シワとタルミ

 顔のシワとタルミの原因の一番目はやはり皮膚の老化現象だと思われます。若い頃はピチピチしていたものが加齢に伴ってだんだん弛んでしまうのは、私たち人間に限らず地球上生物の宿命であり、言わば自然の流れです。
 とは言え、シワやタルミの程度に個人差があるのも事実です。個人差があるということは、改善に向けて対処方法があるということでもあります。
 ここでは、シワやタルミの改善について顔の整体でのアプローチを考えてみます。 

タルミは皮膚・筋膜・筋肉がゆるんだ状態

 “顔のタルミ”についてイメージするとき、多くの人は“皮膚のタルミ”が頭に浮かぶかもしれません。しかし、顔のタルミは皮膚のゆるみだけでなく、その下にある筋膜や筋肉がゆるんだ状態にあることがほとんどです。
 さらに、タルミを気にする人の多くは同時にむくみも持っていますので、ゆるんだ皮膚に対して重さも加わります。ですからタルミがなお一層強調されてしまいます。
 顔の整体でタルミに対してアプローチする場合は、皮膚・皮下筋膜・筋肉の三層について別々に対応することになります。さらに多くの場合、むくみについても対応します。

 皮膚のゆるみは、あえて表現すればエネルギー不足が影響している場合も多くあります。エネルギー不足というのは、皮膚細胞の活力が弱い状態であるという感じでしょうか。新陳代謝(ターンオーバーを含む)の能力が低下するためにもたらされる状況と考えられます。一時的にはフェイシャルマッサージなどの手段で血行を促進することが有効かもしれません。しかし、長期的には顔面の血液循環が常に順調である状態を取り戻すことが必要だと思います。
 皮膚の下にある筋膜のゆるみは、“顔のタルミ”を実感させる肝心なところですが、それは骨格の状態に影響されます。実際、多くの人の顔面(の骨格)は下がっています。それによって筋膜はゆるみ、顔にタルミをもたらしています。タルミの改善においては骨格を整えることが重要です。
 顔の筋肉には、顔に様々な表情を作るために働く表情筋と食物のそしゃくに関わるそしゃく筋があります。これらの筋肉は、使いすぎると硬くこわばってしまい、使い方が足りないとゆるんだ状態になってしまうという特徴があります。顎ラインのタルミを気にされている方は多いようですが、その部分は咬筋というそしゃく筋の場所です。食事で噛み方が足りない、あるいは噛み方に偏りがあるなどの場合は、この咬筋にゆるみが発生してしまいます。すると、耳下からエラにかけての顎ラインがダランとたるんでしまいます。その他にも、頬骨や上顎骨が歪んでいますと頬にタルミができたり、前頭骨が下がったり捻れたりしていますと目尻が下がったり、眉が左右で不揃いになったりと、表情筋にアンバランスが生じます。
 ボワンとたるんでしまうのは、むくみを伴っていると考えられます。むくみについては次の項目で説明しますが、内臓疾患以外では血行不良が主な原因です。

 以上をまとめますと、顔のタルミを改善するためには、骨格を整えることによって筋膜の状態を整えることが一番目の作業。次にそしゃく筋をはじめとする顔面筋肉の変調を改善する作業。そして、顔の隅々における血液循環不良を改善する作業が必要になります。また、筋肉の使い方の改善も必要になります。

シワの改善は、本人の努力と継続的な施術が必要

 シワには深いシワと浅いシワがあります。浅いシワは皮膚の表面(表皮)のシワで、日々のマッサージで解消することができる可能性があります。深いシワはけっこう頑固ですが、その人の癖が表面に現れたものであるとも言えます。例えば、目を開ける時に額の筋肉を収縮させるような癖を持っている人は、額に横ジワができます。顔をしかめる(眉をしかめる)癖を持っている人は、眉間に深い縦ジワが作られます。目尻の深いシワは、目の表情が豊かな人であることを現しています。いずれにしましても深くできてしまったシワは、皮膚の形状記憶現象でもあり、改善するにはなかなか努力が必要です。
 さて、実際に深いシワの周辺部分を触った印象ですが、シワのでき方には二通りがあると思います。一つは、皮膚そのものがそのように動いているというものです。眉間の深い縦ジワを例にあげますと、そこに縦ジワができるのは眉をしかめる動作が繰り返し行われていていてそれが癖になっているからです。すると、シワのある部分だけでなく、額全体や頬の部分まで広い範囲で皮膚や筋膜、筋肉が中央に寄りやすい状態になってしまっています。もっとわかりやすい表現を使いますと、顔が狭くなっていて、息苦しい感じになっているということです。ですから、この縦ジワを改善するためには、吸った息が頭の隅々まで巡るように開放感を持たせることをまず行います。額の部分の頭蓋骨(前頭骨)は一つの大きな骨ですので、それを拡げると言うと誤った表現になりますが、実際の施術ではそこを拡げるようにします。さらに鼻骨を整えると副鼻腔(前頭洞)にスーッと息が入ってくるようになります。すると狭かった額や顔全体が広くなった印象になります。クライアントに感想を尋ねますと、開放感がして、とてもリラックスできると言います。シワが改善されるかどうかはその程度にもよりますが、施術前より確実に深さや濃さは改善されます。
 二つ目は、皮膚が余ってしまっている状態というものです。例えば高齢者になると口の周りにシワが目立つようになります。これは、中身である筋肉量が減ったために外側である皮膚が余った状態になりジャバラとなったようなものかもしれません。その他にも、目尻の深いシワなどもそのような感じがありますし、ところどころの深めのシワにそのような感じが見受けられます。皮膚で言えばコラーゲン、ヒアルロン酸といった真皮の成分が不足していることも考えられます。
 このような状態のシワを改善することは短期間では難しいと考えます。中身を充実させる必要があり、施術以外に本人の努力が不可欠になります。ある種の筋力トレーニングで筋線維を太くする必要があるからです。

 以上のように、深いシワを改善するには@癖を改善する必要性とA中身を充実させることの二つの側面から考えて対処していきます。
 目を開ける時に額の筋肉を使ってしまう癖を持つ人は、そうしなければ目が十分に開けられないという原因があります。瞼を開く筋肉がちゃんと機能を発揮できる状態にしてあげれば、額の筋肉をあまり使わなくても大丈夫になります。それは整体でできることです。目尻のシワは、もしかしたら前頭骨が下がった状態にあって皮膚が余った状態になっている可能性も考えられます。それも整体で対応することができます。全てを整体だけで改善することは難しいかもしれませんが、整体で骨格や筋肉・筋膜・皮膚の状態を整えることで「けっこう良くなった」という状態にできることは十分に考えられます。