こしやすい状態であるということでもあります。痛みを出すのは骨ではなく筋肉や筋膜や皮膚など軟部組織ですから、骨格が多少歪んでいても軟部組織が柔軟に対応できる状態であれば腰痛になることはありませんので柔らかい人は腰痛になりにくいと考えることができます。。
 しゃがみ込む時間が長くなりますと、アキレス腱や踵のまわりの筋膜が伸ばされ続けますので疲労します。筋肉や筋膜は伸ばされたまま長時間放っておかれますとなかなか短時間では回復できなくなるようです。足首周辺の疲労はふくらはぎや大腿部の筋肉に影響し骨盤をゆがませます。
 手や手指をたくさん使う仕事をする人、あるいは普段とは違って重たいものを持ち続けたとか、かわった手の使い方をしたときなどは手の筋肉が疲れますが、その疲れは鎖骨を歪ませ、首の付け根の骨(頚椎7番)を歪ませます。すると背骨全体が歪むことになります。
 パソコンでキーボードを打つ、あるいはピアノなどで指をたくさん使いますと、骨間筋という手の中の指と指の間の筋肉が疲労します。すると、筋肉つながりで骨盤と大腿骨の関係(股関節)を適切に保つことができなくなります。多くの場合、大腿骨が下がってしまいます。噛むことが足りないことでも大腿骨は下がります。(ですから脚の長さが違って見えたり感じたりするようになるのですが)
 
 実際のところ、腰痛(ギックリ腰は除く)で来られる人のほとんどは、手や手指、足首やふくらはぎの筋肉の疲労や片噛みの癖あるいは噛みしめの癖に原因があります。ですから施術箇所もこれらが中心です。「腰痛なのに何で手を施術するのだろう?」と疑問にもたれる人も多くいますが、理屈は上記の通りです。



B朝起きがけの痛みはお腹の冷えによる血行不良が考えられる
 これは腰痛に限ったことではないのですが、朝起きたとき腰が痛くて動き出せないとか、ベッドからなかなか起き上がれない、と訴えてこられる人がいます。「起きてしばらくすると楽に動けるようになるのだけれど‥‥」という症状の根本的な原因は血行不良であると考えられます。寝ている間の循環が悪いため、起きがけは血液が末梢までスムーズに流れなくて動作しようとしても動かすことができないとか、動作に無理がかかり痛みを伴うとか、そういうことがベースになっているのだと考えられます。若者よりも高齢者に多く見られる症状ですが、寝ている間に“脚がツル”というのも同様に考えることができます。

 私たちの体で循環の原動力であり主役であるのは心臓なのですが、心臓の働きは自律神経によって支配されています。心臓の働きは交感神経が優位である“起きている時間”に盛んになるのですが、副交感神経が優位になる“寝ている時間”は重力から解放されることもあってか、心拍数も血圧も減らし半ば休息状態になります。
 東洋医学の考え方に表裏、臓腑というのがありますが、それによりますと心臓と小腸は同じ系の臓腑の関係であり表裏の関係になります。小腸は食物を最終的に消化吸収する器官ですが、副交感神経が優位な時間、つまり寝ている時間に活発に働きます。小腸はお腹の中に折りたたまれて入っていますが、その長さは10メートル近くに及ぶほど大きな器官です。寝ている間にこの器官が働いているということは、寝ている間は小腸に血液が集中しているということでもあります。つまり、寝ている間の血液循環の主役は心臓ではなく小腸であると東洋医学では考えますし、理屈としてもそう考えることができます。
 さて、筋肉は冷えにとても弱い性質を持っています。寒さに冷えた指先は思い通りに動かすことができなくなることからもそのことがわかります。お腹が冷えていると小腸はうまく働くことができなくなります(小腸も筋肉ですから)。すると寝ている間の全身の循環が乏しくなります。そんな時さらに朝方の冷えがくると筋肉は我慢できなくなり自己防衛するために反応します。それが急にふくらはぎがツリ、痛みを訴えるということなのかもしれません。
 体は「生命を維持する」という目的で、脳や内臓の働きをいつも適切に保っておく必要があります。そのためには深部体温が37℃でなければなりません。この深部体温が低くなると体内の酵素が働けなくなりますので、生命を維持することに赤信号がともります。「凍死」というのは体が凍って死ぬわけではなく、深部体温が30℃とかに下がり酵素が働けなくなり生命活動が維持できなくなることです。ですからお腹は冷えていてはいけないのです。お腹を冷やすと手足の血流を犠牲にしてでもお腹に熱を集めようとするのが生体防御の仕組みです。
 朝起きがけに腰や膝が痛い、あるいはしばらく動き出すことができないとか、脚がよくツルという場合は、「お腹が冷えているのかな?」と一度考えてみていただきたいと思います。



C腰痛の予防には手と足首とふくらはぎをマッサージして、お腹を冷やさない
 簡単ではありますが上記で、手や手指、足首やアキレス腱の状態が腰部の骨格に影響する、つまり腰痛に関係することは説明しました。
 実際にここで施術をするにあたっても、手・手指・足首周辺・ふくらはぎをよく整えることによってあらゆるタイプの腰痛に対処しています。
 多くの人は“手と腰痛”がイメージ的に結びつかないようですが、背骨と骨盤と大腿骨の関係が腰痛の原因であるという出発点に立ち、本人がいつもやっている作業、あるいは特別に行った作業で手や足をどのように使ったかを考え合わせますと、「確かにそれが原因か!」と合点のいくことが思い出されると思います。
 根本的な原因を改善しないかぎり、症状が本当の意味で改善されることはありません。「腰が痛いから腰を揉む」とか「背骨や骨盤がゆがんでいるからボキボキして整える」とかやっても意味のないことです。一時的に症状が改善されたかのように感じるかもしれませんが、翌日とか数日後には戻ってしまったということになってしまうでしょう。

 中腰の姿勢で作業をする機会が多いような人は、腰部の筋肉そのものに負担がかかりますので、時折揉みほぐすとかマッサージを受けることは良いことだと思いますし、ご自分でされるならストレッチが有効だと思います。さらに腹筋と背筋(腰部の筋肉)は一体として機能し立位の姿勢を支えていますので、腹筋もある程度鍛えた方が良いでしょう。腹筋の弱い人、働きの悪い人は背筋がその分硬くなって腹筋の働きを補っていると考えてみてください。
 手術などでお腹に大きくメスを入れた人はどうしても腹筋の働きが悪くなります。すると腰痛になります。ですから、人一倍腹筋を鍛えることに努力する必要があるでしょう。
 お腹が冷えていても、腹筋の働きは鈍ります。そういう意味も含めてお腹を冷やさないように注意する必要があります。
  

ゆめとわでの対応
 腰痛に限らず体の不具合について施術する際、症状の進行状態についてはいくつかの段階があります。
 まず“感覚異常”の段階。体に歪みが生じると「なんかおかしいな」「違和感を感じる」「腰がすっきりしない」などの感覚が生じてくる段階での初期段階です。これはもしかしたら一晩寝てしまえば自然治癒力で治ってしまうかもしれません。そうでなかった場合、次に進み“機能がおかしい”段階となります。「うまく動かすことができない」「動かすと痛む」などの段階で、いわゆる「腰痛」として多くの人が感じている段階と言ってもいいかもしれません。そして“機能がおかしい段階”を放置していると“器質に異常が生じる”段階に進みます。機能異常の段階なのに無理して続けていると、ついに筋肉自体や組織が変化してしまうというような段階です。腰椎ヘルニアなどの病気は、この段階にあるといってもいいかもしれません。慢性腰痛、慢性の坐骨神経痛など、「持病持ち」という段階です。こうなってしまうと、すぐに改善することは難しくなります。
 「根本原因を探し出し、それを修正することで症状を改善する」というのがここでの施術方法です。器質が異常になった段階やギックリ腰などの傷によるもの除いて、腰痛はとても短時間で改善できる症状です。ほとんどの腰痛は1回の施術で改善できると思います。
 慢性腰痛、つまり器質が異常になった段階のものは数回の施術では解消することは無理です。月1〜2回と定期的に施術を続けることによって1年後には器質の異常が改善された、という感じになるものです。
 腰椎ヘルニアや脊柱管狭窄症などに対しては、脊椎(背骨)の歪みや配列を正すことで痛みや症状を改善できる場合もありますので、一度来店されることをおすすめします。

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