顔の歪み

 顔の右側と左側が全く同じという人は世の中には一人もいないと思います。右と左は非対称ですが、その見え方が自然であれば問題ないはずです。顔が歪むということは、本来の骨格(頭蓋骨)が何らかの原因でズレをおこしていることをここでは言います。自覚されているかどうかは別にして、ある程度年齢を重ねた人の多くは、顔が歪んでいるのが現実です。そして多くの人は加齢とともにだんだん顔の歪みが大きくなっていきます。あるいはケガや病気、小顔整体の事故などで大きく歪んでしまう場合もあります。
 加齢とともに歪みが大きくなってしまうのは、顔の使い方の癖によるものと言ってもよいと思います。見る癖、噛む癖、呼吸の癖、寝方の癖、これらによって顔は歪んでしまいます。
 だいたいの傾向ということで言えば、加齢によって頬骨の間隔は狭くなり下がります。ですから目の下にハリがなくなり下瞼が垂れるようになります。左右の頬骨の間隔は狭くなるのですが、顔の横の肉付きがよくなり、それがやがてハリを失うようになると顎のラインがたるむという状態になります。頬骨の間隔が狭くなり上顎骨や鼻骨も下がることから、ほうれい線が深くなり、鼻の下が伸びたような感じになります。つまり加齢とともに顔全体が下がり、たるみが現れ、ほうれい線が目立つようになるといった具合になります。
 エステやフェイシャルマッサージ、あるいは化粧品などでこの加齢現象に対抗しようと試みる人も多いかもしれませんが、それらだけでは難しい面があるように思います。なぜなら、それらは主に皮膚や皮下筋膜、せいぜい表情筋までが対象なので顔の骨格を修正することはできないからです。顔が下がり頬が狭くなるというのは、骨格そのものが崩れることが主な原因です。

多くの人に見られる歪みの傾向

 顔(頭蓋骨)を正面から見ますと、前頭骨(額)・頭頂骨(頭部の側面)・側頭骨(耳)・頬骨・鼻骨・上顎骨・下顎骨があります。後面には後頭骨があります。“顔の容姿”という点では、頭蓋骨の中でこれらの骨の歪みを検査し、調整することになります。
 眉の高さが左右で違う場合は、前頭骨が斜めになっている可能性が考えられます。耳の高さや奥行きが違う場合は側頭骨がずれているわけですが、こういう人はたくさんいます。目の大きさや形が違う場合は前頭骨と頬骨と上顎骨を修正する必要があります。鼻筋がはっきりしない人は鼻骨が下がっている可能性が強いです。そして最も多く、顎関節にも影響を及ぼすの下顎骨の歪みです。噛み合わせが合っていない人は、ほとんどの場合、頭蓋骨の歪みからくるものと思われます。
 前頭骨が右側に捻れ、それとともに頬骨も右側に捻れ、上顎骨は反対に左側に捻れ、下顎骨は左側に捻れている。耳の硬さは右側の方が高く、目を大きく開けようとすると額の筋肉を強く使ってしまう(額にシワをつくる)。鼻も頬もどことなく下がっていて、笑みを作るため口角を上げようとすると頬の肉が邪魔に感じてしまう。顎のエラも以前より目立ってきた感じに思える。顔の歪みが大きくなっている人は、このような具合に感じるかもしれません。


 頭蓋骨は一つの骨でできているわけではありません。いくつもの骨がパズルのように組み合わさって頭蓋骨の形を形成しています。ですから一つの骨が何らかの原因でずれますと、頭蓋骨全体が歪んでしまいます。顔の整体は、この全体に歪みをもたらす原因となった一つの骨を見つけ出し、そしてその骨がズレをおこした原因を探し出し、その原因を修正する施術です。
 実際には、ほとんどの人が幾つかの癖を合わせ持っているため顔の歪みも複合的です。

加齢とともに頬が狭くなり、顔が下がる傾向

 若い頃に比べて、顔が広くなった(横幅が増した)と感じている人は多いのかもしれません。筋肉には“こわばると硬くなって太くなる”という性質がありまので、長年の噛み癖や噛みしめなどで、噛む筋肉がこわばっていりため耳の下の部分から顎(エラ)にかけての筋肉が太くなっている場合もあります。ところが頬と頬の間は狭くなっている人がほとんどです。頬の間が狭くなれば顔が細くなると考えられるかもしれませんが、頬骨が狭くなって目立たなくなったかわりに、耳の骨(側頭骨)や顎ラインが強調される結果になり、顔の横幅が広がったように感じられます。
 さらに加齢に伴い、頬骨と上顎骨と鼻骨が下がってしまう傾向があります。これらの骨が下がると眼窩(目の入っている凹み)が下に引きずられるため、以前より目(上瞼)を開けるのに力が必要になります。これは肩凝りの原因の一つです。額の筋肉を使わなければ瞼を大きく開けられないため、額にシワができます。鼻骨が下がると鼻筋がはっきりしなくなりますし、鼻の通りも悪くなります。上顎骨が下がると鼻の下が伸びます。さらに頬が狭くなり下がるということは、ほうれい線が深くなる結果を招きます。
 ところでこれらの骨が下がってしまう大きな原因は、頬骨の下から口にかけての筋肉(大・小頬骨筋、上唇挙筋、上唇鼻翼筋、鼻筋)がこわばっているからです。多くの人のその部分はカチカチで軟骨と間違えるくらいです。笑ったり、口を動かしたり、いろいろな表情を長年に渡ってつくってきたため、それらの筋肉が硬くこわばってしまったのだと考えられます。これらの筋肉のこわばりをていねいに取っていくだけでも、顔の感じはだいぶ変わると思います。
 若い頃は、“広々感”、“開放感”がありました。それが加齢ともに、顔は広がったのに、そういった感じが失われたと感じるなら、それは頬の間が狭くなり顔が下がった影響かもしれません。しかし、これらの歪みは簡単に改善することができますので、顔の整体をおすすめします。

片噛み癖、噛みしめ癖や食いしばり、歯ぎしりによる歪み

 片噛み癖、噛みしめ癖や食いしばり、歯ぎしりによる顔の歪みは、年齢に関係なく最も多く見受けられるものです。
 これらの癖は咬筋、側頭筋といったそしゃく筋の変調を招きます。変調というのは、使いすぎてカチカチにこわばったり、反対に使わないためデロデロにゆるみうまく収縮できない状態のことです。右の奥歯ばかりで噛んでいると、右側のそしゃく筋はこわばり、左側はゆるんだ状態になっています。咬筋や側頭筋は頬と下顎を結んでいますので、右側の下顎(エラ)は耳に近づいて詰まった感じになりますが、左側はぶら下がったようになってしまいます。顎先が右の方に捻れてしまいます。頬も右側はシャープで硬くなりますが、左側はぼやけて締まりのない感じになります。これが片噛みの癖による歪みの傾向です。鼻先が噛んでいる方に寄ってしまうという傾向もあります。
 噛みしめ、食いしばり、歯ぎしりの癖では、癖の強い側の頬の横の部分がカチカチになり、顎関節が詰まったようになります。場合によっては口を大きく開くこともできなくなります。痛みを伴うこともあります。顎関節症の原因です。頭痛や首肩の凝りを誘発しますし、歯が悪いわけでもないのに歯痛や歯茎の痛み、歯の浮き感などの原因にもなります。容姿的には、顎や顔が歪むのもそうですが、どこか血行がわるく、つらそうな感じに見えてしまいます。
 “顔の美容”という面で考えてみても、これらの癖は必ず改善しなければならない項目です。歯ぎしりの癖の改善は意識的に行うことはできないので、なかなかの強敵ですが、百害あって一利なしですので、なんとか改善する手立てを見つけ出して欲しいと考えます。すべての人にあてはまるかどうかはわかりませんが、股関節を整えると歯ぎしりの癖が良くなる人も多くいます。脚の開脚などをしてみて、股関節や太ももの内側の筋肉に痛みを感じたり、左右差を感じるようでしたらそれは股関節がおかしいということです。そういう人が歯ぎしりの癖を持っているようでしたら、股関節を修正することをおすすめします。