腰痛について (1)

 一口に腰痛と言いましても専門的な見地からは腰痛もいくつかの種類に分けられます。
 まずヘルニアや脊柱管狭窄症など神経が圧迫を受けることによって脚や足の方にしびれや痛み、あるいは力が入らないなどの症状をもたらすものと、いわゆる「腰が痛い」と腰や尻部に痛みを感じるものはまったく別のものであると考えていただきたいと思います。
 また腰部に痛みをもたらすものでも、打撲やギックリ腰など腰部のケガや傷によるものと、「別に腰をケガしたわけでもないのに腰が痛い」というものははっきり区別して考えなければりません。
 さらに施術する立場からは、「どんな時痛みを感じるのか」というのは大変重要な情報となります。「朝起きたときに痛い」のと「動くと痛い」のではまったく原因が違いますし、「屈むと痛い」のと「真っ直ぐ立つのが苦しい=反る(伸ばす)と痛い」でも改善方法は異なってきます。
 今回はこれらについて考えてみます。

腰痛について考えること

@腰椎ヘルニア・脊柱管狭窄症などは揉みほぐしても改善しない

 腰痛にかぎらず、体の機能の不調や痛み・しびれなどの症状をもたらす原因は大きく二つに分けることができます。一つは骨や器官の変形など体のパーツそのものが異常な状態になり、それが神経を圧迫し痛みやしびれとなる場合。もう一つはパーツそのものに異常はないが、その組み合わせ具合が正常でない、つまり骨格が歪んでいたりして筋肉、筋膜、皮膚、臓器、器官などに負担がかかり、機能不調や痛みなどの症状となってあらわれる場合。この場合は、時にマッサージなどの手法により症状が解消したり軽減する場合もありますが、前者のパーツ(器質)に異常のある場合は「揉んでもよくならい」となります。
 腰椎椎間板ヘルニア(右図)や脊柱管狭窄症は器質に異常が現れた病気です。ですからマッサージなどの手法は病気の改善には効果がありません。
 但し、腰椎ヘルニアの場合、はみ出た椎間板が神経や神経根に触れなければ痛みを感じることはありませんので、まったく痛みを感じない時期があったり、痛みがひどく動くこともできない時期があったりするということになります。

腰椎ヘルニアで症状が出ている場合、腰椎4番と5番の間、あるいは腰椎5番と仙骨の間の椎間板が神経を圧迫しているケースが多いのですが、そういう場合は、腰椎4番と5番の間、あるいは腰椎5番と仙骨の間が狭くなっています。「椎体と椎体の間が狭くなっているので椎間板が押しつぶされて外にはみ出した(ヘルニアの状態)」と考えるならば、椎体と椎体の間を広げるようにする(正常に戻す)ならばヘルニアの状態が改善されて神経を圧迫しなくなると考えることができます。
 こういうタイプの腰椎ヘルニアであるなら、整体的な手法でヘルニアの症状を改善することが可能になります。椎体と椎体の間を保っているのは筋肉ですから、その筋肉の働きが正常になるように施術することでヘルニアの症状が改善されたケースは多々あります。
 手術にはリスクもともないますので、手術をするかどうか迷っている人は一度ご相談いただければと思います。
A腰をケガしたわけでもないのに、なぜ腰が痛くなるのか?

 「転んで腰を打った」「尻もちをついた」とか「ギックリ腰になった」というのは、骨盤や背骨など直接腰に関係しそうな部位の打撲や捻挫や肉離れなどのケガになりますので、腰が痛くなるというのは因果関係としてわかりやすいことです。また、仕事や作業などで中腰の姿勢が多く、腰背部の筋肉に負担がかかるので腰が痛くなる、というのも理解できます。
 ところが、別に腰に負担をかけるようなことをしたわけでもないのに腰が痛くなった、とかギックリ腰になってしまった、というのはどうしてなのでしょうか? 「草取りを夢中になってやった」とか「日曜大工でしゃがみっぱなしだった」後などどうして腰が痛くなったりするのでしょうか? パソコンで長時間作業すると腰が痛くなるのは何故なのでしょうか? こういうケースについて考えてみましょう。

 腰痛に直接的に関係する骨は背骨と骨盤と大腿骨です。これらの関係に歪みがなければ基本的に腰痛は起こりません。(但し、長年腰痛を患っていると腰背部の筋肉がその状態でも大丈夫なように変化します。筋肉がガチガチになってしまいますが、ここではこれを除外して説明します。)
 つまり、反対から考えますと背骨か骨盤か大腿骨のどれか一つでも正常でなければ腰痛を起こしやすい状態であるということでもあります。痛みを出すのは骨ではなく筋肉や筋膜や皮膚など軟部組織ですから、骨格が多少歪んでいても軟部組織が柔軟に対応できる状態であれば腰痛になることはありませんので柔らかい人は腰痛になりにくいと考えることができます。。
 しゃがみ込む時間が長くなりますと、アキレス腱や踵のまわりの筋膜が伸ばされ続けますので疲労します。筋肉や筋膜は伸ばされたまま長時間放っておかれますとなかなか短時間では回復できなくなるようです。足首周辺の疲労はふくらはぎや大腿部の筋肉に影響し骨盤をゆがませます。
 手や手指をたくさん使う仕事をする人、あるいは普段とは違って重たいものを持ち続けたとか、かわった手の使い方をしたときなどは手の筋肉が疲れますが、その疲れは鎖骨を歪ませ、首の付け根の骨(頚椎7番)を歪ませます。すると背骨全体が歪むことになります。
 パソコンでキーボードを打つ、あるいはピアノなどで指をたくさん使いますと、骨間筋という手の中の指と指の間の筋肉が疲労します。すると、筋肉つながりで骨盤と大腿骨の関係(股関節)を適切に保つことができなくなります。多くの場合、大腿骨が下がってしまいます。噛むことが足りないことでも大腿骨は下がります。(ですから脚の長さが違って見えたり感じたりするようになるのですが)
 
 実際のところ、腰痛(ギックリ腰は除く)で来られる人のほとんどは、手や手指、足首やふくらはぎの筋肉の疲労や片噛みの癖あるいは噛みしめの癖に原因があります。ですから施術箇所もこれらが中心です。「腰痛なのに何で手を施術するのだろう?」と疑問にもたれる人も多くいますが、理屈は上記の通りです。

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