顔と体の歪みの関係

 “顔は司令塔”と一番最初に記しましたが、体全体の歪みを修整するとき、最後に確認して調整するところは顔です。目の使い方の偏り、口の使い方の偏り、鼻の状態、そしゃく筋の状態、これらが原因になって体に歪みをもたらしています。

体の捻れや歪みの原因となるのは外界と接触する部分が多い

 体が歪む原因となる要因はたくさんあります。「普段の姿勢が悪いから腰痛になったのかな?」という類の話をされる方がけっこういます。確かにそういう影響もあります。しかし実際のところ、体に不調をもたらす原因を整体的に追っていきますと、ケガなどの外傷を除いて“ものと接触する部分”が原因になっていることが多いです。つまり手であったり、足先であったり。もちろん顔も根本原因である場合が多いです。
 顔には目・鼻・口・耳という外界と接触する部分があります。目はものを見るのでたくさん光と接触します。耳は音を聞くので、常に空気の振動と接触しています。鼻は臭いを嗅いだり呼吸の窓口ですから、絶えず空気と接触しています。口は呼吸や発声のためにたくさん空気に接触し、さらに食物と接触します。ですから、顔は外界の影響を受けやすいところということになります。
 「いつもテレビを右の方に見ていますね。それが体の歪みの原因です。」などと申し上げますと、皆さん信じがたいような顔されます。「なんとか歯ぎしりの癖が直るようにしないと股関節の不調は良くならないでしょう」と申し上げると、意外な顔をされます。しかし、体の不調の原因を一つずつ追っていくとそういう結論に到達することがよくあります。目・鼻・口・耳の使い方による体への影響を理解していただき、日々の生活に役立てていただければと思います。

目の使い方と噛み方が体の歪みの出発点になりやすい

 私たちの体の筋肉は必ず連動するという性質を持っています。たとえば目(瞳)を右の方に向けると、それに連動して首やお腹の筋肉も一緒になって右の方に動きます。(お臍に手を当てて瞳を左右に動かすとお臍の周りの筋肉も一緒になって動くのが観察できます)
 ですから、いつも右の方ばかりを見ている(テレビの画面が右にあるなど)と体は右の方に捻れます。(細かく言えば、じーっと右の方を見続けるとそれに合わせて肋骨の上部が右の方に捻れ、その捻れを修正するようにお臍あたりは左の方に捻れるという状況になるかもしれません。)
 また、食事の噛み方も体の捻れにとても強い影響を及ぼします。ものを食べる“そしゃく”は私たちの体にとって呼吸の次ぐらいに大切な運動です。片方ばかりで噛んでいる人は、やはり体がそちらの方へ捻れはじめます。
 “噛み方が足りない”、“噛み方が偏っている”のどちらも体に不調をもたらす大きな原因になります。高齢になって歯が悪くなり、正しいそしゃくができなくなりますと、やがて耳や目が悪くなっていきます。つまり老化が加速してしまうことになります。これはとても現実的な話ではないでしょうか。ですから「歯はいのち」という言葉も登場するのかもしれません。
 私たちは脊椎動物であり、哺乳類です。生まれたばかりの赤ちゃんは目が見えずとも母親の乳房を探り当て、乳首に食らいついては一生懸命そしゃく筋を動かして乳を吸います。この運動が私たちの原点です。“若年層の老化”という話題も出ている昨今、今の人たちに噛み方が足りないという事実は健康を維持する意味で、基本的な弱点だと思います。医学界の先生方はこのことをもっと声を大にして発信していただきたいと考えます。

なんとか解消したい噛みしめ・歯ぎしりの癖

 テレビの健康番組などで、歯ぎしりや食いしばりや噛みしめの癖が体に悪影響を及ぼすことがしばしば取り上げられるようになってきています。日中の目が覚めてときの噛みしめ癖に対する対処法は、なんとか意識的に注意深く生活していれば効果を上げる可能性があります。しかしながら、寝ている間に行ってしまう歯ぎしりなどの癖は、なかなか上手い対処法が見つからないようです。
 経験的に申し上げますと、歯ぎしりの癖を持っている人の多くは股関節に問題があります。本人が股関節の不調を自覚症状として持っているかどうかは別として、歯ぎしりのとき力を入れてしまう側の股関節がずれています。但し、股関節がずれていても歯ぎしりをしない人もいますので、「歯ぎしりの原因が股関節の不調だ」とまでは言い切れませんが。
 それでも歯ぎしりの癖を持つ人に対しては必ず股関節や下肢の状態を確認して修正します。寝ている間、下半身をリラックスしきれず力が抜けきれない人、そういう人が歯ぎしりをしてしまうのかもしれません。その他にも、もちろんストレスなどの精神的要因もあると思います。
 歯ぎしり・噛みしめの癖を持つ人、食いしばることが多い人、そういう人は咬筋・側頭筋がガチガチになっています。それだけで頭痛や片頭痛、首の痛み、肩凝りという症状を招いてしまいます。
 歯ぎしりや噛みしめだけでなく、寝ている間に拳を握るほど手に力を入れてしまうという人もいます。このような人はエネルギーの巡りがかなり悪いものと思われます。全身を調整して、リラックスできる体になる必要があります。どんなひどい人でも幾度か施術を行えば、かなり楽な状態になっています。