顔の整体:美容面

 エステやフェイシャルマッサージ、あるいは化粧品などを用いた顔の美容と顔整体の一番の違いは、その施術や効果を及ぼしたい対象となる部位が違うことです。エステやマッサージは主に皮膚やその下にある皮下筋膜、表情筋が対象であり、化粧品は原則として皮膚の最外層である表皮が対象です。
 一方、顔の整体は骨格を整えることが主な目的になります。骨格を整えることで自然と血流がよくなり、筋肉や筋膜、皮膚の働きが活発になって美容面に貢献できるというものです。
 美容面において、たとえば20才前の人たちと、40才、60才の人たちとの違いは、突き詰めれば新陳代謝の違いと言っていいと思います。細胞の働きが活発な若い頃は日焼けをしてもシミやくすみについてはそれほど考えなくてもよかったはずです。全身的に新陳代謝が活発なので、日焼けした部分も一月後にはきれいに垢となって消えて行くからです。ところがある程度の年代になりますと、ところどころに新陳代謝が滞った部分が出てくるため、メラニンで黒く変色した細胞が素肌に残ったままになってしまいます。(シミができる原理)
 皮膚(表皮)の細胞は新たに生まれてはやがて垢となってはがれ落ちていくというサイクルをずっと繰り返します。このことをターンオーバーと呼びますが、その期間は部位によって、年代によって違います。一般的に顔の皮膚の場合は28日前後とされています。この仕組みがあるので、皮膚が多少傷ついたり、日焼けをしたりしても一月後にはその部分の皮膚が自然とはがれ落ちていくため素肌はきれいな状態に戻ることができます。
 ところで、細胞の新陳代謝(ターンオーバー)には順調な血液循環がとても大切です。血液は新陳代謝に必要な栄養を細胞に届けると同時に、死んだ細胞や細胞から放出される老廃物を運び出す働きをしています。フェイシャルマッサージはこの血液循環を高めるために行うのだと言ってもいいでしょう。
 顔の整体も美容面において目的は同じで、顔面の隅々の細胞まで血液が順調に届き、老廃物の回収も順調に行われるようにすることです。そして顔や頭の骨格の歪みを整えることで、その人本来の顔立ちが戻るようにすることです。

骨格を整えることで血液循環は活発になる

 投薬などを除いて、血液の流れを活発化するための方法としては、“温める”、“マッサージする”というのが多くの人が持つイメージかもしれません。しかしながら“骨格をちゃんと整える”という方法もかなり有効だと考えています。
 血液循環を考える時、動脈の面と静脈の面の二つを考える必要があります。心臓の働きが十分で血管などに障害がなければ動脈血は隅々の細胞まで届く力を持っていると言えます。ところが静脈の流れが停滞した状態であれば、新鮮で酸素と栄養に恵まれた動脈血が細胞に入りたくても、炭酸ガスと老廃物の混じった静脈血がその場所から離れて抜けて行かないために入れないということになります。食事内容を考え、健康食品などを摂取して栄養豊かな血液(動脈血)になったとしても、細胞に順調に届けられなければあまり意味がないということになります。
 マッサージの目的の一つは、この停滞した静脈血を力を使って強制的に流してしまい、動脈血が細胞に吸収されて細胞の働きが甦るようにすることです。肩凝りを揉みほぐすとは、まさにこのことを言います。
 ところで大雑把に言いますと、動脈の流れは心臓の力を主な拠り所としていますが、静脈(リンパも含む)の流れはその周りの筋肉の働きに頼っています。「足は第二の心臓」という言葉もありますが、心臓から遠く離れた足やふくらはぎの血液は足やふくらはぎの筋肉の働きに頼って心臓への還り道に乗ってくるというものです。ですから、「歩かなければならない」という話になります。一日中オフィスに座ったままでいると膝から下がパンパンにむくんでしまうという人がたくさんいます。これは足を動かさないために「第二の心臓」の働きが発揮できないためです。しかし、中には動いていないのに特にむくまないという人もいます。そういう人は運動に頼らなくても筋肉の働きが良いため、静脈やリンパの流れが停滞しない人です。
 “筋肉の働き”という面で考えますと、それは骨格のあり方と切っても切れない関係があります。筋肉は骨を足場として働いています。筋肉が十分にその能力を発揮するためには足場である骨格がしっかりとしている必要があります。私たちがふわふわとした足場では思うように動けないのと同じです。骨格が歪んでいるということは足場である骨がグラグラした状態だということです。すると筋肉の働きが鈍るため、静脈の流れも停滞してしまいます。ですから、骨格を整え筋肉の働きを良くすることで血液循環が良くなるという結果を得ることができます。
 実際、骨格を整えることで、マッサージなどしなくとも、顔のむくみやくすみが短時間で改善し、素肌に潤いが自ずともたらされていきます。 

本来の顔立ちに近づける

 “整体で顔を整える”とは、その人の持つ“本来の顔立ちに戻すこと”と言えると思います。顔には目・口・表情筋のように日々たくさん動かすところがあります。ですから、それらの使い方の癖などによって、どうしても筋肉や筋膜に偏りが生じます。そしてその偏りが積み重なることによって骨格(頭蓋骨)を歪めてしまう結果を招きます。「昔と顔立ちが変わってしまった」主な原因です。
 “顔立ちが変わってしまった”とは、頭蓋骨が歪んだ、肉付きが変わった、むくんだ、ということでしょうか。この“顔立ちが変わってしまった”状態を、その人が生まれ持つ元々の顔立ちに近づけることが、顔の整体の目的の一つです。
 「以前はもっと目が大きかったのに‥‥」「鼻筋がもっとしっかりしていたはずなのに‥‥」「元々は反対咬合ではなかったのに‥‥」等々、顔の整体で対応できる分野です。