顔を上げようとするときのポイント 第2頚椎

 下がっている、あるいは下がり気味の状態にある顔面を上げる手段はいくつかありますが、第2頚椎の状態を整えることは要になる一つの方法です。
 首や肩のコリが強くて、整形外科を受診すると「ストレートネック」と診断される人がかなり多く来ますが、そのような人は、まず間違いなく顔面が下がった状態になっています。
 年齢が若ければ肌に張りがありますので、顔面の骨格が少し下がったところで、頬が下がったり、瞼が下がったりするようには見えないかもしれませんが、加齢に伴って肌の張りが弱くなりますと、顔の下がりを感じるようになってしまいます。

 話しをストレートネックに戻します。本来、頚椎は少し前弯した状態になっています。それによって頚椎を抵抗少なく前後に動かすことができますし、歩行時など地面からの衝撃を和らげて頭部を護る仕組みになっています。
 ところが、下を向いている時間が長かったり、肩凝り性だったり、首肩に力を入れる癖などによって頚椎の前弯が失われてしまうことがあります。すると首肩の凝りも強くなって「首はガチガチ、頭痛も頻繁」という状況になってしまうかもしれません。

 肩こり解消の目的で私のところに来られる人の中に「整形外科でストレートネックと言われ‥‥、だから肩こりが激しい」と仰る人も多くいますが、それは話しが反対で、首肩の凝りが強くなったのでストレートネック(状態)になってしまっていると私は考えています。なぜなら多くの場合、首肩の凝りをほぐしていきますとストレートネック状態は改善していくからです。ところが、首肩の凝りをほぐしてもストレートネック状態が改善しない人がいます。それは別の理由で頚椎が歪んでいるからなのですが、多くの場合、第2頚椎が下向きの状態になっていることが原因です。

 後頭部と首の境は少し凹んだようになっています。それを「盆の窪」と呼んだりしますが、そのすぐ下に頚椎の棘突起が出っ張っています。その棘突起が第2頚椎の棘突起なのですが、本来はそれほど目立つ存在ではありませんが、ストレートネックの人はその出っ張りが「ありあり」していると思います。あるいは「盆の窪」を感じることもなく、後頭部と首の境に硬い突起物を感じる状態になっているかもしれません。

 さて、この状態は第2頚椎が下向きになっているので、棘突起が上に回転して後方に突出した状態になっているということです。そして首後面の正中(中央)には項靱帯(こうじんたい)と呼ばれる強い結合組織が縦に走っていますが、それがすべての頚椎棘突起をつないでいますので、第3以下の頚椎棘突起も上向きの状態になってしまいます。つまり第2頚椎の棘突起が多の頚椎の棘突起を引っ張り上げているような状態です。ですから、頚椎は前弯を失ってストレートネックの状態になってしまいます。(他の理由でストレートネックになることもあります。)

 頚椎(椎体)とその棘突起の話しは馴れませんとイメージしづらく解りにくいかもしれません。
 頚椎の後方にある骨の突起は棘突起(きょくとっき)と呼びますが、それが上に引き上げられた状態では、頚椎自体(椎体)は下向きの状態になります。そして首後面に「首の骨」を在り在りと感じる状態だったり、「硬いなぁ」と感じる状態は棘突起が上を向いている、つまり頚椎が下を向いている状態です。
 頚椎が下を向いている状態では、骨連動の仕組みにより顔面の骨格も下を向くように下がってしまいます。
 ですから顔面の骨格を上げようとするときは、頚椎の下向き状態を改善することが必要になってきます。つまり首の後面を触ったときに首のつけ根(第7頚椎)以外の骨(棘突起)はあまり感じられない柔らかい状態にする必要があります。

要になる上部頚椎

 第1頚椎と第2頚椎の二つの頚椎を上部頚椎と専門的に呼びます。
 上部頚椎は頭蓋骨を首に乗せる関節(第1頚椎)であり、頭部を回旋させる軸となる骨(第2頚椎)と言う意味で、その在り方は、私たちの業界ではとても重要であると考えられています。「上部頚椎を整えると自ずと全身が整う」とうたっている専門家もいます。
 私はそこまで上部頚椎に思い入れはありませんが、その重要性は知っています。そして、上部頚椎は調整するのが難しい骨格でもあります。
 上部頚椎の中で第1頚椎はほとんど触れることができません。ですから、周囲のいろいろな状況は動きを参考にしながらその状況を推し測り対応しなければなりません。その意味でも第2頚椎の状態はとても重要です。

 さて、もし首の後面、盆の窪のすぐ下の第2頚椎棘突起が硬く突出している状態だったとします。

 それは第2頚椎が下を向いている状態ですが、その出っ張った骨(棘突起)に片手の手指を当てて、他方の手を額に軽く当ててみてください。
 次に、棘突起にに当てた手指を下方に少し動かし、棘突起を下方に押し込むように動かしてみます。すると額に当てた手に、額の骨が少し上に動くのが感じられると思います。

 つまり、第2頚椎の棘突起を下に動かす=第2頚椎を上に向けますと顔面の骨も上に上がることがわかります。これは私たちのからだに秘められた仕組みの一つです。

 ここで改めて要点を整理しますと以下のようになります。

  • 顔面の骨格は骨連動の関係で頚椎と密接に関係しています。
  • 頚椎が下を向いていますと、顔面の骨格も下を向いて下がります。
  • ストレートネックと診断されている人、盆の窪が感じられない、あるいは盆の窪の直下の骨(第2頚椎棘突起)が突出している人などは第2頚椎が下を向いているということです。
  • ですから、このような状態の人の顔面を上げるためには、第2頚椎の下向きを改善する必要があります。

下向きの第2頚椎を修正するために

 骨格の歪みを修整することについて多くの人がイメージしやすいのは、骨格を直接「ポキポキ」とか「バキバキ」とか操作して調整する方法かもしれません。カイロプラクティックは直接骨格を動かしますので、得意分野だと思われるかもしれません。
 ところが上部頚椎はたくさんの筋肉が絡んでいて、そのバランス関係で現在の状態になっています。ですから関係する幾つもの筋肉を整えませんと一時的に骨格を調整したところで、すぐに元の状態に戻ってしまいます。その意味で「筋肉の調整」がもっとも重要です。それぞれの筋肉の状態が良くなり、頚椎に関係する筋肉群のバランスが整うことで頚椎の状態が良くなれば、それはその状態を安定させることに繋がるからです。

 なぜ今回はこのようなことを申し上げているのかは、顔面も含めて頭蓋骨や頚椎はとても繊細で微妙な部位であり、施術でトラブルが起こりますと、重大な問題に繋がってしまう可能性があるからです。
 「小顔整体」を売りにしているところなどは、グイグイ頭蓋骨を押し込んだり、首の筋肉を引っ張ったり、私から見ると非常に危険な施術を行っているようです。十分に注意してください。

後頭下筋群(こうとうかきんぐん)のこわばり

 さて、第2頚椎を下向き(棘突起は上向き)にする代表的な筋肉に後頭下筋群があります。後頭下筋群は後頭部の骨(後頭骨)と第1頚椎、第2頚椎に繋がっていますので、こわばることで第2頚椎棘突起を引き上げてしまいます。ストレートネックになる原因になります。
 後頭部と首との境の筋肉がガチガチに張っているいる人、指圧すると痛みを感じる人は後頭下筋群がこわばっていてストレートネック状態になっていると思います。

中斜角筋(ちゅうしゃかくきん)のこわばり

 首の側面には頚椎と肋骨を繋いでいる斜角筋(しゃかくきん)があります。斜角筋は噛む筋肉(そしゃく筋)と密接に関係していますので、噛みしめ癖や歯ぎしりの癖がありますと顎周辺のそしゃく筋も硬くなりますが、同時に首の斜角筋も硬くなって首のしなやかさが失われ、動きも悪くなります。あるいは何かの理由で斜角筋がこわばりますと、そしゃく筋に影響して顎関節の不具合を招く可能性もあります。

 斜角筋には前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋の三つがあります。この中で中斜角筋は直接第2頚椎に関係していますが、中斜角筋がこわばりますとやはり第2頚椎を下向きの状態にしてしまいます。
 中斜角筋はそしゃく筋の中で口の中にあります内側翼突筋(ないそくよくとつきん)に連動していますので、顎を大きく開いたときに耳のところ(咬筋)ではなく、顎関節の内部が痛みを発するようなときは、中斜角筋がこわばっていると判断できます。

その他の筋肉の影響

 後頭下筋群と中斜角筋の他にも、第2頚椎を下向きにしてしまう筋肉はいくつかあります。あまり専門的になりすぎても解りづらくなりますので、それらについてはここでは省略します。
 また、第2頚椎の問題以外にも顔面の骨格を下げてしまう理由はいくつかあります。
 そしゃくが足りなければ、全身的に筋肉の働きが弱まりますので、重力に対抗する力も弱まります。
 お腹が冷えるなどの要因で、腹筋~胸~首前面の筋肉がこわばることがあります。パソコンの業務ばかりしている人は胸の筋肉がこわばりますが、それらによって喉や舌関係の筋肉がこわばって顔を下に引っ張っている状況もあります。
 猫背により背筋がゆるんだ状態になっている人がいますが、すると後頭部が上に上がり、反動として顔面が下がってしまうということも起こります。
 ですから、顔を整える私の施術においては、顔面以外のいろいろな筋肉や骨格を整えています。多くの場合で、その時間は実際に顔を触っている時間の何倍にもなります。

頚椎と腰椎の関係とセルフケア

 アスリートや筋肉を鍛える肉体的トレーニングしている人達などを除いた、私たち一般人の骨格は、側面から見ますと頚部は軽く前弯していて、反対に胸部(胸椎)は軽く後弯し、そして腰部は再び軽く前弯している状態が普通です。
 頚椎も胸椎も腰椎も(そして仙骨も)、それぞれがゆるかに弯曲していることで重力や衝撃による負荷を軽減したり、体幹の柔軟性を保つことができるようになっています。
 ところが、普段の姿勢や身体の使い方の癖などによって頚椎や腰椎の前弯が失われたり、胸椎の後弯が大きくなっていたり、あるいは胸椎の下部が前弯している人などがいます。猫背が強いと思っている人、骨盤を立てて座ることが苦手な人、骨盤が後傾してお尻が下がっていると感じている人などはこのような傾向があります。

 今回の話題は第2頚椎が下向きの人は顔面が下がるので、それを改善するためにどうするべきかという対策について考えてみます。
 私は毎日みなさんのからだを触っていますので、経験にもとづいて第2頚椎を整えたり、ストレートネックを改善するための手段を知っています。ですから、施術を行うことができます。ところが、素人であるみなさんがそれを行うことはほとんど不可能です。そして先ほども申しましたが、上部頚椎は非常に重要で微妙な部位ですので、やたらに力を加えたり動かしたりして欲しくないところです。
 そこで、腰椎と頚椎の骨連動の関連性から、腰椎が前弯状態になるようトレーニングすることで少しずつ上部頚椎の状態が改善するような方法を採用していただきたいと思っています。

 方法は、座った状態で骨盤を寝かせた状態(=腰椎が前弯していない、あるいは後弯している状態)から、ゆっくりと下腹を前上方に突き出すように骨盤を立てる運動を繰り返すことです。
 つまり、意図的に腰椎が前弯する状態を築くことなのですが、ポイントになるのは第4腰椎、第5腰椎、仙骨といったところが軟らかく動かせるようになり、そこで腰椎の前弯が形成されることです。
 腰椎がストレート状になっている人、あるいは後弯している人は、寝ている骨盤を立てる動作をしたときには、腰椎の下部が動くのではなく、腰椎と胸椎との境あたり、つまり腰部の上の方が動いて骨盤を立てる運動が行われる状態になっています。最初はそこで動いてしまうのは仕方のないことですが、何度か運動を繰り返している間に、少しずつ動く場所が下になるように意識を向けていきます。そして最終的に腰部の下の方、理想的には腰椎と仙骨の間が動いて骨盤を立てる動作ができるようになるように努めてください。
 毎日のようにこの動作を繰り返していますと、やがて普通にしていても腰椎が前弯した状態になり、それに合わせて頚椎も前弯して第2頚椎の状態も良くなると思います。そして顔面の下がりが改善されるようになると思います。
 一回のトレーニングでは、30回くらい骨盤を立てたり寝かせたりする運動を行ってください。それを一日に何度か繰り返してください。