眼圧を下げる

緑内障という眼の病気があります。

日本眼科学会では、下記の通り説明されています。

緑内障治療
緑内障は、眼圧を下げることができれば、その進行を防止したり、遅らせたりすることができる可能性のある病気です。正常眼圧緑内障でさえも、眼圧をさらに下げることで病気の進行を遅らせることができる可能性があります。
緑内障治療 (nichigan.or.jp)

 眼のや病気として有名なところでは白内障と緑内障があります。一文字”白”と”緑”が違うだけですから、似たような病気なのかと思われている人もいらっしゃるかと思います。
 ところがこの二つの病気はまったく違う類の病気です。

 白内障は、水晶体が混濁することで視力の低下をきたす目の病気です。眼球をカメラにたとえると、レンズが濁っている状態です。 日本においては、加齢に伴う発生頻度の上昇が認められています。70代の方の80%以上が罹患していると考えられ、誰もが発症する可能性のある目の老化現象であると捉えることもできます。
 緑内障とは、目から入ってきた情報を脳に伝達する視神経という器官に障害が起こり、視野(見える範囲)が狭くなる病気のことです。治療が遅れると失明に至ることもあります。

 白内障は手術によって症状を大幅に緩和、あるいは解消することができる病気ですから、それほど怖い病気ではありません。しかし緑内障は症状が進みますと失明の危険性が高まりますので、大いに警戒しなければならない病気であると言えます。
 そして緑内障による神経障害は、例外を除いて眼の硬さに関係する眼圧が高くなることによって引き起こされるとされています。ですから、緑内障の進行を抑えるためには眼圧が高くならないようにすること、眼圧をさげるようにすることが大切であるとされています。

https://www.santen.co.jp/ja/healthcare/eye/library/glaucoma/index2.jsp

 眼の中は房水と呼ばれる液体で満たされています。医学的には、この房水の排出がうまくいかないことが原因して眼球内の圧力(眼圧)が高まってしまうと考えられているようです。ですから、薬物療法(点眼)、レーザー療法、手術によって房水の流れを改善することで眼圧が下がるよう治療を行うようです。

 さて、私は医学者ではありませんので、”房水の排出”とはまったく異なる観点で眼圧を下げることを考えます。
 私は眼圧が高い状態を”眼がむくんでいる”と考えています。ですから、むくみ状態を軽減するにはどうすればよいか? という点に的を絞って施術を行います。

 施術の考え方は、顔のむくみや手のむくみなどに対するもとのまったく同じです。リンパと静脈の流れが悪いのでその部位の水分が停滞してしまいむくんでしまう、内圧が高まってしまうというものです。
 そして整体的な観点では、”周辺の筋肉の働きが悪い”ことと”骨格がズレて歪んでいる”ことがむくみを生じる原因であり、施術で改善を期待できることでもあります。

周辺筋肉の状態とリンパ・静脈の流れ

 静脈の流れが悪い状態をイメージしやすいのは、足が冷たくなると足首周辺などに赤紫色の細い血管がムニュムニュと浮き出たり、ふくらはぎなどの静脈が蛇行して浮き出てしまう下肢動脈瘤かもしれません。
 静脈の反対語に動脈があります。動脈は心臓のポンプ機能で送り出された血液を末梢の細胞まで届ける血管ですが、それは心臓の力と血管自体の収縮力などによって血液を能動的に流すという特徴があります。ですから、心臓と血管の働きをコントロールする自律神経(交感神経)と血圧と血管の柔軟性が着目するポイントとなります。不整脈や遅脈、動脈硬化などは動脈血の流れを悪くする原因になりますので、医学の循環系では重要視されるのだと思います。
 一方、静脈とリンパは静脈系と呼ばれますが、リンパ管や静脈の血管自体の力で内部のリンパ液や静脈血を流すことはできません。周辺の筋肉が収縮と弛緩を繰り返す原理をポンプ代わりに使ってリンパ液や血液を動かす仕組みになっています。そして、特徴としてはリンパ液や血液が逆流することのないように腕や脚のリンパ管や血管には逆流防止弁が備わっています。(心臓近くは心臓が作り出す陰圧によって流れる)
 ですから、冷えによって筋肉の働きが悪くなりますと流れが停滞してしまい足首周辺に細い静脈が浮き出たりします。また、下肢の筋膜がゆるんで血管が拡がり(太くなる)ますと逆流防止の弁が効かなくなり、さらに加齢・疲労・その他の理由によって筋肉の働きが悪くなりますと血液の流れも悪くなりますので静脈瘤が生じてしまうことになります。

 ですから、静脈とリンパの流れを改善しようとするならば、周辺筋肉の働きが良くなるように整える必要があります。
 眼球のむくみに関しては、どれとどれの筋肉を整える必要があると特定することは困難ですが、そしゃく筋、表情筋、頭部を取り巻く筋膜などを整えることで対応することができます。

骨格の歪みとリンパ・静脈の流れ

 リンパと静脈はそれ自身の能力でリンパ液(体液)や血液を流すことが難しいということは、簡単に表現しますと、動脈に比べて”力が乏しい”ということです。動脈は骨格が多少歪んでいてもグイグイと自分の力で通り道を確保しますが、リンパと静脈は力が弱いので骨格が歪んでいますと流れがそこでパタッと止まってしまうというイメージになります。
 ですから”むくみ”を改善しようとするならば、骨格の歪みを整えることは必要不可欠となります。
 骨格が歪んだ状態のままでリンパマッサージなどを行ったとしても、その時はマッサージの力でリンパや静脈は流れてむくみは改善しますが、時間の経過とともに再びむくんだ状態に戻ってしまうことになります。(それでも一時的にむくみが解消されることは良い効果がありますが)

 私たちの肉体の中で全身的な血流に最も影響力があるのは、鎖骨と第1肋骨の間を流れる鎖骨下静脈です。鎖骨下静脈は全身のリンパ液と上半身の静脈血が合流して心臓に還る血管ですので、鎖骨と第1肋骨の関係が歪んでいますと、全身的にむくみが生じることになります。
(参照:循環のポイント‥‥鎖骨下静脈と鼡径部

 鎖骨下静脈の次に影響力が大きいのは鼡径部です。ここは下半身の静脈が通過して心臓に還る部分ですが、たくさんの筋肉に囲まれていますし、事務職など座ることの多い場合はどうしても流れが悪くなりますので、朝のふくらはぎや足首と仕事終わりのそれとでは全く異なったもののようになるという現象が生じます。
 そして肩関節、肘関節、膝関節、足首など大きな関節、さらに手のそれぞれの関節で流れが滞りやすい現象が起きます。ですから施術においては鎖骨下静脈や鼡径部を最初に整え、次にむくみの生じている部位の関節や骨格、そしてその上の関節などを整えていくようにしていきます。

眼圧を下げるための整体的考え方と施術

 眼圧は”眼球の内圧”ですから、直接的な観察と施術の対象は眼球および関連する筋肉、眼球周りの骨格となります。しかし、眼球に直接触れることはできませんし、眼球を動かす筋肉(外眼筋)に触れることもできません。さらに眼球のピントを合わせたり光量を調整する機能は自律神経が行いますので、それも施術の対象外です。

 眼球は解剖学的に脳が飛び出したモノであると考えられています。脳を包む膜(硬膜)がそのまま結膜です。ですから、眼圧を下げたいと考えるなら、脳内の圧力を下げるようにまず考えます。そして脳内の圧力を低下するための方法は静脈の流れを改善することですが、脳に関係する大きな静脈には内頸静脈と外頚静脈があります。そしてそれらも最終的には後鎖骨下静脈に合流して心臓に還りますので、ここでも結局鎖骨下静脈の流れが大切であるということになります。ですから、鎖骨と第1肋骨の関係を整えることを最初に行います。(脳内の水分≒リンパ液は「洞」に集まって静脈に合流します)

 また、眼球は眼窩と呼ばれる頭蓋骨の穴に収まっていますので、眼窩を構成する骨格は当然、眼球内の水の流れに影響を与えます。
 そして眼窩を形成している骨は前頭骨(ぜんとうこつ)、頬骨(きょうこつ)、篩骨 (しこつ)、蝶形骨(ちょうけいこつ)、涙骨 (るいこつ)、上顎骨(じょうがくこつ)と、いくつもあります。これらの中で前頭骨、頬骨、蝶形骨、上顎骨は直接触れることができますので状態を観察することができますが、その他の骨は触ることができませんので、その状態は想像(予想)するしかありません。しかし経験的に申せば、触ることのできる骨が整えばそれでほとんどの場合、大丈夫です。
 さらに前頭骨、頬骨、蝶形骨、上顎骨を整えるためには、頭蓋骨全体を整える必要がありますので、結局、脳も含めて頭と顔面が整ってスッキリすることに繋がります。

 金魚には「デメキン」と呼ばれる眼球の飛び出した類がいますが、眼圧の高い人はデメキンに近い感じです。瞼の上から軽く触診しますと、パンパンになっているのがわかります。そんな人も鎖骨下静脈を整え、眼窩を含めて頭蓋骨の歪みを整えますと、多くの場合で眼球の内圧は下がって、眼球に余裕が戻ってきます。
 それでも満足に内圧が下がらない場合は、頚椎の歪みや後頭骨と頚椎の関係を調整しますが、これまでの経験では、これでほとんどの場合は大丈夫でした。
 但し、甲状腺機能亢進(バセドウ病)によって眼圧が高まっている場合もありますので、それは医学的な治療が必要になります。(甲状腺機能亢進状態の人は、喉が張って硬くなっています)

 医学的治療では、まず点眼薬を用いて眼圧を下げようとするようです。それがどれほどの効果があるのかは知りませんが、治療に通われている人の話を聞きますと、点眼薬にはそれほど期待はしていないようです。

定期な施術を薦めます

 さて、これまでの経験でもうしますと、緑内障を疑われている人に対して施術をおこないますと、ほとんどの場合で眼圧は下がりますので皆さん喜ばれます。そして医師からも「眼圧が改善しているようだ」と言われるようです。
 すると何故か皆さん、安心してしまい、施術を受けに来なくなります。私が行っている業務に対して「腰痛」と「肩こり」というイメージが強いようで、そこに問題がなければ、眼圧が下がったという実績があったとしても、「眼のことは眼科医に」という観念が強いようです。
 その皆さんの思いやイメージに対しては、私にはどうしようもないことですが、「肩こりや腰痛は大病に繋がらないけれど、緑内障は注意を怠ると失明に繋がってしまうので、眼圧を良い状態に保つことの方がよっぽど大切でしょ!」という思いが私にはあります。
 ですから、眼圧を良い状態に保つためだけの目的でいいですから、来店を続けていただきたいと私は願っています。私の施術では、眼圧を整えるために頭蓋骨の歪みを調整します。そして鎖骨下静脈の流れを良くすることも含めて全身のむくみが軽減します。これらの結果、「快適なからだと脳の働き」という副産物ももたらされると思っています。