背中の痛み

 背中に痛みを感じる場合に注意しなければならないことは、内臓系の問題が痛みと関係している場合があることです。膝痛や肩関節痛などの場合は、ほとんど内臓のことは気にすることなく筋・骨格系の問題に的を絞ることができますが、背中の場合は胃と腎臓が痛みの原因になっていることもありますので注意が必要です。

 背中の張りや痛みにつきましては、その発生部位で上図のように大まかに原因を分けることができます。但し、これは大まかな目安であって全く正しいというものではありません。
 「背中の上の方~首にかけて」と感じられる肩甲骨周辺に張りや違和感や痛みを感じる場合は、ほとんど筋骨格系の問題が原因になっていると考えられます。
 「胃の裏あたり」と感じられる肩甲骨下部あたりに張りや不快さや重さや痛みを感じるようであれば、それは胃や消化器系の不調が原因になっているかもしれません。但し、猫背の激しい人の場合、この辺りが盛り上がっていることもありまして脊柱起立筋の変調が原因になっている場合もあります。
 胸郭(肋骨)の下部から腰部にかけての部分に圧迫感や痛みを感じる場合があります。しばしば腰痛と間違われたりしますが、この部分には腎臓があります。腎臓が膨らんでいて肋骨に圧迫されている可能性があります。
 その下の腰部から骨盤にかけての部分は腰痛に分類されます。

(1)筋・骨格系の背中の痛み

1、肩甲骨の内側など肩甲骨周辺の痛みや違和感

 肩甲骨は専門用語で上肢帯(じょうしたい)と呼ぶことがありますが、つまり、上肢=腕を体幹(=胴体)につなげる働きをする存在です。私たちが腕を大きく動かすことができるのは上肢帯である肩甲骨が大きく動くことができるからなのですが、その分、肩甲骨は歪みやすい(位置をずらしやすい)という弱点を持っています。
 肩甲骨の内縁には背骨と肩甲骨を繋ぐ筋肉(肩甲挙筋、小菱形筋、大菱形筋)がありますが、肩甲骨が歪みますとこれらの筋肉が変調をきたし、違和感や痛みをもたらすことがあります。そして、このような現象はしばしば起こります。

 また、これらの筋肉のさらに奥には上後鋸筋がありますが、この筋肉が硬くこわばってしまいますと、圧迫感で苦しくなることもあります。さらに肩甲骨の表層には僧帽筋がありますが、この中部線維や下部線維がこわばりますとやはり背中の痛みの原因となります。

背中の張りと痛み 肩甲骨周辺

背中の張りと痛み 肩甲骨の下部~腰部の上

腕を動かすと背中に痛み‥‥菱形筋のこわばり

2.脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)の張りによる痛み

 背中の深部には、骨盤から後頭部につながる脊柱起立筋群があります。多くの場合、脊柱起立筋群の変調は腰痛として感じられますが、背中を使いすぎた場合や猫背による脊柱起立筋の緊張状態が背中の痛みや違和感として感じられる場合もあります。

3.広背筋(こうはいきん)が発する痛み

 背中の表層には広背筋があります。体操競技の「吊り輪」で平行に開いた腕で宙に浮いたからだを支える時に活躍する筋肉です。

 つまり、広背筋は腕と密接に関係している筋肉ですので、腕の使いすぎなどで張ってしまうことがあります。また、広背筋は骨盤からはじまり、肩甲骨を経由して腕に繋がっていますので、骨盤の歪み、肩甲骨の歪みなどで変調を起こし、こわばって痛みを発することもあります。

(2)内臓系に関係する痛みや違和感や圧迫感

 肩甲骨の下部、背中の真ん中あたりに痛みを感じたり、圧迫感を感じて苦しくなったりする場合、「胃の張り」が原因になって可能性も考えられます。
 腹側の鳩尾(みぞおち)のところに胃がありますので、胃の調子が悪くなりますと鳩尾や上腹部が硬くなってしまうことがありますが、この状態は多くの人が経験していると思います。ところが胃が張りますと、それは背中側に膨らむ特徴がありますので、お腹側だけでなく背中側も張ってしまい「肩甲骨の下辺りが硬くなって苦しい」という状況を招きます。

 そして、胃の下部の背中側には腎臓があります。からだの疲れが蓄積しますと腎臓が腫れてしまうことがありますが、そうなりますと「肋骨に腎臓が圧迫されている」ような状態になりますので、常に背中の下部に圧迫感を感じたり、仰向けになると圧迫された痛みを感じたりするようになります。腎臓の腫れが酷くなりますと常に痛みを感じ続けるようになってしまうこともあります。
 腎臓が腫れて大きくなってしまう状況を医学的にどう判断されるのか知りませんが、腎機能の検査データが正常であったとしても、実際に腎臓が大きくなっていて肋骨に圧迫されているような状態は存在します。そしてほとんどの人は腰部が重苦しいので腰痛の症状だと勘違いしてしまいます。


背中の張りと痛み 肩甲骨の下部~腰部の上