耳のずれと難聴・めまい・ふらつきの関係

 耳には音を聞く役割と体の平衡感覚をつかさどる役割があります。
 音を聞く上でのトラブルでは、耳鳴り、難聴(聞こえない、ふさがった感じがする、膜が張っている感じがする、自分の声が響く、ある種の音が不快など)がありますが、それらの多くは耳のズレと関係していると思います。「耳鼻科で検査をしても異常なし、脳の検査をしても異常なし、しかしトラブルは依然として治らない。」という場合は、耳の位置がズレていないか確認する必要があります。
 めまいやふらつきなど平衡感覚の異常も耳に原因がある場合が多いと思います。

耳のずれは側頭骨の歪み

 眼鏡をかけた時、眼鏡が平行に掛からない場合は耳がずれているということです。耳は頭蓋骨の中の側頭骨に付いています。ですから頭蓋骨が歪み側頭骨がずれますと耳の位置もずれることになります。
 側頭骨は頭蓋骨を形成する一部ですから、頭蓋骨全体が歪んでいると当然ずれを生じることになります。その他に胸鎖乳突筋で鎖骨と胸骨につながっていますので、胸鎖乳突筋の変調によっても影響を受けます。そして胸鎖乳突筋は鎖骨・胸骨の位置によって影響を受けます。また筋肉の連動としてそしゃく筋と関係しますので、咬筋や側頭筋がこわばっていますと胸鎖乳突筋もこわばるため側頭骨が鎖骨の方に近づくようにずれを生じます。
 前の項目やこれまでも再々取り上げています、歯ぎしり・噛みしめ・食いしばりの癖や片噛みの癖を持っている人は側頭骨がずれているため、耳の機能に何らかの影響があるものと考えられます。(自覚症状の有無に関わらず)

・耳は過敏になる
 耳がずれている人は、耳鳴りや難聴などの症状がなくても音に過敏になっていることがあります。耳元でサワサワするような小さな音、反対に大きな音、高い音、これらが耳に入ってくるとやけに気になったりします。遠くで人がヒソヒソ話しているのが気になるのは、精神的なことではなくて耳が小さな音ばかりを拾ってしまうという過敏状態なのかもしれません。実際に、他人が出す音が気になるのはストレスのせいだと思っていたけれど、自分の耳が過敏だったためで、耳のずれを修正することで気にならなくなったという例はいくつもあります。

・耳の穴は大切に
 顔の歪みを修整する時、耳やその周辺を施術することがよくあります。そこには筋膜がゆるみ過ぎの状態である場合が多いからです。また上顎骨をしっかりさせようとする時、耳の穴周辺を施術することがあります。耳垢取りは、ていねいに優しく行ってください。耳の穴の皮膚は思いの他、頭蓋骨の歪みに関係します。

“ふらつき”と“めまい”は原因が同じ場合もある

 朝布団から起き上がる時やふとした瞬間に訪れるふらつき感は、症状こそ軽いですが、めまいの一種と考えるべきなのかもしれません。
 “ふらつき”にせよ“めまい”にせよ、ここでは二つの方法で確認をします。一つは頭を前後に動かした時に体から力が抜けてしまうかどうか。もう一つは頭を左右に回旋(横を向く動作)させた時に体から力が抜けてしまうかどうかです。
 結論的に申し上げますと、前者で力が抜けてしまう場合は鎖骨下静脈の流れが悪いと考えます。後者で力が抜けてしまう場合は、三半規管(内耳)の中でリンパの流れが悪いと考えます。どちらもリンパ、つまり水の流れと関係していると私は考えています。
 鎖骨下静脈の流れを整えるためには、鎖骨と肋骨の位置を正すことと斜角筋という首の筋肉を整えることがポイントになります。斜角筋はそしゃく筋と連動しますので、やはりここでも片噛み、噛みしめ、食いしばりなどの癖が大きく影響していると思われます。内耳でのリンパについては側頭骨(耳)のずれが必ず影響していますので、頭蓋骨の歪みを修整することになります。
 その他に、目の疲労(目を動かす筋肉のこわばりなど)は影響力がありますので、それに対する施術も必要になります。
 激しいめまいに襲われますと、寝返りを打つことさえ、ちょっと横を向くことさえできなくなりますが、そんな状態であっても耳を整え、鎖骨下静脈の流れを整えることで症状はかなり楽になると思います。「そんなに辛い時に脳神経科や耳鼻科に行って辛い時を過ごすよりも、こちらに先に来て、少し楽になってから病院に行き、いろいろ検査をした方が良いのではないか?」と心の中ではいつも思っています。

耳鳴りと難聴は中耳の状態と関係するので鼻を整える必要もある

 飛行機に乗って離陸後の上昇時などに耳がふさがったような感じになり、ごく一時的な難聴や耳鳴りの状態になるのは、外気圧の急激な変化によって中耳内の気圧が外と違ってしまうためです。中耳は耳管という管によって口の中(咽頭)と通じていますので、唾を飲み込むことによって耳管に空気を通せば、気圧差がなくなるため一時的な難聴は解消します。
 中耳の働きは、耳の穴を通して入ってきた音(=空気の振動)を鼓膜から受け取り、実際に音の振動を神経信号に変換する内耳に伝えることです。内耳はリンパ(水)で満たされていて水の振動を神経信号に変換して脳に伝えるしくみになっています。(海で生活していた頃の名残)空気(鼓膜)の振動は水に跳ね返されてしまうため、内耳のリンパを振動させることができません。そこで中耳がその間をとりもつ働きをしていて、外部の音が私たちの脳に伝わることができるようになっています。ですから、中耳の状態が悪いと難聴状態になってしまうのです。
 中耳は一つの空間で、耳管を通じて鼻の裏にある咽頭とつながっています。それによって気圧その他の状態が調整されています。そして中耳の中には3つの小さな骨があり、鼓膜から伝わる振動が骨の振動に変換され内耳の水を振動させています。ですから中耳の状態が悪いとその伝達がうまくいかないため難聴になる、あるいは耳鳴りがしてしまうと考えられます。中耳のそばには動脈が通っていますので、血液が流れる音や血管が脈打つ音が聞こえてしまうことがあります。
 さて中耳は側頭骨の中にありますので、当然、側頭骨がずれていると中耳の状態は悪くなると考えられます。その他に、中耳の状態にとって重要な耳管は鼻の裏の咽頭につながっていますので、鼻骨や鼻の状態も中耳に影響を与えることになります。
 ですから、耳鳴りや難聴、あるいは慢性的な中耳炎に対しては、側頭骨と鼻骨を中心に頭蓋骨を整える必要性があります。