上の写真は私の店舗の看板ですが、からだは一繋がりのものであり、手と足はつながっていますし、頭とお腹や背中も繋がっていて、必ず関連し合っているということ是非多くの人に理科していただきたいという思いを持って開業いたしました。開業から13年になりますが、その思いは今も全く変わりません。
私の施術は、からだが一繋がりで繋がっていることが大前提となっています。ですから、他の多くの整体師やセラピストとは考え方も施術方法も全く異なっていると思います。そのことが解りやすい例が昨日ありましたので、紹介させていただきます。
(開業当時は、「身体」あるいは「体」と漢字で表記していましたが、今はなんとなくひらがなの方が私はしっくりきますので「からだ」と表記しています)
左手首の損傷で、右肩関節が動かせなくなった
その中年の女性Bさんは、惣菜を作る仕事をしています。ですから包丁もたくさん使っていますし、両手をたくさん使っています。
2週間ほど前に、仕事中につまずいてしまい前方に転んでしまいました。その時に左膝を床で打撲し、左手の掌側をかなり強く床に打撲したとのことです。そして、左手首はかなりの衝撃で腫れ上がったそうですが、転んだ直後から右肩に異変が現れ、すぐに右肩関節の動きが制限されるようになってしまい、右腕を動かすと激痛を感じるようになってしまったということです。
「左手と左膝を打撲したのに、どうして右肩が動かせなくなったのか??? (自分の記憶にはないけど)もしかしたら右肩も打撲してしまったのか?」という思いを抱え、整形外科を受診されました。
右肩のレントゲンでは異常は見つからず、原因のわからないまま医師からは「五十肩のようで、半年はかかるかなぁ」という診断がなされ、痛み止めの内服薬と湿布が処方されたということです。ところが日が経つほどに状態が悪くなり、痛みが耐えがたいほどになったので、「なんとかして欲しい」ということで来店されました。
右肩の状態を確認しますと、正面に真っ直ぐには90°くらいの高さまでは腕を上げることができますが、それ以上は無理で、腕を横に動かす動作は痛くてほとんどできない状態でした。症状としては五十肩によく似ています。しかし、じわじわと五十肩(肩関節周囲炎)が悪化して腕が動かせなくなることはよくあることですが、ケガでもしない限り、普通の状態から「急に動かせない」状態になることは、ほとんどあり得ません。ですから、私としましては当初聞かされた左手と左膝の打撲がとても気になりました。
Bさんのケースで申し上げれば、左手と左膝の打撲について説明したものの整形外科の医師は、症状のある右肩周辺ばかりを診察の対象としていました。ところが、「ひとつながりのからだ」が大前提の私は、右肩のことは後回しにして、左手と左膝に着目することから施術を始めました。
ベッドに仰向けの状態で寝ていただき、左手及び左膝の打撲に関連するところから観察を始めました。
左手のケガによって左腕の筋肉の働きが悪くなり、鎖骨の位置が狂ってしまい右肩に影響を及ぼすことは充分に考えられることです。ですから、左手首周辺の打撲箇所と鎖骨の関係、頚椎との関係などを探っていきました。すると、左小胸筋(しょうきょうきん)と左小菱形筋(しょうりょうけいきん)が非常にこわばっていて、第6頚椎から第1胸椎が強く左側に捻れているのが確認できました。
また、小菱形筋は内股の薄筋(はくきん)と関連性がありますので、薄筋を確認しますとやはり深部が硬く張った状態にこわばっていました。そして小菱形筋と薄筋の関係では、薄筋がこわばったことによって連動する小菱形筋がこわばってしまったという順番になっていました。小菱形筋の強いこわばりは頚椎や上部胸椎をきつく捻れさせた状態にしていましたが、その影響で右肩の動きが制限されている可能性が考えられました。
膝の打撲によって膝関節が不安定になり薄筋がこわばってしまうことは十分に考えられることですが、実際、そのような側面もありました。ところが膝関節を安定させるだけでは薄筋の状態が少し良くなるものの、深部の強いこわばりが解消される状態にはなりませんでした。右肩の動きは少し良くなるものの痛みは残ったままになっています。
膝周辺を施術した後は、手首の施術に移りました。Bさんは「血管がこんなに浮き出るほど腫れたんですよ」と仕草をまじえて話してくださいましたが、そんなにも腫れたのであれば、深部の組織は弱り、働きはかなり悪くなっているだろうと察しまして、手首周辺の深部を丁寧に手当てしていきました。
じっくりと施術を行っていますと、次第に薄筋深部のこわばりがゆるんでいき、小菱形筋のこわばりもゆるんでいきました。そして筋肉の強い張りで捻れていた頚椎や胸椎の状態が改善していきました。そこで仰向けになったままの状態ですが、右腕をいろいろと動かしてもらいますと、それまで痛みを感じていた動作が普通にできるようになっていたので、本人はビックリした様子でした。
その後ベッドに座っていただき、膝周辺を再度チェックして整え、手首には弱った組織を修復させるために「お灸膏」を貼りました。
「お灸膏」は最近知り合った、ちょっとお気に入りのシールです。こういった弱った箇所の修復を促すために、私は通常はダイオードを用いるのですが、手首の掌側であり、惣菜づくりの仕事でもありますので、貼ってもすぐに取れてしまいます。ですから、剥がれてもご自分で貼ることができる「お灸膏」をしばらくの間貼り続けていただくことをお願いしました。ちなみに膝の打撲で弱ってしまっているところにはダイオードを貼りました。
これでBさんに対する施術は終了です。
右肩の痛みや運動制限はすっかり良くなりました。手首周辺と膝周辺の弱まった部分が回復してくれば
それですっかり元の状態に戻ると思います。
そして、今回は右肩の症状であったにも関わらず、私は右手も右肩も一切施術しませんでした。筋肉の状態を確認するために何度か触りましたが、施術は行いませんでした。
施術中、Bさん本人は「ココが痛い」と左指で痛い箇所を私に訴えてきましたが、私はすべて無視した感じで左手や左膝周辺ばかりを施術していましたが、施術が終わると右肩がすっかり良くなっていたので驚いていました。
私の施術を経験された人はご存じだと思いますが、私が施術する場所は症状が出ているところとは大きく離れているところが多いです。足や膝や腰の痛みに対して手を施術したり、背中や首の症状に対して足を施術したりしますが、それは筋肉の連動、骨の連動という仕組みを介して、私たちのからだは本当に一繋がりになっているからです。
今回は、そのことを象徴するケースでしたので、紹介させていただきました。
私は時々マグレインやピップエレキバン(最も磁力の弱いタイプ)やお灸膏を貼ることを推奨することがあります。これらは、おそらく「肩こり」など筋肉が硬くなってものを和らげる目的の製品だと思いますが、私が使う目的はそうではありません。打撲や損傷や使いすぎなどで筋肉の働きが悪くなっている部分の働きを補い、その部分の修復を促す目的で用いています。ですから、磁力や刺激が弱いものを選んでいます。