私たちのからだは外界と「気」のやり取りをしながら生理現象を行っているようだ、という話を前回させていただきました。
そして、手のひらと足裏は体内から外界に向けて気を放出する出口になっていて、そこから気が放出されている状態が望ましい、という話をさせていただきました。
今回は具体例を示して、前回の続きをさせていただきます。
腎の気は足裏から出す
しばしば腰痛と間違われるのですが、腎臓が膨らんで肋骨を圧迫しているために腰部から背中にかけて辛い思いをしている人がいます。
腎臓は胸郭(肋骨)の下部~腰部にありますので、膨れたり腫れたりしますと下位肋骨を内側から押すようになります。
仰向けで寝たりしと肋骨は背中側から内臓を押し上げるようになりますが、その刺激で腎臓のある辺りが辛くなり、耐えがたく感じる場合があります。あるいは、膨れや腫れが慢性化して硬くなりますと、常に肋骨を圧迫する状態になりますので、どんな体勢でも常に辛くなるという状態を招きます。
この状態を「腰痛が悪化した」と感じる場合がありますが、からだを前後に動かしたり、左右に捻ったりすることに何の不自由さもなければ、骨格や筋肉の問題ではありません。つまり筋骨格系の腰痛ではありませんので、マッサージなど行っても症状はまったく改善しません。
このように腎臓は膨らんだり腫れたりすることがあります。それが腎機能と関係しているのかどうかはわかりませんが、疲れが溜まったりしますとこのような状態になりやすいと思います。
腎臓が肋骨を圧迫しているような状態に対しては、私は次の3点を考えながら施術を行います。
・耳と腎臓との関連性
・静脈系に問題があるか
・気の流れが停滞しているのか
耳と腎臓の関連性
東洋医学の考え方では、腎臓と耳には深い関係があります。
そして実際、このことは現象として現れます。
耳が過敏な状態であったり、頭蓋骨が歪んで耳の位置がずれていたりしますと、その影響で腎臓が膨らむ、あるいはむくむことがあります。また反対に、腎臓の状態が思わしくなかったり、膨れた状態になりますと耳の機能に変調が現れることがあります。
(耳の問題‥‥低音難聴 参照)
耳が過敏な状態とは、それまではほとんど気にならなかった騒音などの音が気になるようになったり、音がうるさく感じたりする状態です。その他に、耳に膜が張っているように感じ音がこもったり、自分の声が頭の中で響いたりする耳管に関係する症状、難聴や耳鳴りなども腎臓と関係している場合もあります。
これらのように耳の状態がおかしく、同時に腰部(腎臓のところ)に不快感や圧迫感を感じるようであれば、腎臓の膨れや腫れの問題を耳との関連性で考えてみるべきだと思います。
静脈系に問題があるか
静脈とリンパをあわせてここでは静脈系と呼びますが、静脈系の停滞はむくみにつながります。ただその場合、腎臓だけがむくみということにはなりません。顔や手や足などもむくんでいて、さらに腰部が辛いようでしたら、静脈系のことも考えに入れて対処する必要があると思います。
ただし私は、どんな人に対しても静脈系は必ず確認して整えるようにしています。私のような仕事は動脈系よりも静脈系を整えることに適していると思います。静脈系についての詳細はこちらを参照してください。
気の流れが停滞している
通常、からだは足裏から気を放出していますが、その流れを利用して腎臓は自身が放出すべき、いわば「邪気」とか「不要となった気」と呼べるものを放出していると私は思っています。
ですから、足裏から気が放出できない状態になりますと、腎臓に気が溜まってしまう状態になってしまいます。私はそんなふうに考えています。
この状態が長引きますと、腎臓が気で溢れたようになり、膨らんでしまうのではないかと思います。そしてその膨らみが肋骨を圧迫して辛くなったり、あるいは腰部(腎臓のあるところ)を手で圧迫すると「ウッ」と不快に感じて思わず声がでてしまう状況になってしまうのだと思います。
昨年から整体療法の勉強会を行っていますが、先日の勉強会では「気の流れ」をテーマにしましたが、ちょうど参加者の一人の腎臓が少し膨らんだ状態になっていました。背部から腎臓のあるところを圧迫しますと「うっ」と声を出してしまうような不快感を感じます。
「足裏から気が放出できるようになると、どう変化するか?」
ということで勉強会を進めました。足裏から気が放出できるようにするためには、基本的には膝から下(下腿と足首と足)を整えることがポイントです。
施術の詳細は省略しますが、骨格と筋肉を調整しますと、気が出る状態に変化しました。私が施術したのではなく、他の参加者に考えてもらいながら実際にやってもらいました。左右への施術で20分間くらいの時間を要したと思います。そして座ってもらい、腎臓の状態を確認し、さらに圧迫してみましたが、膨らみはなくなり、圧迫による不快感もなくなっていました。
「腎臓で停滞していた気が足裏から出ていったので、膨らみが消え、腎臓に余裕が生まれた」ということだったと思います。
腎臓の反射区を利用して腎臓の状態を整える
腎臓の膨らみ状態の程度によりますが、膨らみが大きく硬くなっているような場合は、実際の施術では上記で挙げました3つのことを実行しますが、さらに腎臓の反射区を利用します。
「反射区」とはいわゆる「足つぼ療法」と呼ばれる施術の時に用いるツボ(正確には反射区)のことですが、そこを刺激することで対応する臓器に影響を与えることができるとされる部分のことです。
腎臓の反射区は手のひらと足裏にありますが、私は両方を利用します。
足裏の反射区を刺激するときは、「ここから気が出て行ってね!」という思いを込めて施術をします。そしてその後で手のひらの反射区を刺激しますが、この時の思いは「この刺激が腎臓に伝わって気の巡りが活発になり、腎臓の気がどんどん足裏に向かって欲しい」というものです。
よほど腎臓の膨らみが頑固な状態でない限り、耳を整え、静脈系を整え、気の流れを整えて腎臓の反射区を刺激しますと、大概はそれで腎臓の膨らみは解消して、腰部に余裕が生まれます。それまで溜まっていた気が抜けていきますので、スッキリしてからだが軽くなった気になると思います。
ところが、たまになかなかスッキリした状態にならない人がいますが、そのような人は長年の慢性化により腎臓の膨らみがとても頑固な状態になってしまった人だと思います。
頭や心の中のモヤモヤは手のひらから出す
頭痛や頭重とは違いますが、何となく頭の中がモヤモヤしていたり、たくさん詰まっているように感じる時があります。静脈の流れが悪くて、頭の中に血液がたくさん残っているような場合もありますが、その他に、やはり「気」やその類のものが停滞していると感じられる場合もあります。
多くの人は、深い眠りの時以外、ずっと頭の中で何かを考え続けていると思いますが、その思考も頭の中に残ったままですと、それは邪気と同じような影響を及ぼすのではないかと思います。
本人はストレスが多いと感じているだけかもしれませんが、頭の中が「想いで満タン」といった感じの人が時々来店されます。
また、不安や心配、苦しみや悲しみといった感情が胸に溜まっている人もいらっしゃいます。どうしてそれが右胸かなのか理由はわかりませんが、右胸の鎖骨の下辺りが硬く膨らんでいて、そこの深部を揉みほぐしますと強い痛みを感じる人がいます。
それが単純に、右胸が硬いだけの問題であるならば、しばらく揉みほぐすことによって柔らかくなりますので、私はそれほど考えません。
ところが、その硬さが影響して腰が張っていたり、頭部が歪んでいるなどの状況になっていますと、「柔らかくなればいい」と簡単には片付けられません。やはり根本的な原因を追及して、そのような状況にならないことを考えなければなりません。
精神的ストレスも含めて頭の中を窮屈にしている思考の数々、心(胸)の片隅に巣くってしまったしつこい感情、これらは健康を害し、からだを歪める可能性があります。ですから、からだから排出する必要があります。そして余裕のある頭と心を取り戻していただきたいと思います。
しかし、このしつこいものを「どうやって出したらいいの?」と、反論されると思います。
そこで、そのための効果的な方法は、手のひらから放出される気と一緒に、外に出してしまうことだ、と私は考えています。
手のひらから出すための最も簡単な方法は、手のひらを最大限に拡げることです。太陽に向かって、あるいは大空に向かって手を高々と上げ、手のひらを思いっきり拡げます。
この状態をしばらく続けていきますと、手のひらの拡がりは大きくなると思いますが、次第に手のひらの真ん中辺りがムズムズしたりスースーしたりし始めると思います。それは気が抜けていく合図のようなものです。そして、その後はしばらくの間、普通にしていても気が通って抜けていく感じがしていると思います。そして、少し頭がスッキリしたり、心がスッキリしたりするのではないかと思います。
私は整体師として、常にそのような状態であるようにするために、肘や手首や手指を整えます。
頭や胸からの気は、肩関節~肘関節~手首(手関節)などの関節が歪んでいますと、なかなか流れ出てくれません。そして、これらの関節が慢性的に歪んだ状態になっている理由は、昔の古傷が治りきってないことによる影響と現在の手指の使い方の癖による影響が考えられます。
詳細は専門的になってしまいますので、ここでは説明しきれませんが、前回記しましたように、手を握ってグーを作るときに人差し指側と小指側のどちらを主に使っているかは重要なポイントになります。
人差し指と親指側を主体に手を使う人は、字を書く時に筆圧が強くなってしまいます。スラスラ字を書くという感じではなく、いろいろな動作で肘を挙げて脇が開いた状態になってしまう特徴があります。そして首や肩に力が入ってしまいますので、首肩のコリを感じやすくなります。
そしてこのような人は、前腕(肘から手首にかけて)が内側に捻れ(回内位)ていますが、その反動で上腕(二の腕)が外側に捻れ(外旋位)、さらに肩(上腕骨)が前に出ているという特徴があります。手首も内側に捻れ、親指のつけ根が少し内側に落ち込んでいるかもしれません。
これはパソコンやスマホを多用している人に多く見られる特徴ですが、このような人達はおそらく気が放出されていませんので、頭や心がスッキリしている状態ではないと思います。
現在、かつてバイクで転んでしまい、右肩周辺を打撲した影響で不調を抱えている青年が来店されています。当初は、右肩関節周辺の問題以外に呼吸が苦しく、不安症で、少し鬱気も感じるという状況でした。
これらの症状の主な原因は、右肩周辺と右腕の筋肉の損傷が治りきっていないことによって右腕と右肩の関係がおかしかったからです。
初回の施術はその辺りの損傷を施術することに集中しましたが、それで呼吸が楽になりました。呼吸が楽になって頭部に酸素が十分行き渡るようになったのだと思いますが、それで不安症も改善したとのことでした。
2週間後に2度目の施術を行いましたが、その間のことについて尋ねますと、呼吸の苦しさはかなり軽減し、鬱気も消え、不安症の方も良くなったとのことでした。
しかし私の観点では、まだ手のひらから気が出る状況ではありませんでしたので、そうなることができれば彼の心理的な状況ももっともっと良くなるだろうと思いました。
そんなことを思いながら、先日4回目の施術を行いました。思いの外、右肩周辺の回復が遅いので「打撲だけではないのかなぁ?」と思いました。そして、改めてからだをいろいろ観察していきました。
すると、右足首で足趾のつけ根の靱帯が伸びているのを見つけました。捻挫痕のような感じです。そこを調整しますと右腕の状態がパシッとし始め、気が通るようになるを感じました。
これでやっと手のひらから気が出る状態になることができます。そうなれば、もっと頭の中がスッキリするでしょうから、良い状態で安定すると思います。
「人間は考える葦である」という有名な言葉がありますが、私たちは深い眠りにあるとき以外、ずっと考え続けています。ですから次から次へと思考が生まれているわけですが、それらがいつまでも頭に残っていますと、それは不調を招きます。
私は皆さんの頭を触ったときに、「詰まっているなぁ」と感じることがあります。大概は頭部の右側が詰まっていて、実際後頭部の右側が大きくなっています。(そのように頭蓋骨が歪んでいる)
そして、そんな時は「右手のひらから出して頭を軽くしたい」と思います。施術時間に余裕があれば、そのようにしています。
今回の話題に対する説明をどれだけの人が信じてくれるかわかりませんが、私は実際に体験していること、つまり私の真実をそのまま記しました。
そして、このようなことは実際に勉強会でのテーマにしていますので、誰もが知って体験することができます。もちろん、来店された方も知ることができます。
頭や心がスッキリしない人、不安や恐れとどう対峙すればよいかと悩んでいる人、腰部が辛く感じている人、からだの中に気が停滞していると感じている人、そんな人は機会があればご来店ください。