だいぶ前にも同じ内容の投稿をしましたが、改めて皆様に注意喚起したいとの思いもありまして、今回アップさせていただきました。
私の高校時代のクラブ活動(野球部)の友人がはるばる埼玉県からやってきてくれました。彼は現在都立高校の教諭をしながら野球にも携わっており、高校野球のOB有志たちが組織している「マスター甲子園」にも参加しています。
9月にゲームに出場したとのことですが、その時に右の膝裏の筋をちょっと損傷したようです。そして、その次の日当たりから腰痛を感じるようになり、近所の整骨院を訪れたとのことです。
そこでの治療では、超音波治療器と低周波治療器を用いていたとのことですが、これまでにのべ30回ほど通院して同じような治療を行っていたとのことです。
最初の症状である腰痛は腰部の痛みですが、通院を重ねているうちに痛む場所が変化してきて殿部の上の方が痛くなり、そして次に殿部の中程が痛くなったとのことです。今はその痛みは治まったのですが、殿部~右足にかけて神経的な痛みを感じるようになったとのことです。そしてその状態がなかなか改善しないので、はるばる遠くから尋ねてきてくれました。
久々に、しかも遠くから来てくれましたので、一回で改善させなければならないというプレッシャーを感じていましたが、様態と経過を聞きますと「それは無理だ」と思うしかありませんでした。
私のところでは電気治療機も含め、これまで機械類は一切使ってきていませんので、超音波治療器がどういうものであるかは知りません。低周波治療器に関しては、整体学校に通っていた時に少しだけ教わりましたし、自分も患者として治療を受けたことがありますのでだいたいのことは知っています。
低周波治療器の本質は、硬くなっている筋肉をほぐす作用だと私は思っています。周波数や強さの違いによって筋肉に対する作用は異なるものの、基本的にはグイーン、グイーンと電気の力で筋肉を揉むような作用を行うものです。ですから、肩こりなど「凝り」による痛みには効果があるのだと思います。
彼の場合、最初の症状である腰痛時には腰部の筋肉に低周波治療器の端子を当てたのだと思います。ですから何回かの治療で硬くなっていた腰部の筋肉はゆるみ腰痛は消失したと推測できます。しかし筋肉というのは単独で動いているわけではなく、周辺の筋肉が働きを補い合いながらバランスをとっていますので、腰部の硬くなった筋肉をゆるめれば万事解決するというものではありません。
低周波治療により腰部の筋肉は強制的にゆるんだのですが、それは筋肉の働きを弱めてしまったということでもあります。筋肉は収縮したり弛緩伸張したりしてからだを動かしたり骨格を支える働きをしていますので、ある筋肉が損傷して収縮できなくなったり、今回のように電気治療で収縮状態を強制的に解除、つまり収縮できない状態にしてしまいますと骨格(骨盤)が支えられなくなってしまいます。しかしそれではまずいので、別の筋肉が強く収縮して骨格を支えるように働きます。それがお尻の上部の筋肉であり、痛む場所が腰部から殿部の上の方に移った理由だと考えられます。
そしてその後、痛みを発する殿部上方の筋肉をほぐして弛めるために低周波をかけたのですが、それによって殿部上方の筋肉も働きの悪い損傷状態になってしまいました。ですから、それらを補うために殿部中程の筋肉に負担が移り、その筋肉が硬くなって痛みを発するようになったという経緯だと考えられます。
以上を専門用語で説明しますと、最初痛みを発していた筋肉は腰方形筋や脊柱起立筋だと思います。そしておそらく腰方形筋を低周波治療したのだと思いますが、頻繁に電気を掛けていたせいで腰方形筋が損傷状態になってしまいました。すると骨盤を支えるために、中殿筋が普段以上に収縮するようになってしまったので、中殿筋が硬くなって痛みが生じるようになりました。そしてそれを解消するために中殿筋やおそらく大殿筋も含めて低周波を掛けたと思いますが、低周波治療を重ねたために結果として腰方形筋、中殿筋、大殿筋が損傷状態になってしまったのだと思われますし、その状態をカバーするために梨状筋が強く収縮してこわばり状態になってしまいました。
坐骨神経は梨状筋の下を通って骨盤の内側から外側に出てきますので、硬く太くなってしまった梨状筋は坐骨神経を圧迫することになります。これが坐骨神経痛を発症してしまった経緯ではないかと思います。
低周波治療器の注意点
低周波治療器には接骨院や整骨院などで使われている業務用のものと個人が自宅で使用する家庭用のものとあります。おそらく機能や威力が違うのだと思いますが、基本的な原理は同じです。筋肉の始まり(起始)と終わり(停止)付近に電極の端子を貼り付け、そして電気を流すのですが、強さの強弱によってチリチリと感じる弱い段階からグイーン・グイーンと筋肉が強く揉まれるような強い段階まであります。そして素人判断では「強い方が効くのかも」と思われるのか、ついつい強めにしてマッサージ効果を期待しがちのようです。
これまでに日々の肉体疲労を回復しようとして太股裏側に家庭用低周波治療器医を毎日のように使い、そしてけっこう酷い坐骨神経痛になった人が来店されたこともあります。あるいは、何かの景品で低周波治療器を手に入れたので、どんなものかと試しに膝に当てて一回使っただけなのに、膝関節がかなりおかしくなって来店された人もいました。
業務用では、腰部の張りと凝りを改善するために接骨院で数回低周波治療を行ったあと、今回の話と同じように腰部から殿部にかけての筋肉がすっかり損傷状態になってしまい酷いう坐骨神経痛になってしまった人もいました。
おそらく接骨院などでお毎日のように低周波治療器を掛けてもらっても何ともない人も多くいると思います。ですから「その人の体質」が低周波治療にむいているか否か、という面が大きな要素だとは思いますが、低周波治療が合わない人は「行ってはいけない治療」、「頻繁に行ってはいけない治療」ということになります。
あるいは、担当者の選択する強さや周波数などが間違ってしまい、筋肉を損傷状態にしてしまったのかもしれません。
低周波治療器、高周波治療器、高電圧治療器、光治療器などいろいろあろうかと思いますが、その治療が自分に合っているかどうか、担当者が適切な治療を行っているかどうか、そういったことで今回のように筋肉の損傷状態を招き、別の症状が現れるといったことも起こります。まずそのことを知っていただきたいと思います。電気量販店などで普通に販売されているから安心などと思いがちですが、どうぞ気をつけて、最初は弱めの強さで、時間も短めにして様子を見ながら、治療を行うのがよいと思います。
損傷した筋肉の回復
今回の彼の場合、ことの始まりは野球で膝裏の筋肉を傷めたことがきっかけでした。私の観察したところ、右ふくらはぎの筋肉(腓腹筋内側頭)の膝裏近くの軽い肉離れのような感じの損傷でした。おそらくそれが原因で骨盤が歪み、右の腰部がこわばってしまい腰痛になったのだと思います。ですから、私ならそのふくらはぎの肉離れを回復させる手段をとります。ところが彼は腰部のこわばりをゆるめる治療を受けてしまいました。低周波治療の他に超音波による治療も受けたようです。
超音波治療がどんなものなのか私は知りませんが、低周波治療を週に2~3回の頻度で受けたようなので、おそらく体質的に合わないこともあって腰部の筋肉が損傷状態となり、そして上記で説明したように中殿筋、大殿筋も損傷状態となり、梨状筋が強くこわばって坐骨神経痛を発症してしまいました。
ですから、解決方法は損傷状態になっている腰方形筋、中殿筋、大殿筋を回復させることになります。
ここで面積の問題がやっかいになります。ふくらはぎの肉離れによる損傷は、いくつかの筋線維がピンポイント的に損傷しただけですから、いろんな方法がとれますし、筋線維の働きを補う手段も簡単です。ところが、腰方形筋・中殿筋・大殿筋のどこか一部ではなく、亭主は治療による損傷ですから、筋肉全体に近い状態であり、回復させなければならない面積が大きいため、手段も限られますし時間も掛かってしまいます。
彼の場合、坐骨神経痛の症状も今はまだ限定的で、朝起きがけの血液循環が乏しいときに症状がきついけど動いて血液循環が活発になると症状は軽減するといった状況のようです。あとは教壇に立ち続けていると辛さがやってくる程度なので、坐骨神経痛としてはそれほど酷い状態ではありません。
しかし、今適切に対処しないと症状は悪化していってしまうと思われます。
損傷した部位は温めて、筋肉の回復を促して欲しいです。
低周波治療は今は控えて欲しいです。
軽い運動は大丈夫だと思いますが、腰部や殿部に大きな負担が掛かる運動やトレーニングは今は控えて欲しいです。
彼が遠くでなければ、「また来てね」と言えましたが、片道3時間以上かかるところですからそれはできませんでした。時間の経過とともに筋肉は徐々に回復していきますので、やがて坐骨神経痛は治まると思われます。ですから、アドバイスとして以上のことをお願いしたいところです。
また、彼は30歳の頃、腰椎椎間板ヘルニアで苦労した経験があります。神経痛の辛さをよく知っていますので、今回の神経痛が症状がまだ軽いにしてもとても気になっているようです。しかし、今回は直接的には梨状筋のこわばりが坐骨神経を圧迫しての神経痛ですから、梨状筋の状態が普通に戻れば神経症状は消えます。そのあたりは安心していただきたいと思っています。
なお、坐骨神経痛についてはいくつか過去にアップしていますが、下記なども参考にしてください。