腰痛に限らずのことですが、からだが発する痛みには筋肉系の深部感覚によるものと、神経痛に分類されるものがあります。
腰痛の場合、曲げたり、伸ばしたり、捻ったりする動作で痛むというのは、ハッキリと筋肉系の問題によるものと判断できます。
ギックリ腰や肉離れ、捻挫などの場合、その一番の特徴は「力が入らなくなる」ことですが、これらも筋肉・筋膜系の問題です。ギクッ、ピリッとした瞬間に筋肉や筋膜や靱帯に傷がついてしまい、筋肉が上手く収縮することができなくなってしまったために症状が現れます。
腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、スベリ症、梨状筋症候群などと診断される場合は、坐骨神経痛の症状が伴うが特徴的です。
坐骨神経痛は一般に下肢のシビレや痛みを伴う症状として認識されていますが、その程度はさまざまです。非常に軽いものであれば“むくんでいるのでだるい”と勘違いしてしまうほどですし、“皮膚感覚がおかしい”と感じる程度の場合もあります。
このように症状が軽微のうちに“坐骨神経痛の可能性”を疑って適切に対処すれば、簡単に問題は解決するのですが、症状が重たくなるまで放っておきますと厄介な状態に進んでしまうことがあります。そして、重症な状態になりますと、下肢を少しも動かすことができなくなってしまったり、じっとしているだけでもジンジン神経痛が襲ってきたり、「痛くて眠ることもできない」というような状態になってしまいます。ここまで症状が進みますと、神経ブロック注射に頼らなければならなくなるでしょう。
その他には骨折による腰痛があります。激しい運動に腰椎が絶えきれなくなり、腰椎分離症になってしまうことがあります。また骨そのものが弱くなって腰椎圧迫骨折になることもありますが、これらの場合は整形外科を受診していただかなければなりません。
(1)筋肉系トラブルによる腰痛
①縮んでいる筋肉を伸ばそうとすると痛みを発する
座った状態で上半身を右側に捻ったときに、左側の筋肉が伸びなくて動きが止まってしまう場合、それは左側の脊柱起立筋(腸肋筋)や腰方形筋が縮んだ(=こわばった)状態になっていることによるものと考えられます。筋肉が上手く伸びることができないので動作が止まってしまいます。そして上半身を捻る動きは止まってしまっているのに、さらに捻ろうとしますと、左側のこわばった筋肉は痛みを発して「それ以上伸ばさないで!」と合図します。
この「こわばっている筋肉を伸ばそうすると痛みを発する」のと同じ現象は、前屈をすると腰が痛くなる、痛くて中腰ができない、などの症状に通じるものがあります。
②収縮できない状態の筋肉を収縮させると痛みを発する
上記のように座った状態で上半身を右側に捻ったときに、背中右側の筋肉が邪魔して動作が途中で止まってしまう場合、それは右側の脊柱起立筋(腸肋筋)や腰方形筋が十分に収縮できない状態になっているからです。
上半身を捻る動作は止まってしまっているのに、さらに捻ろうとしますと、右側の収縮できない筋肉が余った状態になってしまい、それが挟まれて潰されるような状態になり痛みを発します。
この「うまく収縮できない状態の筋肉を収縮しようとすると痛みを発する」現象は、上半身を反ると背中や腰が痛みを発する、椅子から立ち上がろうとすると痛みを発する、歩行時に地面を蹴ろうとすると痛みを発する、などの症状に通じるものがあります。
③急性腰痛‥‥ギックリ腰、捻挫、肉離れ
少し前まで何ともなかったのに何かの拍子で突然、あるいはジワジワと腰が痛くなる急性腰痛は、多くの場合、ケガが原因です。「腰や背中がピリッとしてから何となくおかしくなり、次の日になったら布団から起き上がることができなくなった」というような場合はギックリ腰の症状です。ギックリ腰(急性腰痛)の場合、明らかにギックリ状態になったとわかって激痛が走る重症の場合と、自分ではギックリした覚えもないのに時間の経過と共に次第に症状が悪化していく場合などがあります。
急性腰痛のほとんどは外傷ではないのですが、内部に傷ができたことが原因です。ですから症状の回復は傷が癒えるまで日数が掛かってしまいます。そして、ちゃんと傷が癒えなければスッキリ元の状態に戻ることもありません。過去にギックリ腰を経験してから「どうも腰がスッキリしない」と感じているのであれば、それは傷がしっかり治っていないという可能性が高いと考えられます。
また、ギックリ腰と似たような症状に、出産時の傷や産後のケア不足による腰痛があります。出産してから腰が悪くなったと感じているのであれば、会陰や尾骨周辺の状態が本来の状態に戻っていない可能性があります。
(2)冷えによる腰痛
筋肉は「冷えに弱い」という特徴があります。真冬の朝に手先がかじかんでしまうのは筋肉が冷えに弱いことを如実に物語っています。
四つ足動物と違い、二足歩行の私たちは立った姿勢を支えるために腹筋と背筋が働き続けていますが、そのバランスが崩れますと腰痛や腹痛になることがあります。
例えばエアコンの冷気が背中やお尻など背面からやってきますと、骨盤を支える筋肉や腰背部の筋肉の働きが悪くなります。するとそれをカバーするために腹筋が頑張るようになりますが、姿勢は前屈みになり、下腹部が硬くなってしまうかもしれません。
また、冷たい物を食べますと内臓が冷えます。特にアイスクリームや氷などは胃の中に0°の物が入っていくことになりますので、とてもお腹が冷えることになります。そうしますと腹筋も冷やされて働きが悪くなりますが、それでも姿勢を保持しなくてはならないために、腹筋の分まで腰背部の筋肉が頑張らなければならなくなります。この状態は腰背部の筋肉に無理を強いている状態ですので腰痛を招くことになります。「お腹が冷えると腰が痛くなる」ことの理由です。
(3)坐骨神経痛
“神経痛は治りにくい”という風評があります。「坐骨神経痛ですね」と申し上げますと、皆さん、一瞬ガッカリするような表情になります。しかし施術する側の私としては坐骨神経痛をそれほど難しい問題だとは思っていません。坐骨神経痛の発症にはメカニズムがあります。それを丁寧に修正していけば、ほとんどの場合、症状は緩和され解決に向かっていきます。但し、脳・脊髄の問題、手術によって神経管そのものが傷ついたりした場合は、整体では難しいと言えます。